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 ドイツのハップフェルド社が1907年から製造を始めた、フォノリスト・ヴィオリーナは、博物館などの展示施設で最も人気のある自動演奏楽器ではないでしょうか。
 アップライトの上に3丁のヴァイオリンを乗せたこのタイプは、同社だけが製造・販売していました。
 私が初めてこれを見たのは30年前の1983年、渋谷の東急本店で開催された「オランダ国立自動楽器博物館展」でのことでした(正しくは「音のアンティーク展」)。
 
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 このイベントはかなり大掛かりなもので展示品はもちろんのこと、館員までがオランダから複数やってきて、彼らが通訳を通してオルゴールの説明をしたのです。
 そしてそのとき、「このフォノリスト・ヴィオリーナは世界七不思議の次の八不思議がこの自動演奏楽器である」と説明されたのでした。
 確かに八番目の不思議だけあってインパクトの強い、恐るべき自動演奏楽器でした。
 ではそのときの音は、演奏は、というとこれが全く覚えていません。
 なにしろこれだけ大掛かりな自動演奏楽器を見るのは初めてのことだったので、もうとにかく「スゲー、スゲー」というおもいだけで終始してしまいました。
 
 でもそれは誰もがそうなのでしょう。
 その後、この「8番目の不思議」はレプリカも含めてどんどん日本に入ってきて、多くのオルゴール展示施設で見ることが出来るようになりましたが、やっぱり「初めて見る聞く」人には大きな衝撃を与えるようです。
 なにしろピアノが鳴るのは普通だとしても、3丁のヴァイオリンが自動演奏されるのですから驚きでしょう。
 
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 この3丁のヴァイオリンは合奏するのではなく、3つでひとつの役割をしています。
 ヴァイオリンの、弓が当る部分を「輪っか」がとり巻いていますが、これがぐるぐる回り弓の役割をします。
 楽器の方からここに近付いてきて接触し擦れて音を出します。
 そしてネックを覆っている櫛状が指の役割をしていて弦を押さえて音楽を奏でます。
 
 ヴァイオリンがくねくね動いたり、弓が回ったり、いろいろと動きがあるので視覚的にはとてもおもしろい楽器です。そしてヴァイオリンとピアノの合奏という自動楽器も珍しいので初めて聞いたときには納得でしょう。
 ただ、その演奏はというと・・・。
 
 日本になかった頃はただ「珍しい」だけでよかったのですが、いろいろなところでこれを聴く機会が増えると、いろいろと比較するようになってしまいます。
 そうするとこの複雑な自動楽器の調整が大変なことがわかりますし、またヴァイオリンのチューニングにも手間がかかるだろうことが想像されます。
 ですので、これまで数々のフォノリスト・ヴィオリーナを聴いてきましたが、ヴァイオリンとピアノの合奏がピタリとはまり、目を瞑っていれば人間が演奏しているのだと優雅な気持ちになれたのは、スイスのボウ博物館で聴いたそれが一番でした。
 
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 もちろん調整直後と「今日これから調整しようとおもっていたのにぃ」とではチューニングも状態をかなりずれるので、1回聴いただけでは判断は難しいとはおもいます。
 
 ところでハップフェルド社というとフォノリスト・ヴィオリーナばかりが有名ですが、1870年代から1930年代まで多くの優れた自動演奏楽器を製造したメーカーです。
 オルゴール(自動演奏)の歴史に燦然輝くといっても過言ではないでしょう。
 
(写真はパルテノン多摩マジックサウンドルーム所蔵品です)

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 作家の故井上ひさしの小説「グロウブ号の冒険」に自動楽器の説明が出てきます。
 1987年に連載小説として執筆されたこの物語は、未完のまま絶筆となって、しかし途中で終ってしまうものの2011年に発刊されました。
 で、この自動楽器は登場人物によって会話形式で説明されます。
 それを断片的に紹介しますと・・・
 
 「グロウブ号のは自動オルガンなんです。演奏者が乗っていたわけではない」
 「演奏者の代わりに紙巻ロールが積み込まれていた。わたしが音楽考古学をはじめた動機というのがじつはこの紙巻ロールからの演奏者の再現だった」
 
