|
「いいのか? このままここに残れば生涯を安泰に暮らせるものを」 「良いんだよ。俺たちはミレットに戻る。各地の復興を手伝いながらゆっくり戻るさ」 「そうか。また、是非遊びにきてくれ」 ヴェルデはそのことばに手を上げて返す。 ――あの死闘の後、都市機能の復興まで1ヶ月を要した。傷ついた兵士を運び、城の補習をし、城下町を整備し。そこは彼ら4人が主立ってやったことだが、そこにはあのヴァンプ率いるバルトロマイオスの支援あってだった。あの竜は丁重に葬られ、城の中庭に立派な墓を立てた。もちろん夫の墓も隣に。そしてストライダー討伐指令の廃止と同時に、ドラゴン、草食獣その他の狩猟制限をかけ、二度と哀しい事件のおきないように法が公布された。そして一段落したころにエミリア・R・グランディリオ姫の王女即位式、戴冠式が行われ、彼女はここの王女となった。 そしてあれからちょうど一月たった今日。ヴェルデ、セフィ、金剛の3人はミレットに帰還し、その近辺の復興作業を手伝う事となったのだった。もっとも、そこからの彼らはそれぞれへと歩いていくが。 「金剛、あっちに帰ったらどうするんだ?」 「ん?わしゃ今までどおりあの町の護衛係じゃ」 「そうか」 「セフィは?」 「ん〜」 いつもの癖で、唇に手を当てて考える。 「あたしも、ミレットで一緒に平和に暮らしたい。けど」 「けど?」 「……妹を」 歩いていたセフィがヴェルデのほうに向き直る。 「チュチュを探さなきゃ。きっと今もどこかで生きてる。わかんないけど……そんな気がする」 そうだった。あのケピの村で、妹だとわかった瞬間に引き離された。色々あった中で、彼女の心の中にちゃんととどまっていたのか。 「…………」 正直、やることはたくさん有る。でも、何よりセフィの笑顔がみたかった。無理して笑う笑顔じゃない、本物の笑顔を。だからやっぱりここはこういうしかないと思った。 「うん。俺も一緒に探すよ」 彼女の顔がはっとなり、そして少し困ったような笑顔になった。 「……ついてきて、くれるの?」 「もちろんさ」 即答する。 「……有り難う。」 ――その言葉は、穏やかな風に乗って、どこまでも、どこまでも―― 「くそっ、やつめ、しくじりおったか」 「今回は、私の勝ち、みたいっすねぇ」 「ふん、一勝一敗でいい気になるな」 「いえいえ、もちろん三回戦目も勝たせてもらいますからねぇ。人魚、竜ときて次は何を出すのやら……」 「目には目を……ふふふ、せいぜい楽しみにしているがいい」 「そうさせてもらうっすよ」 第一章――完―― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――あとがき―― ……いかがでしたでしょうか。 まずひとつお詫びを。 本来連続して、比較的早いテンポで書くべきものを、途中受験やその他もろもろでおろそかになってしまい、更新期間が非常に空いてしまった事を、深くお詫び申し上げます。そして、そんな中でも見てくださっていた方、ならびに今日はじめてみた、という方々、本当に有り難うございました。 ところで、最後、ひとつ皆さん気になったと思いますw 「え、これで一章が終わったの!?」 はいそうです。 というか、ほんとは章分けも細かくしていく予定だったのですが、書いているうちに話を切れなくなってしまい、こんな形になりました。(本当は小説って章分けしないといけなかったと思うのですが) そこはご容赦ください^^; この続編も、ショートストーリーを2つほどはさんでから書いていくつもりですので、どうぞこれからもよろしくお願いします。 最後の話の部分(一番大切なところなのに)が抜けてしまったので、書き直しました。 (最後がなんだかまとまりきりませんでした^^; ごめんなさい^^;)
|
Breath Dragoon
[ リスト | 詳細 ]
剣と魔法と銃の恋愛要素も混じった少しシリアスなファンタジーと言えば解り易い?少し銃に関しての専門用語がありますが、近いうちに補足を書きます。ぜひ一度ご覧ください!テーマは、一応「愛と、親父と、ドラゴン」です。
