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―なんだろ、この気持ち。
・・・懐かしいのに、居心地悪い。
荷物を運び終わって、とりあえず一息つく。
金剛さんは子供たちの遊び相手をしてるし、ヴェルデは剣の整備で忙しそうだ。
ほんとはヴェルデに話したいこと、いっぱいあるけど。それはまた後でも良いか。
そう思って、特に何もしていない、というより少し落ち込んでいるエミリアに話し掛けた。
「ねぇ、エミリア?」
「・・・ん?なんだ」
少し顔色の悪い顔を、だるそうに上げた。
「ね、あたしチュチュちゃんにシャワーの場所教えてもらったんだ。」
彼女に元気を少しでも分けられたら、と思って、あたしは出来るかぎりの笑顔をつくった。
「その、砂漠越えていっぱい汗もかいたし、髪の毛もばさばさで砂も入って気持ち悪いし・・・」
「だから、いこ?」
エミリアは少し迷った後、こちらの笑顔に答えるように笑いをつくって言った。
「・・・ああ、行こうか。」
「よしっ!きまり!」
早速準備に取り掛かる。バスタオルと、お気に入りの石鹸。後は中央のオアシスで水浴びするための水着。まあ、ここには子供しかいないし、水着はどっちでも良いんだけど。
さすがに何もなしで水浴びする気にはなれないな。
エミリアも準備が出来たようなので教えられた場所へ行く。
オアシスの横に小さなコインシャワーのような囲いがあった。ドアに「じょせいよう」と大きな字で書いてある。
・・・これも半ば命がけで「ファイナルエデン」の外から取ってきたらしい。
早速入ってみる。思ったよりも中は綺麗で、天井は無かった。
鎧はもうテントではずしてきた。今着ているものを脱いでシャワー室の外に置く。
壁の向こう側でエミリアの声が聞こえる。
「・・・もう、脱いだ?」
どう意味なんだろう?と思いながら返した。
「え、うん、脱いだよ〜」
シャワーも、水道管に蛇口がついている程度の質素なものだった。
思い切ってシャワーの蛇口をひねる。
予想に反して、驚くほど冷たい水が降ってきた。
この上なく透き通った水が、肌を流れていく。
「気持ちい〜」
思わず口から言葉が漏れるくらい、本当に生き返る気分だった。
それを言ってから数秒後に、隣でも水の音が聞こえだした。
思いっきり水と戯れたあと、お気に入りの石鹸をあわ立てて洗っていく。
鼻をくすぐるに香りと、すべすべした肌触りがまた至福だな。
再び隣で声がした。
「セフィ?」
「ん?なに〜?」
「・・・石鹸、貸して?」
「いいよ」
シャワーの近くの台においてある石鹸を手にとって、上から放り投げようとした。
「行くよー?」
「えっ?」
疑問の声が返ってきたが、投げ始めた手は止まらなかった。
「あ」
放物線を描いて隣のシャワー室へ吸い込まれていく。夕日が反射して綺麗。
隣で声がした。
「いたっ」
「・・・・・・」
「ごめん、大丈夫?!」
「ああ・・・何とか受け取った。」
ふう。良かった良かった。
「じゃあ、あがるときにかえしてね」
「ああ。」
会話が終わったので、あたしは空を見上げた。
空はオレンジ色に輝いている。
透き通るような、あたしの大好きな蜜柑の色。
この色を見ているだけで、何も考えなくてすむみたい。そんな気分にさせてくれる。
「セフィ?」
隣でもう一回声がした。
「なに?」
「いくぞ。」
あたしの確認を待たずに声と、石鹸が飛んできた。
何とかキャッチしようとするが、ちょうど頭にあたる。
「い、痛い・・・」
またあっちから声が降ってくる。
「大丈夫か?」
「絶対わざとだ。」
年甲斐も無くふくれる。
「悪い、悪かった。ちょっとした仕返しだ。」
相手は笑いながら謝った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
一瞬の沈黙。
「あははは!」
「ふふふふ」
自然に笑いがこぼれた。なんだか久しぶりに笑ったかも。
「・・・じゃ、そろそろあがろっか」
「ああ。そうしよう。」
水をとめ、戸を少しだけ開けてバスタオルと服を取る。
ふわふわのタオルだ。あの子達が毎日洗っているのだろうか。
・・・きっと大人たちがおかしくなったのも王妃のせいなんだろうな。
・・・なんか、腹が立つ。いくら夫を殺されたからって、やりすぎじゃないのかな。
まあ、あたしももしヴェルデに何かあったら、なにしちゃうかわからないけど。
そんなことを考えながら体を拭いていく。
拭き終わって、次は服を身につけた。出来れば服も洗っておきたいのだけど、こればっかりは仕方が無い。
戸を開けて外に出る。
もうすでにエミリアは外に出ていた。
「お待たせ」
「ああ。いこうか。」
最初は水浴びもしようと思っていたのだが、もう日も暮れかけている。
・・・何より、ヴェルデに話したいことがたくさんあって。
とにかく今は早く帰りたい。そんな気分だった―
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