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自動楽器の紙巻ロール
 井上ひさしの物語では自動オルガンになっていますが写真はリプロデューシング・ピアノの「ミュージック・ロール」です。話は続きます。
 
 「研究を再開したのは戦が(オルゴール家注:第二次世界大戦)終って数年してからののことです。その時分、自動ピアノだの自動オルガンだのは時代おくれの無用の長物ということでガラクタの中に埋もれていました。1924年に電気録音法が発明されて、途端にレコードの音質がよくなった。そのあたりからすでに自動ピアノや自動オルガンは見向きもされなくなっていたのです。そこへ戦後のLPブームでしょう、自動なんとかはもうすっかり忘れ去られていた」
 「ごく簡潔にいうと、演奏される音を、穴をあけることで記録する装置があるのです。次にこの穴あきロールを自動ピアノにかけます。自動ピアノにはトラッカー・バーと称する装置がついている。鍵盤の鍵数だけ穴があいてます。標準は7オクターブと短三度で88個の穴があいている」
 
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 トラッカー・バー
 ロールに油がしみてトラッカー・バーの孔が透けて見えます。本来はあってはいけないことですが怪我の功名でロールに隠された部分をお見せできます。
 
 「同時にこのトラッカー・バーには、ポンプからたえず空気がおくられてきています。穴あきロール紙は一方の回転軸から反対の回転軸に一定の速度で巻き取られてゆきますが、その途中、トラッカー・バーの上を通る。穴のあいていないただのロール紙が通っているときは、紙に遮られて鍵の穴に空気が入ってゆかない。しかし穴あきロールだとどうなるか。たとえば穴あきロール紙に『ド』『ミ』『ソ』の3つの穴があいていたとするとその穴から『ド』『ミ』『ソ』の打鍵装置に空気が届いて、それぞれの鍵を鳴らす。これが原理です」
 
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回転軸
 この写真はピアノとオルガンを組み合わせた自動楽器の演奏記録読取装置です。「一方の回転軸から反対の回転軸に」という説明がよくわかるかとおもいます。
 
 「この方法は1910年代後半から1920年代前半にもの凄い進歩を遂げ、管弦楽まで記録し再生できるようになった」
 「1960年代に、パデレフスキ、ブゾーニ、ラフマニノフといった名ピアニストの今世紀(オルゴール家注:20世紀)はじめ頃の演奏がロール紙から再現され、レコードになって大評判になったことがあったでしょう。あれはすべて私の真似でした」
 
 
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リプロデューシング・ピアノ
 1910年代から1920年代に長足の進歩を遂げた自動演奏楽器。このピアノは演奏者の指の動きや打鍵速度を記録して再現することができます。つまり演奏者が弾いたとおりの演奏が聴けるのです。
 
 この会話での自動楽器の説明は「ん?」とおもうようなところもありますが、よく調べてそしてさすがに日本を代表する作家の筆だけに分かり易く適確に書かれているとおもいます。
 でも一体どこでこういった知識を仕入れたのでしょうか。
 
 1987年というと、日本ではオルゴールの博物館は「オルゴールの小さな博物館」「ホール・オブ・ホールズ」の2館しかなかった時代です。日本ではあまり自動楽器の情報もなかったこととおもいます。
 ただ井上ひさしの生家は山形県のレコード店だったということです。レコードや演奏家に関するエッセイもあります。
 自動楽器のに関する造詣も案外レコード関係から来ているのかもしれません。
 
 「グロウブ号の冒険」での自動楽器の説明はまだ続くのですが、きょうみがあれば本をお読みになってみてください。

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 まだ浜松の話が続きます。
 浜松ではヤマハのピアノプレーヤー(Piano Player)の開発をご担当された村松繁氏からお話をお伺いすることが出来ました。
 
 ピアノプレイヤーとはピアノを自動的に動かす「自動演奏機」です。
 つまりこれを既存のピアノに付ければ、たちまち自動ピアノに変身してしまうのですね。
 オルゴールの仲間のひとつである自動ピアノは、1890年代から1920年年代にかけて欧米で大人気を博しました。 当時のはロール紙を穿孔して音楽を記録し、それをトラッカーバーが読み込んで空気の力でハンマーを作動させるというものでした。
 それに対し現代のヤマハのピアノプレイヤーは、平たく言えば電子信号でピアノを動かします。
 レストランやホテルのロビーなどで、ピアノが勝手に鳴り続けていたらそれがこれだとおもって間違いありません。
 