|
ヴェルデにとっては、むしろやりやすい相手のはずだった。元々ストライダーなのだから、対人戦よりもはるかに闘いやすい。グラディウスよりもリーチの長い武器もある。勝ち目は存分にあった。 「ディフィシオーネ、ひとつ尋ねたい」 あくまで隙を見せないように疑問を投げかける。 「なぜ、こんなことを?」 「……なぜ、だと?」 言葉に瞬時に怒りがあふれた。 「愚かな人間どもめ、自らが犯した罪も知らぬのか!」 「私の夫を殺したのは! 私の仲間を殺したのは誰だ!!」 「…………」 「誰のせいでこんなことになった! 誰のせいで旨くも無い酒に溺れなければならなくなったぁ!!」 声がその場を震わす。 「ここまでしておいて、良くそんな口が聞けるものだな、人間よ! わが同胞の仇、いまこそとらせてくれるわ!!」 竜が火を吹いた。赤い舌が地面を舐め上げた。 「くっ!」 ヴェルデは脇へ転がり込み、すぐに立ち上がって竜の顔を一閃した。竜が痛みに怯む。すかさずそこを斬り上げる。硬い鱗がはじけた。 「おのれ!」 ディフィシオーネが尻尾を叩きつけた。ヴェルデは後ろに吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。そして尻尾は止まらずに城壁を粉砕した。 「かはっ」 そこは3階。かろうじて床をつかむ。下には中庭の噴水が見えた。 「あっけないものだな」 竜の顔がそばまできた。吐息が熱い。 「くそっ」 「では、お別れだ。」 ディフィシオーネが息を吸った。ヴェルデはとっさに光の剣を作り、右目を突いた。 「がぁぁあ!!」 竜が凄まじい咆哮と共に大きく後ろに退いた。その隙に足をかけて這い上がる。 「おのれっ、おのれえ!!」 突いた右目のほうに回り連続で攻撃する。さすがに効いたのか前足を大きく上げてのけぞった。 ヴェルデが竜の下に潜り込んで胸を刺した。のけぞりから竜が戻ってくるのとあわせて。 凄まじい咆哮。大量の血飛沫。 ヴェルデが後ろに飛びのく。地面を揺らしながらディフィシオーネは地面に沈んだ。
「…………」 「……すまない……」 目を開けたままの竜の瞳から、一滴の雫がこぼれた―― |
|
その広い部屋には、女が一人で立っていた。燃えるように赤いドレスを身にまとい、手に血のようなワインを揺らして。 そう。現王女、ディフィシオーネが、謁見の間に立っていた。 「……遅い」 「待ちわびたぞ、人間よ」 澄んだ、それでいて低い声がただっぴろい空間に響く。王女の眼前には3人の人間が。それぞれ武器を構えて。 「王女、ディフィシオーネ。あなたを討伐しに来た」 フッ、と王女は鼻で笑う。 「……見ての通り、お前たちはことごとく私の邪魔をしてくれた。私の計画は完全に失敗。私のに残されている道はそう多くない」 「…………」 王女がワインを飲み干す。この非常時にさえ、優雅さは保たれていた。 「……何故こんな事をした? ヒトと竜の間の争いは無かったはずだ!」 「なぜ? ……そうだな、天使と小悪魔の囁き、とでも言っておこうか」 あくまで微笑を保ちつづけながらこちらの質問を返す。 「…………」 「お前たちは私を説得しに来たのではないのだろう? ならば早くはじめようぞ。私にはまだやるべき事が残っておる」 不意にグラスを投げつける。ヴェルデの右頬をかすめ、後ろの壁で砕け散った。同時に王女が剣を抜いて一気に距離を詰めた。 「……!」 慌ててヴェルデが光で防ぐ。金属音のあと、横から発砲音が。だがその弾丸は王女の体に当たる前に弾かれた。 後ろでヴァンプが笛を吹く。確かに効果はあるようだが、王女の動きに大差は無かった。 「人間にしては、なかなかのものだ」 相手のなぎ払いを間一髪で避ける。その直後に突き。だが相手もひらりと身をかわした。 「……これは」 ヴェルデがあいた間合いを詰めようとしたとき、王女が息を吸い込んだ。 そのまま火を吹いた。