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その広い部屋には、女が一人で立っていた。燃えるように赤いドレスを身にまとい、手に血のようなワインを揺らして。 そう。現王女、ディフィシオーネが、謁見の間に立っていた。 「……遅い」 「待ちわびたぞ、人間よ」 澄んだ、それでいて低い声がただっぴろい空間に響く。王女の眼前には3人の人間が。それぞれ武器を構えて。 「王女、ディフィシオーネ。あなたを討伐しに来た」 フッ、と王女は鼻で笑う。 「……見ての通り、お前たちはことごとく私の邪魔をしてくれた。私の計画は完全に失敗。私のに残されている道はそう多くない」 「…………」 王女がワインを飲み干す。この非常時にさえ、優雅さは保たれていた。 「……何故こんな事をした? ヒトと竜の間の争いは無かったはずだ!」 「なぜ? ……そうだな、天使と小悪魔の囁き、とでも言っておこうか」 あくまで微笑を保ちつづけながらこちらの質問を返す。 「…………」 「お前たちは私を説得しに来たのではないのだろう? ならば早くはじめようぞ。私にはまだやるべき事が残っておる」 不意にグラスを投げつける。ヴェルデの右頬をかすめ、後ろの壁で砕け散った。同時に王女が剣を抜いて一気に距離を詰めた。 「……!」 慌ててヴェルデが光で防ぐ。金属音のあと、横から発砲音が。だがその弾丸は王女の体に当たる前に弾かれた。 後ろでヴァンプが笛を吹く。確かに効果はあるようだが、王女の動きに大差は無かった。 「人間にしては、なかなかのものだ」 相手のなぎ払いを間一髪で避ける。その直後に突き。だが相手もひらりと身をかわした。 「……これは」 ヴェルデがあいた間合いを詰めようとしたとき、王女が息を吸い込んだ。 そのまま火を吹いた。間合いを詰めていたヴェルデは当然避けきれずに体を炎に包まれる。 「ぐあぅ!!」 「ふふふ、悶えるが良い」 王女がヴェルデの前で剣を振りかぶる。そのとき再び発砲音が。同時にヴェルデに水が降り注いだ。 王女は軽く剣で銃弾を弾く。 その隙に火の消えたヴェルデが王女に斬り上げる。惜しくも斬撃はドレスをかすめたに過ぎなかった。 すかさずヴェルデが追撃する。が、人間離れした動きで全てが弾かれた。 仕方なくヴェルデはバックステップで距離を取る。 「……ふふ、どうした? 息があがっておるぞ」 「く、くそっ……」 「伏せて!」 後ろのほうから再び発砲音がした。その言葉にいわれるままにヴェルデが伏せる。 見事に榴弾が命中し、王女は大きく吹っ飛んだ。 「やった!?」 謁見の間の後ろに、王女の姿は煙で見えない。 「きゃあ!!」
いきなり熱戦が奥からほとばしった。まともに撃ち抜かれてセフィが崩れる。 「……目障りだ、小娘」 「くそう!!」 ヴェルデが奥へ駆けていく。が、風圧で吹き飛ばされる。 その風で、ようやく煙が吹き飛んだ。 「……………」 王女は、本来の姿に戻っていた。おとぎ話のあの竜。雌であるディフィシオンの姿で。 「……いささか甘く見ていたようだ。敬意を表し、全力で葬ってやろう」 先ほどとは比べ物にならないほど激しく炎を吐いた。間一髪でかわしたが、それでも爪先に鋭い痛みを覚えた。 「おい、セフィ!」 返事は無い。まさか…… 「ヴァンプ、頼む! セフィを安全な場所へ!」 とっさに言う。いわれるままにヴァンプは演奏をやめ、セフィを担いで謁見の間から出た。 「……逃がしてよかったのか? 愚かな、一人で勝てるとでも思っているのか?」 「……いやいや、やはりこちらも敬意を払わないと。3対1は卑怯だよ」 「フッ……変わった奴め」 「後悔、するが良い」 |
Breath Dragoon
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