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2008年3月7日(金)19:00 ドルトムント歌劇場
プッチーニ『蝶々夫人』

指揮:Jan van Steen
演出:クリスティーネ・ミーリッツ
舞台装置:Hartmut Schrgöhofer
衣装:Renate Schmitzer
合唱指揮:Granville Walker

蝶々さん:Annemarie Kremer
スズキ:Maria Hilmes
ケイト・ピンカートン:Martina Schilling
ベンジャミン・フランクリン・ピンカートン:Timothy Richards
シャープレス:Simon Neal
ゴロー:John Heuzenroeder
ヤマドリ公爵:Charles Kim
ボンゾ:Ramaz Chikviladze


ドルトムント歌劇場でクリスティーネ・ミーリッツ(同歌劇場芸術監督)演出、Jan van Steen指揮による『蝶々夫人』を鑑賞した。ドイツの劇場オケならワーグナーならがんばるが、このようなイタリアオペラのスタンダードナンバーはかなり出来にムラが有るように思う。ワーグナーなら高水準の演奏ができるだけに、イタリアものの場合指揮者の力量も大きく関わっているように思う。

また今回の公演で注目していたのは演出のミーリッツで、これまでウィーンなどでかなり過激な読み替えをして物議を醸してきた演出家なのでどのような演出になるか楽しみにしていた。ただ以前彼女の演出によるドルトムントの”リングチクルス”を鑑賞した時は、『神々の黄昏』で世界の金権主義批判をしていたのだが、そこに至までの3部作の関連付けが弱くあまり良い印象を持たなかった。一方、今回の『蝶々夫人』は、もちろん読み替え等々はあるのだが比較的素直に受け入れられやすい演出だったのではないだろうか。

反 or 嫌米主義というのは、このオペラの内容からして容易に想像がつく。ピンカートンが大変軽い人間に描かれていて、手癖足癖がやたらと悪く、彼によって振り回される蝶々さん、スズキ、そしてシャープレスという設定だ。蝶々さんは全く着物を着ず、洋服を着ているし、部屋には大きな星条旗が敷かれている。その割には自分の子供には、髪の毛の色を隠すため黒い帽子を被せ頭には日の丸のはちまきをしている。外面のためだろうか。一番疑問が多く残ったのは最後のシーンだ。蝶々さんが自害するところで、部屋の周りをアメリカ人達が取り囲みそれに向かいあって、蝶々さんと家族知り合いたち(=日本人)が座る。そして蝶々さんが自害すると、彼女は転がって舞台からも落ちて、そこに舞台全体を覆う蚊帳のようなものが降りて来て、その蚊帳を今度は座っていた蝶々さんの家族知り合いたちたちが両手で押さえて壁のようなものを作っている。過度にアメリカ文化に近づいた蝶々さんを日本人が容赦なく排斥をしたように感じられた。

このミーリッツの演出は、アメリカに対してはある程度はっきりしたイメージが描かれているのだが、日本については漠然としていていまいちはっきりしない。ひょっとしたら、日本なんて関係ないかもしれないとも思える。しかし、アメリカに対してはっきりと対比されている集団がいることは確かだ。ひょっとしたら、この対比されている集団の中には、日本だけではなくヨーロッパまでも含まれているのではないかとも思われた。いずれにしてもいろいろ想像力をかき立てられる演出である。

指揮のJan van Steenは、オランダ人でオランダ、ドイツ、イギリスを中心に活躍しておりBBCウェールズナショナル管の首席客演指揮者の地位にある。Steenは、ドルトムントフィルから信じられないくらい甘いコクのある音色を引き出すのに成功していた。なるほど指揮者によっては、ここまでできるのだなあと、地方オケの底力にも関心した。今回の公演の一番の立役者だと思う。

歌唱陣はみな声量はあるが、前回DOBで聴いたソリスト達と比べるとその実力差は雲泥の差である。深い表現力を歌とともに身につけるのも容易なことではない。

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