一言
歴史小説アンソロジー作品。
甲越の両陣営の知名度を比較すると、
圧倒的に武田家に軍配が揚がります。
これは偏に「甲陽軍鑑」に拠る所です。
武田陣営は、山本勘助を始め、
山県昌景・真田幸隆・高坂昌信・武田信繁・
穴山梅雪・仁科盛信・秋山信友・・・。
すらすらと10人以上は名前を
挙げる事が出来ます。
対する上杉陣営は、宇佐美定行・
柿崎景家・北条高広・斎藤朝信・・・。
こっちも10人以上、余裕でした(笑)
内容
(引用、本書、帯)
戦国の世に「義」を掲げて疾走した越後の龍・上杉謙信、
その後継者・景勝と智謀の名将・直江兼続、天下に強さを謳われた上杉軍団・・・。
戦国大名・上杉家に関わる人々・合戦・事件を取り上げた短篇小説8篇が収録されている。
謙信の愛刀をめぐるエピソードを綴った東郷隆の「竹俣」。
留守城番を買って出る重臣の秘められた意図に迫る山本周五郎の「城を守る者」。
宇佐美定行の示した真の忠節を描く海音寺潮五郎の「芙蓉湖物語」。
謙信の後継を景勝と争った上杉景虎の運命を描いた永井路子の「流転の若鷹」。
上杉家が関白・豊臣秀吉に挑んだ奇妙な戦いを描いた火坂雅志の「羊羹合戦」。
お金が大好きな異色の武士に光をあてた神坂次郎の「ばてれん兜」。
直江兼続をマキャベリストの視点でとらえた童門冬二の「美鷹の爪」。
さらに晩年の前田慶次郎をユーモラスかつ爽やかに描いた大佛次郎の「丹前屏風」。
上杉軍団、かく戦えり!
謙信、景勝、直江兼続から前田慶次郎まで。
感想
特に、「城を守る者」「羊羹合戦」「ばてれん兜」の3編が面白かったです。
後方支援(留守城の守備・補給等々)があってこそ前線の武将は奮闘出来るのですが、
戦国時代、合戦において後方支援に回る武将は軽侮されがちです。
一番槍、一番首、一番乗りの武功と比較するとあまりにも地味だからです。
「ばてれん兜」の主人公は、何時も誰も引き受けたがらない留守城の死守を引き受けます。
その為、家中で侮蔑され続け、その影響で主人公の息子も陰口を叩かれ、
ことある事に主人公に反発します。
血気に逸る息子は父親の諫止を振り切り、討死覚悟で戦場に赴きますが・・・。
果たして主人公の真意はどこにあるのか?全てが明らかになるラストに注目です。
「羊羹合戦」は異色の作品で、爽快でほろ苦い物語です。
豊臣秀吉が開いた茶会で出された天下一の羊羹を越える羊羹を作成する為に、
主人公が奮闘していきます。
「羊羹」と言う題材も面白いですが、読ませてくれる作品です。
羊羹嫌いなので、作中に登場する羊羹を食べてみたいとまでは思いませんでしたが(笑)
「ばてれん兜」は有名な逸話(岡佐内)の物語です。
歴史に興味が無い人でも、どこかで聞いた事あるような逸話です。
戦国時代、武士にお金は不浄として捉えられていましたが、岡佐内は吝嗇で、蓄財が趣味でした。
更に、座敷一面に大判小判や銀貨を敷き詰め、転げまわるのが無上の喜びでもありました。
その為、守銭奴と非難・侮蔑され続けますが・・・、愉快で痛快なラストに注目です。
岡佐内は、直江兼続に「惜しい人物を手放した」と嘆かせた程の人物でもあります。
上記3作品以外も全て面白かったので、本書を手に取る機会があればぜひ読んでみて下さい。
★★★★☆でお願いします。