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「お前、ほんといい性格してるな」 闘い終わったヴェルデの、最初の一言はそれだった。 「何が、『この国を頼んだ』だ! んなこと言っといてちゃっかり生きてるじゃねぇか! てっきり俺は……」 言いながら地べたにへなへなと崩れる。 「すいません。この性格は生まれつきなんすから仕方ないっすよ。でも、あの時だけはさすがに死んだと本気で思ったんすよ」 「ほんと、あたしも最初岸にヴァンプさんの姿見つけたときはびっくりしたよ〜」 隣でセフィがはしゃぐ。 「まぁ、無事で何よりだ。皆……?」 二人ばかり、姿が見えない。 察したようにヴァンプが口を開いた。 「あの二人はもう国王の救助に向かってるっす。あとは、ここの親玉をぶちのめせば……」 「……終わり、か」 無言でヴァンプが頷く。 「さて、それでは早く終わらせましょう。この後も再建に向けて忙しいんですし」 この先に待ち受けているものに物怖じもせずに、ヴァンプはその先の扉を開いた。 一方。 「姫さん、ほんとにこっちであっとるのか?」 「私が間違ってると言いたいのか? 仮にもここは私の家だぞ。」 暗い地下道を、エミリアの指の先で燃える小さな明かりを頼りに進む。 「いや、そういうわけではないが」 「なら黙れ」 言われたとおりに、金剛は黙った。誰だって命は惜しい。 「今使っている牢屋のほうに父上はいらっしゃらなかった。となれば、はるか昔に作られたといわれる旧牢屋のほうのはず」 見張りはさすがにいなかった。ただ、その場を支配している闇と湿気が何より不快だった。 廊下を右に曲がる。奥のほうに明かりが見えた。 「金剛、恐らくあれだ。準備は整っているか?」 目線はそのままにエミリアが言う。金剛は無言で頷いた。 やがて鉄格子がたくさん見えた。同時に人影が。そして鎧のすれる音がした。 「……いくぞ」 金剛が前に出て、エミリアが後ろで詠唱を開始した。兵士はまだこちらに気付いていない。 「スタン!!」 エミリアが魔法を発動させた。まばゆい閃光があたりを白く染め上げる。兵士は驚いてこちらを見、閃光によって視力を失った。 そこにすかさず金剛が右ストレートを放った。兵士は空中で一回転した後地面に叩きつけられ、動かなくなった。 「よしっ」 エミリアが金剛を押しのけて牢室の中に入る。 「父上! 父上!」 必死に叫ぶ。数秒後、かすかに声が聞こえた。 「……エミ……リ……」 よほど弱っているのだろう、最後の「ア」はかすれて聞こえなかった。 「父上!?」 声がしたほうに駆け出す。一番奥の牢屋で、国王は横たわっていた。 「父上! しっかりしてください!」 急いで抱き起こす。 「エ……アよ、ここ……はき……はやくにげ……」 生気を失った顔で、国王は姫に言う。かすれ、弱りきっている声だったが、特有の温かみは健在だった。 「聞こえないよ! もっと大きな声で言ってよ父さん!」 半ば抱きしめるように、耳を近づける。それでも聞き取れないくらいだった。 「エミリア……皆を、この国を頼んだ……ぞ」 「お前ならできる。……お前が駄目なときでも、お前は……もう大事なものを持っている」 「お前だけでない……皆で、皆が望む夢を、皆で叶えるのだ」 「わかった、な……」 それはいつも聞かされつづけてきた言葉であり、仲間に向けていった言葉でもあった。でも、それとこれとは話が違う。 「父さん!!」 抱き起こした父親の頭が、かくりと垂れた。
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うわーー!! ヴァンプが生きてたーー!!と喜んだのも束の間、エミリアのお父様が!! 物語は最終局面に向けてひたすら走り続けていくわけですが、その途中でこういった別れがあるのは悲しいけれど仕方の無い事なんですよね……。彼らが父王の最期の言葉を現実としてくれる事を祈るばかりです。
2007/3/9(金) 午前 0:52
織姫サマ、いつも有り難うございます♪ 現国王をどうするか、ちょっとあんまり思い入れがないので迷いましたが(おいおい)、彼には哀しい結果を選んでいただきました(T_T) 王のあの言葉、実はミレットの町でエミリアが落ち込んだ金剛に向けていった言葉なんですよね。いよいよ次で最後……になるはずです^^;
2007/3/9(金) 午前 11:55