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秋の『親子バス遠足」で、動物園に行ったことがありました。
こどもたちのはしゃぎまわる様子を楽しみながら、親子観察や
動物観察を続けていると…ふしぎな会話が聞こえてきました。
園児が、サルを見て、「おばあちゃんのこと」を思いだしたらしいのです。
おばあちゃんて、「サル」に似ている…とわが子が思ってる…。
パパはすぐに、それを否定しました。
自分の母親は、もっとまし。サルになんか似ていない。
似てるなら、その母親から生まれた自分も、「サル似」になります。
父親の、浅い読み…に母親は言葉をかけました。
「ミカ…ねぇ…。おばあちゃんのために『おにぎりの木』を植えたのよ」
「なんだぁ〜、それ!?」
パパはぜんぜんダメ。話の深みに、入ろうともしません。
ママは、近くにいたボクに、チラッと視線を投げかけて、
助けを求めました。
家族一緒なら、いつおやつを食べても良いことになっていたので、
広場のベンチにすわり、おやつを広げてボクを招待してくれました。
「エルフ先生のママは、どんな人ですか?」
天気を話題にして、話すことがもうなくなったパパは、
そう聞いてきました。事情を良く知っているママが、あわててとめようとしましたが、
このパパは、ぜんぜん。ボクは、苦笑しながら、あえて否定しないで、
『働き者だったから、手があかぎれでガサガサでしたね。
かゆいとき、背中に手を入れてもらうだけで、気持ちが良かったですね』
「ハハハ…。大根おろしのような? おろし金みたいな手ですね」
「エルフ先生のママも? ミカのおばあちゃんも、それだったよ!」
『それで、音楽の時間に、「かあさんの歌」をならったとき、
ねているときに、そっと、お味噌をぬっておきました』
「あ! ♪生み〜そをす〜りこむ…ってヤツ?」
陽気な若いパパ。ぜんぜん気にしていません。
「おてて、おみそだらけに、しちゃったの? だったら、朝になったら…」
パパに似ないで、感覚の鋭いミカちゃん、気がついていますね。
そう。考え事をしながら起きたリリノエは、味噌の匂いは感じていたけれど、
そのまま顔を洗ったからびっくり! その朝、洗面所から家中に響き渡る
女主人の笑い声…。男衆(おとこし)、女衆が集まってきました。
「顔を洗ったら、洗面器の水が、お味噌汁になったよ」
「・・・ほんとだ…味噌汁の匂いがする」
リリノエのすごいところは、おおぜいの前で、誰かひとりの失敗を
広めないこと…。理由説明など、しないままですませるところでした。
そして、瞬時に、なぜそうなったのか、ボクの困った顔を見て、悟っていたのでした。
「ミカもねぇ…おばあちゃんに、『おにぎりの木』をうえてあげたの」
「そうそう。植えてあげたんだよね」…と、ママ。やっと話がつながって
ほっとしているようでした。
・・・
そのときミカちゃんは4歳。あっついごはんを大きな手に乗せて、手を
まっかにしているおばあちゃん…。ひび割れやざらざらがひどくて、
節々がごつごつと盛り上がって、だんだん曲げられなくなってきた手…。
冷たい水仕事でも、手袋なしでパッ、パッと手際よくかたづけます。
でも、座った時は、いつも手をさすっているおばあちゃん。
ミカちゃんは思いました。できるだけ、わたしもさすってあげよう。
それから、それから、おばあちゃんがラクできるように、何か、お手伝いを
してあげよう…と。
そして、おやつに作ってもらったおにぎりを食べた時、ひらめいたのです。
おばあちゃんがにぎってくれる「おむすび」には、いつも『タネ』が
入っている。これは、きっと、『おにぎりのタネ』!
これを植えれば、「どんどんおにぎりができる」!
おばあちゃんの手も、真っ赤にならなくていい!
ママは、ミカちゃんが毎日、何かを植えている後姿を、
ふしぎそうに思っていました。
おばあちゃんも、それを見かけました。そして、ミカちゃんが遊びに行ったとき、
そっと、庭のすみをのぞいてみたのです。
すると、そこには、ミカちゃんの幼い字で、
「おにぎりのき」・・・と書かれてあったのでした。
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記憶の中の愛
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