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グッドホープ岬。相変わらずセントラは荒涼としている。 |

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グッドホープ岬。相変わらずセントラは荒涼としている。 |
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「セルフィ」 |
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ねえ、泣かないで。 これをあげるから、もう泣かないで。 いつかきっと、また―― 「アービン、見〜つけた」 いつものお昼寝スポットにいなかったから図書室に来てみたら、案の定、アービンは本を読んでいた。アービンって読書好きなんだよね〜。あたしなんて、あんな細かい文字見てたらすぐ眠くなっちゃうんだけど。 「やあセフィ」 足音か気配に気づいたのか、アービンは笑顔で振り返ってくれた。 「ね。お仕事終わったよ。いいお天気だし、お散歩行こうよ」 あたしたちはSeeDであるかたわら、ガーデンで運営のお仕事を手伝っている。そして時々、候補生たちに講義する時もある。 候補生たちに講義する日は、事務のお仕事はお休みしていいことになっている。もちろん、その日の授業の報告書は出さなくちゃならないんだけど。 アービンはあたしよりも一時限早く終わったので、図書室に来ていたというわけ。あたしはてっきりお昼寝してるかと思った。それとも訓練室かなって。涼しいから図書室なのかな。ま、そんなのどうでもいいや。 アービンは机の上に置いてあったしおりを本の間にはさんだ。ラミネート加工された手作り風のしおり。あたしはちょっと興味が湧いた。 「ね、そのしおり見せて」 「ん?」 つい、と本の間からしおりを抜き取る。ラミネートに包まれたものは、ちょっぴり色褪せた四葉のクローバーだった。 「四葉のクローバー?」 「うん、そうだよ」 「アービンが作ったの?」 「え? まあね」 「ふうん……。でも色褪せてる……よね? 古いのかな?」 アービンはふんわりと微笑んだ。その優しい微笑にあたしの胸がどきりとする。子どもの頃から知っていて、魔女討伐の長い旅の間もずっと一緒で、その後もアービンはバラム・ガーデンに残ってSeeDになって。お付き合いを始めてまだ数ヶ月だけれど、アービンのことはずっと前から知っている。だのに、未だにあたしの胸はアービンを見るとドキドキしちゃうのだ。 男のくせにやたら綺麗ないいんちょにだって、こんなにドキドキしたりしないのに。変なの。 「そうだね。しばらく押し葉にしてから作ったものだからね。僕が子どもの頃に作ったんだよ」 「へええ……」 色褪せてはいるけれど、綺麗な四葉のクローバー。これ、たしか幸運のお守りなんだよね。 子どもの頃のアービンが作ったしおりかぁ……。そう思うと、ちょっと欲しくなってしまった。 「ね、あたし、コレ欲しい。ちょーだい?」 「悪いけど、それだけはダ〜メ」 アービンはあたしの手からするりとしおりを抜き取り、本に挟み直した。 あたしはボーゼンとしてしまっていた。アービンが「ダメ」って言った。いつもは絶対にそんなこと言わないのに。「ちょーだい」って言ったら「いいよ」って言ってくれるのに。 「ね、どうしてダメなの?」 「四葉のクローバーのしおりが欲しいのなら作ってあげるよ。それじゃダメかい?」 「そうじゃなくて、どうしてダメなの?」 「大切なものだからだよ」 「あたし、失くしたりしないよ? 大事にするよ?」 「それはわかってる。だから僕が作ってあげるよ。もうじき君の誕生日だし、プレゼントに追加しておくよ」 「そうじゃなくて!!!」 何だろう。無性にイライラする。どうしてアービンは”あのしおり”をくれないんだろう? あたしには何でもくれるのに。初めて「ダメ」って言われた……。 「セフィ?」 「プレゼントなんていらない。そのしおりが欲しい」 「うーん……困ったなあ……」 「どうして困るの? たかだかしおり一枚に!!」 あたしは、その時に見せたアービンの顔を一生忘れないだろう。 ちょっと驚いた風に青い瞳を見開いて、そして、とても寂しそうな、哀しい瞳をして微笑した。その表情はとても綺麗で切なくて、あたしの胸に突き刺さって痛いくらいだった―― 「これはあげられないんだ。ゴメンね。君には僕お手製のしおりをあげるから。それで勘弁してくれないかな」 どうしてこんなにイライラするのかわからない。でもどうしても譲れなかった。アービンのお手製のしおりなら、そのしおりだっていいはずなのに。 「やだ。