間合いを詰めていたヴェルデは当然避けきれずに体を炎に包まれる。 「ぐあぅ!!」 「ふふふ、悶えるが良い」 王女がヴェルデの前で剣を振りかぶる。そのとき再び発砲音が。同時にヴェルデに水が降り注いだ。 王女は軽く剣で銃弾を弾く。 その隙に火の消えたヴェルデが王女に斬り上げる。惜しくも斬撃はドレスをかすめたに過ぎなかった。 すかさずヴェルデが追撃する。が、人間離れした動きで全てが弾かれた。 仕方なくヴェルデはバックステップで距離を取る。 「……ふふ、どうした? 息があがっておるぞ」 「く、くそっ……」 「伏せて!」 後ろのほうから再び発砲音がした。その言葉にいわれるままにヴェルデが伏せる。 見事に榴弾が命中し、王女は大きく吹っ飛んだ。 「やった!?」 謁見の間の後ろに、王女の姿は煙で見えない。 「きゃあ!!」
いきなり熱戦が奥からほとばしった。まともに撃ち抜かれてセフィが崩れる。 「……目障りだ、小娘」 「くそう!!」 ヴェルデが奥へ駆けていく。が、風圧で吹き飛ばされる。 その風で、ようやく煙が吹き飛んだ。 「……………」 王女は、本来の姿に戻っていた。おとぎ話のあの竜。雌であるディフィシオンの姿で。 「……いささか甘く見ていたようだ。敬意を表し、全力で葬ってやろう」 先ほどとは比べ物にならないほど激しく炎を吐いた。間一髪でかわしたが、それでも爪先に鋭い痛みを覚えた。 「おい、セフィ!」 返事は無い。まさか…… 「ヴァンプ、頼む! セフィを安全な場所へ!」 とっさに言う。いわれるままにヴァンプは演奏をやめ、セフィを担いで謁見の間から出た。 「……逃がしてよかったのか? 愚かな、一人で勝てるとでも思っているのか?」 「……いやいや、やはりこちらも敬意を払わないと。3対1は卑怯だよ」 「フッ……変わった奴め」 「後悔、するが良い」 |
|
「お前、ほんといい性格してるな」 闘い終わったヴェルデの、最初の一言はそれだった。 「何が、『この国を頼んだ』だ! んなこと言っといてちゃっかり生きてるじゃねぇか! てっきり俺は……」 言いながら地べたにへなへなと崩れる。 「すいません。この性格は生まれつきなんすから仕方ないっすよ。でも、あの時だけはさすがに死んだと本気で思ったんすよ」 「ほんと、あたしも最初岸にヴァンプさんの姿見つけたときはびっくりしたよ〜」 隣でセフィがはしゃぐ。 「まぁ、無事で何よりだ。皆……?」 二人ばかり、姿が見えない。 察したようにヴァンプが口を開いた。 「あの二人はもう国王の救助に向かってるっす。あとは、ここの親玉をぶちのめせば……」 「……終わり、か」 無言でヴァンプが頷く。 「さて、それでは早く終わらせましょう。この後も再建に向けて忙しいんですし」 この先に待ち受けているものに物怖じもせずに、ヴァンプはその先の扉を開いた。 一方。 「姫さん、ほんとにこっちであっとるのか?」 「私が間違ってると言いたいのか? 仮にもここは私の家だぞ。」 暗い地下道を、エミリアの指の先で燃える小さな明かりを頼りに進む。 「いや、そういうわけではないが」 「なら黙れ」 言われたとおりに、金剛は黙った。誰だって命は惜しい。 「今使っている牢屋のほうに父上はいらっしゃらなかった。となれば、はるか昔に作られたといわれる旧牢屋のほうのはず」 見張りはさすがにいなかった。ただ、その場を支配している闇と湿気が何より不快だった。 廊下を右に曲がる。奥のほうに明かりが見えた。 「金剛、恐らくあれだ。準備は整っているか?」 目線はそのままにエミリアが言う。金剛は無言で頷いた。 やがて鉄格子がたくさん見えた。同時に人影が。そして鎧のすれる音がした。 「……いくぞ」 金剛が前に出て、エミリアが後ろで詠唱を開始した。兵士はまだこちらに気付いていない。 「スタン!!」 エミリアが魔法を発動させた。まばゆい閃光があたりを白く染め上げる。兵士は驚いてこちらを見、閃光によって視力を失った。 そこにすかさず金剛が右ストレートを放った。兵士は空中で一回転した後地面に叩きつけられ、動かなくなった。 