 昔の、例えば最も優れていたリプロデューシング・ピアノでも、極めて特殊な機種を除いては次から次えと楽曲が変わってゆくことはできませんでしたし、演奏の途切れることなしでの連続演奏も難しいことでした。
 しかし、ヤマハのピアノプレーヤーはそれらを可能にし、もちろん「演奏再現」であるし、「記録」もできるという優れものです。だいいち、家庭で使われなくなったピアノが約に立つだから嬉しいじゃないですか。

 村松繁氏はこのピアノプレイヤー界では後光が射すほどの方で、そのお話をおうかがいするということは震えが来るほどに感激的なことなのです。
 ですので60分に満たないわずかな時間でしたが、とても充実したひとときでした。
 ところがところが、当方はピアノプレイヤーへの造詣が浅く、というよりも電子システム全般に関する知識が不足していて、そのときはナルホドナルホドなどとうなづきながら聴いていたのに、今になってみるとな〜んにもわからず、ここで正しく説明するレベルははるか霞んでいる状態なのでした。

 それでここでは村松氏からお見せいただいた、数々の資料を写真でご紹介します。
 間違ったことを伝えたくないのでキャプションも付けませんが、わかる人にはわかり分からない人にはわからないという、困った写真なのです。

 ところで、ピアノプレイヤーという言葉に対して、一方にプレイヤーピアノという呼称があります。
 どこが違うんだ!!ですよね。
 大雑把に考えて、ピアノプレイヤーはピアノを動かす演奏機で後付可能なもの。
 プレイヤーピアノは最初から自動ピアノのために作られたピアノで、演奏機がガチガチに組み込まれているもの、と考えられます。
 とすると現代はピアノプレイヤーで、100年前はプレイヤーピアノということになるのでしょうか。
 もちろん例外もあるし異論もありますが、極々大雑把にそんな理解すればとおもいます。
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 アメリカ合州国のニュージャージー州モーリスタウンにあるモーリス・ミュージアムへ行ってきました。
 ここには合州国の高名なオルゴール・コレクターのコレクションが展示されていて、その種類もそして展示法も解釈によっては見るべきものがあって、その全体についてはまた紹介したいとおもっているのですが、アクティビティ・ルームについても中々工夫されたものでした。
 日本のオルゴール博物館というと展示品の種類はそれなりに充実しているものの、寄るな触るなの場合が多く、ではアクティビティはというと有料での「オルゴール組み立て体験」と相場が決まっているようです。
 しかしモーリス・ミュージアムのアクティビティ・ルームには、完全とは言えないものの入館者が触って遊べる「オルゴール」がいくつか用意されていました。
 その中で同行者を喜ばせたのが巻頭写真の「自動シロフォン」です。
 これはピンの刺さった円筒を回転させ、音に対応したバチを作動、シロフォン(鉄琴)を叩くものです。
 円筒に刺されたピンは入れ替えることが可能で、つまり演奏曲目をいかようにも出来るのです。
 しかしこれはこの博物館の独創ではありません。
 今最も知られているのがセラやシュピールで有名な、スイスのネフ社のグロゴモービルでしょう。
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これは子供の玩具ですがとてもよく出来ていて、やはりピン位置を入れ替えていろいろと演奏曲を替えて楽しむことができます。
 難点は半自動なために、1曲の中でも楽譜に合わせて回転のスピードも変化させねばならないことと、ストリート・オルガンのバレルに似ているので、生半可な人が勢いよく回してピンをすっ飛ばしてしまうことでしょうか。
 しかし、自動演奏の歴史の中では「自動シロフォン」が製品化された、ということはなかったようです。
 2本のバチを使って演奏するシロフォンは(上級者は片手に複数のバチを持つが)、自分で演奏してもそれほど難しくなく、逆に円筒を使って演奏する方が表現力に劣ったからでしょうか。
 天童オルゴール博物館には古い「自動シロフォン」があって、これはオモリの力を使って円筒を回転させる珍しいものなのですが、製作は1910年代ということですから実用品というよりも資料か何かのように思えます。
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 ただし単独ではないものの1900年代以降、穿孔された紙のソフトを使うオーケストリオンなどには盛んに使われています。
 特にピアノを中心としたそれなどにはなくてはならぬ楽器となっている感があり、堂々と前面を飾っていたりします。
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 ニュウマチック方式の採用で、バチの作動が容易になったことによるのでしょうけれど、それでも練習すれば「オレでも叩けないことはない」といった音楽表現力です。
 「自動シロフォン」は自動演奏楽器としてはいまひとつではあるかも知れません。
しかし、自動演奏の仕組みを知ったり触って遊んだりで、博物館やアクティビティにとっては重要な「自動演奏楽器」のひとつであるのです。