あたしはそのしおりがいい」 「セフィ……」 「それ以外いらない」 アービンに「ダメ」って言われたのがショックだった。お父さんの形見だって言う帽子だって、すごくすごく大切なものなのに、あたしには触らせてくれる。被らせてもくれる。他の人には絶対に触らせたりしないのに。 じゃあ、どうしてそのしおりはくれないんだろう? 理由を聞いても話してくれそうにない。ただ、大切なものだから、って。そんなの理不尽だわ。納得できない。 「セフィ、頼むから困らせないでくれるかな?」 「やだ。じゃあどうしてくれないの? それ、何なの? そんなに大事なものなの? あたしに知られちゃ困ることでもあるの!?」 アービンの表情がまた曇った。深い海みたいな瞳が哀しみで暗くなるのがわかる。どうしてそんな風に傷ついた表情をするの……? 「ゴメン。これだけはどうしてもダメなんだ。わかってくれないかな〜」 「わからない。ちゃんと説明してくれなきゃわかんないっ!!」 でもきっと、アービンは話してくれないんだろう。アービンの哀しそうな顔は見たくないけれど、ここまで来てしまった以上、意地でも引き下がることなんて出来なかった。 「もういい。アービンなんて知らない」 あたしはそう言ってきびすを返した。アービンは大抵、ここまでくると「仕方ないな」なんて言ってくれる。だから今回もそう言ってくれるって思ってた。 ……でも。アービンは図書室を出て行くあたしを、止めたりしなかった―― 自分の部屋に戻って、あたしはクッションや枕、ぬいぐるみたちを力任せに壁に投げつけた。そんなことしたって気が収まるわけじゃないけれど、そうせずにはいられなかった。 あんまりイライラするものだから、ヌンチャクを手に取って訓練室に向かった。アルケオダイノス10匹くらいくらいやっつけないと気が収まりそうにない。 訓練室で、数え切れないほどのモンスターを倒した。でも、イライラした気持ちはちっとも収まらない。 どうしてアービンは「ダメ」って言ったんだろ……。 あのしおり、本当にアービンが作ったものなのかな……? 他の誰かにもらった、大切なものだったりするのかな? あたしに知られちゃ困る人なのかな? その人のこと……アービン、本当は好きだったりするのかな……? いつもなら、戦えば戦うほど頭がからっぽになっていくのに、今日は余計なことばかり考えてしまっていた。だから、最後のアルケオダイノスに一撃をくらってしまった。 腕から血が流れるのを感じながら、あたしは一気にアルケオダイノスを倒した。そのまま、奥にある秘密の場所に向かう。そこには誰もいなかった。 外はすっかり夕暮れになっていた。ガーデンを照らす浮揚リングの光がとても綺麗だ。 腕が痛い。ずきずきする。心が……痛い。どうして、アービンは……。 「……っく、…………っ」 目頭が熱くなり、喉に塊がこみ上げてきた。そのまま、堰を切るように涙が溢れ出す。 あたしは夜になるまでずっと、そこで泣きじゃくっていた―― まだ血が止まらなかったので、持っていたハンカチでぎゅっとしばって止血した。まさか怪我するだなんて考えてなかったので、魔法はおろかポーションさえ持ってきてはいなかった。 イライラは、収まらない。胸がモヤモヤして気持ち悪い。 今になってモンスターをしこたま倒しまくった疲れが出てきた。重い足を引きずるようにして部屋に戻り、ハイポーションで怪我を治した。 胸のモヤモヤも、心の痛みも、ポーションで治っちゃえばいいのに。 シャワーを浴びてからベッドに横になった途端、あたしはそのまま眠ってしまった―― それからあたしは、アービンとは一言も口をきかなかった。アービンの方からは何度も話しかけてきたんだけれど、あたしがしおりの『し』の字でも言おうもんなら、いきなり黙りこくっちゃうの。それから「ゴメン」って寂しそうに微笑んでから離れて行く。
離れていくアービンの大きな背中を見て、ぎゅっと胸が締めつけられるのを感じる。心が握りつぶされてるみたいだ。 でも。あのしおりのことをアービンが話してくれない限りは許してあげない。あたしにくれることの出来ない理由があるのなら、ちゃんと話して欲しいのに。どうして隠すの……? あたしに知られちゃ困ることでもあるの? ねえ、アービン。どうして? どうして黙ってるの……? |
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やや、とっても素敵な暑中見舞いが届きましたよ^^ ……え、もう残暑?いやいや、もらったときはしっかりめくるめく夏真っ盛りでした! というわけで。ハク様、おそくなって申し訳ないです^^;
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