「よしっ」 エミリアが金剛を押しのけて牢室の中に入る。 「父上! 父上!」 必死に叫ぶ。数秒後、かすかに声が聞こえた。 「……エミ……リ……」 よほど弱っているのだろう、最後の「ア」はかすれて聞こえなかった。 「父上!?」 声がしたほうに駆け出す。一番奥の牢屋で、国王は横たわっていた。 「父上! しっかりしてください!」 急いで抱き起こす。 「エ……アよ、ここ……はき……はやくにげ……」 生気を失った顔で、国王は姫に言う。かすれ、弱りきっている声だったが、特有の温かみは健在だった。 「聞こえないよ! もっと大きな声で言ってよ父さん!」 半ば抱きしめるように、耳を近づける。それでも聞き取れないくらいだった。 「エミリア……皆を、この国を頼んだ……ぞ」 「お前ならできる。……お前が駄目なときでも、お前は……もう大事なものを持っている」 「お前だけでない……皆で、皆が望む夢を、皆で叶えるのだ」 「わかった、な……」 それはいつも聞かされつづけてきた言葉であり、仲間に向けていった言葉でもあった。でも、それとこれとは話が違う。 「父さん!!」 抱き起こした父親の頭が、かくりと垂れた。
|
|
その刹那、聴き慣れた発砲音が耳を突いた。そして目の前の大男がゆらりとよろける。 「な、なにい!?」 「ヴェルデ!」 後ろを振り返る。そこには見慣れた人懐っこいあの蒼い瞳と、くわえ煙草の男が立っていた。 「ヴェルデ、まだ諦めるな! お前の風の力で剣を創れ!」 「ヴァンプ!?」 「くそぉぉぉ!! ゆるさん、ゆるさんぞ!!!」 大男が唸り、そして斧を振り上げた。 彼の声が頭に響く。自分から剣を創り出す……
よく解らないが、何故か今の自分にはそれが出来る気がした。どのみち、もう迷っている時間はない。 手を前にかざして力を込める。手のひらから光があふれ、それはやがて剣の形となった。そのまま光はさらに輝きを増し、細く、長く伸びていく。 「……!」 光が収まり始め、あたりがはっきりと見えるようになった。ヴェルデの手には「光」が握られている。 「…………」 あっけに取られていた大男が口を開く。 「……なんだそれは?」 ヴェルデはその「光」を握りなおした。ほのかな温かみがかえってくる。まるで何かとてつもなく大きなものに抱き込まれているようだ。 「……運命を悔やむのは」 男のほうに向き直り、いつもの構えをとる。 「どうやら俺じゃないようだな」 言葉を聞いた男が、甲冑の外からでもわかるくらいに顔を赤くさせた。 「小賢しいわ!!」 思い切り斧を振り上げて、ヴェルデの頭上に振り下ろす。ヴェルデは先ほどと同じように剣で身を防ぐ。 「キィ……ン」 負けたほうは男の斧のほうだった。ヴェルデの剣を受けたほうの刃がこぼれ、光によって後方へ弾かれる。 「なっ……なにぃ!?」 大きく開いた胴にすかさずヴェルデが斬撃を叩き込む。 白銀の鎧が大きく裂け、血が滴った。 「ぐぅっ……」 まけじと大男は斧をなぎ払う。しかし、遅い。斧はむなしく何も無い場所を通過し、一瞬早く動いたヴェルデが斧の隙に合わせて袈裟斬を放つ。 「つ、強い……」 斬撃の衝撃を受けて吹っ飛びながらそんな言葉が漏れた。男が地面に触れる前にさらに切り上げが入る。 どさっ。 もう、勝負はついていた。 「貴様……」 「…………」 倒れた大男の足元に、ヴェルデが静かに立つ。ヴェルデは無言で、腰にさしてあった回復薬を取り出し、ふたを空けて男の傷口に振りかけた。 「……どういう、つもりだ」 「喋るな。傷に触るぞ」 一本めが空になると、次の一本を。最後に甲冑と鎧をはずしてやる。 「くそっ、敵に情けをかけられるとはな」 そういう男の顔は、涙であふれていた。今までの口調や、体躯からは想像もつかないような、やさしい顔。 「あと一時間もすれば傷は塞がるはずだ。それまで、くれぐれも動くなよ」 「……」 「ヴェルデ!」 後ろから、聞きたかった響きが聞こえた。人懐っこい、明るい笑顔とともに。 |