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オーケストリンは複数の楽器を備えた自動演奏楽器です。
 ピアノまたはパイプがメインとなって、それにドラムやシンバル、シロフォンなどの打楽器、あるいは管楽器やバイオリンなどの弦楽器が付いているものなどがあります。
 もちろんピアノとパイプの組み合わせというのも当然あります。
 写真はドイツのレッチェ社(1902年〜1927年ライプチヒ)の、ピアノとパイプを組み合わせたオーケストリオンで20世紀の初頭の製作です。
 当時はコーヒーハウスやレストラン、客間等に置かれていました。
 コーヒーハウスやレストランではコインを入れると演奏が始まり、また個人の客間・応接間ではマニュアルで動かします(どんな客間・応接間なんでしょうか)。
 いずれにしても憩いのひとときの大切なBGMとして使われていたのですね。
 そしてこの楽器には「フルート、バイオリン&ソロ・ピアノ」という製品名が付けられています。
 ふむふむ、まあピアノは当然でこれがメインの楽器。
 フルート、これはパイプ、つまり笛が付いているのだからそれがフルートなんだね。
 さて、バイオリン、おや、バイオリンなんてどこにも付いてないぞ、取り外しちゃったのかな、どこへ行っちゃったんだろう…。
 実はバイオリンはパイプです。この楽器に取り付けられたパイプはフルート音用とバイオリン音用なのです。
 パイプというのは調律によってありとあらゆる音色を出すことが出来ます。
 よく600本のパイプを持ったオルガンなどと言われたりしますが(NHKホールのパイプオルガンは7,640本だ!)、あれはプリンツィバルやダイアパーソンなどオルガンのオルガンたる基本の音のほかに、フルートだオーボエだヴィオラだなんだかんだと様々な音色を出すためのた〜くさんのパイプが付けられているためで、その音の切り替えにストップ(音栓)があるわけです。
 で、バイオリンもパイプの重要な音のひとつであり、特に自動演奏楽器ではよく使われていて、ストリートオルガンなどにはバイオリン音のみの「ゲンガン・オルガン」があります。
 またオートマタの、バイオリンを弾く人形などに手廻しのオルガンが使われていることがあり、その音色もまさにバイオリンなのです。
 レッチェ社の場合はバイオリンと断っていて、だから演奏が始まると「おお、なるほどあの高い音色がまさにバイオリンではないか」と認識するのですが、わざわざ断っていなくとも自動演奏楽器にはバイオリン音用パイプを付けたものがあって、意識して聴いていればそれとわかることがあるでしょう。
 澄んだ高音で、弓で弾いているような演奏です。
 ところで、このレッチェ社のオーケストリオンには製品名では断っていませんが、マンドリンも付いています。
 え、どこどこ? マンドリンなんてどこにも付いてないじゃないか。
 とこれまた当惑させてしまうのですが、正しく言えばマンドリン・エフェクターが付いているというべきなのでしょうか。
 演奏中のピアノの弦に上に、かぶさるようにエフェクターが下りてきて、ハンマーとの間に入ります。すると弦の音が変化して、それがマンドリンのように聞こえるのです。
 (エフェクターはちょっと歯の矯正具を思い起こさせるのですが…)
 もっともアメリカのメーカーではバンジョーなどと言っていて、それはそれでやはりバンジョーの音だといわれればそうなのでしょう。
 レッチェ社がわざわざ主張はしなかった、まあその程度の音だと思った方がいいのでしょうか。

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