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日本文学20 「月の上の観覧車」新潮社 「トンネル鏡」「金魚」「上海租界の魔術師」「レシピ」「胡瓜の馬」「チョコチップミントをダブルで」「ゴミ屋敷モノクローム」「月の上の観覧車」8作品収録
荻原 浩(おぎわら ひろし)
咽頭癌に侵されたホテルチェーンの経営者は、自分の会社が経営するリゾート施設の観覧車にひとり乗りこむ。 それを追いかけるように妻の遼子が観覧車のゴンドラに乗りこんで来る。
ふたりは懐かしい過去を振り返る。
死者と出会える瞬間、自分にとってそれは月の出ている観覧車。 今までにだって幼い時に亡くした母、
若かりし頃の父とも会った。
13歳で死んだ息子の久生、そして、四年前に逝った 妻の遼子ともこうして会えた。 あと少しで終わる観覧車の中で、人生に二度目があれ ばとも思う。
きれいな月だ。 たぶんいままで見たなかで、いちばんの。
感想
良い短篇集でした。
表題の作品は、観覧車で出会った亡き人と自分の人生とを絡め、回顧するという凝った小説でした。
主人公は映画監督の道を進みたかったのですが、画家を目指した父と同じくホテル業を継ぎます。若いときの自尊心や夢の挫折を想いながらも、敷かれたレールの上を走ってきた父と自分を振りかえる作品ではないかと、そう感じました。
このほかに、上海租界の魔術師もよかった。あらためて感想文を書かせてください。
♪自分が生きてきた時代、人生を振り返りたくなるお年頃に私もなって
きました。 若いころのようには頑張れない。でもレールの先にもう少し
何かがあるよう な気もする。
マイペースで探っていけたらいいな、と思う今日この頃であります♪
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読書
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歴代芥川賞受賞作品を中心に小説の感想文を書いていきます
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日本文学19「数字と踊るエリ」講談社
矢幡 洋(やはた よう)
小学校入学を目前に、娘のエリに下され診断名は自閉症。
エリ、君を普通の小学校へ通わせるため、僕と妻はいろんな
療育を試した。
でも僕が大怪我をしたときも、妻が胃痛で寝込んだ時も、
エリ、お前はまったく気にする様子も無かった。
学校でもルールーが飲み込めず、周りから変わった子として
扱われていた。
でも仕方がなかったんだよな、君の世界の中には、君の興味を離さない、数字や独自のストーリーがあったんだから。
でもエリ、君はほんの少しづつ成長していった。
その努力は、僕らが考えているよりはるかにすごいこと
だったんだ。
お父さんもお母さんも、エリ、君を尊敬するよ。
「エリ、僕らはずいぶん高いところまで登れたな」
感想
お父さんもお母さんも、エリちゃんのために、いろいろな訓練を考えて
行います。
それは親にとって壮絶といっていいほど過酷なものでした。
時には悩み疑問を感じ、時には意見が合わず、何がエリちゃんのため
なのか?分からなくなってしまう時もありました。
それでも作者の矢幡さんはあきらめなかった。
その先にあったものは、見違えった娘の姿。
矢幡さんは臨床心理士で、コメンテーターとしてテレビにも出演している
そうです。
文才もおありで、ノンフィクションの小説を読んでいるようでした。
♪適切な対処や環境整備が無ければ、どんな子も戸惑います。
少し問題があるけれど、エリちゃんのような子供たちは正直で純粋。
天才的な能力を持っていたりする金の卵でもあります。
お父さん・お母さんだけに負担をかけるのではなく、周りでもフォロー
できたらいいですよね♪
追記
いろんな個性が認め合える世の中であって欲しいです。
空気なんか読めなくたって、読まなくたっていい。
まずは相手を理解し愛することが大切ではないのかと、
この本から学びました。
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日本文学18「この女」筑摩書房
森絵都(もり えと)
日雇い労働者、釜ヶ崎に住む甲坂礼司。彼に舞い込んできたバイトは、ある女の一生を小説にするというものだった。高額のバイト料を支払う胡散臭い女の夫。主人公になるべくヒロインに振り回され、執筆はなかなかはかどらない。
そして、このバイトには、とんでもない野望がからんでいることを知る礼司。
バイトのためではなく、礼司は自分のために小説を書こうと決めるのであった。
出だしは現在、お話は関西を襲ったあの大震災の少し前。
小説と現実とが、交錯しそうでしない。
小説を書くバイトに秘められた大きな計画。思わぬ展開。
読んでいると、どんどん引っ張られていく感じで、あっという間に読み終わってしまいました。
釜ヶ崎に住む、高齢化した労働者達の悲哀がやるせなかったです。
でも、ここの人たちの温もりみたいなものも感じられ、ほろっとする部分も沢山ありました。
面白かったです^^
♪家がある、仕事がある、家族がある、今の居場所に満足する事はとても大切なこと。
それを持つことがままならない人たちの居場所を奪うのは、とても残酷なこと。
ただ、どこにいても、人との心のふれあいを持てる場があることが、一番の幸福ではないかと、そう感じました♪
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日本文学17「下町ロケット」小学館
第145回直木賞受賞作品 池井戸 潤(いけいど じゅん)
少年の頃から宇宙に思いはせる佃 航平。
ロケットの打ち上げに失敗した責任を取り、研究所を後にして、父の町工場、佃製作所を継いだのは7年前。未だロケットエンジンに対する思いを棄てきれない佃は、水素エンジンのバルブシステムの開発に力を注ぐ。
ライバル会社の策略的な特許侵害の訴訟、宇宙開発大手企業からの専属特許使用契約依頼の圧力、佃製作所内の分裂など、度重なる困難にぶつかる。しかし、夢を信じる、仲間を信じる、それが到底叶わないと思える困難さえもクリアさせ、人の心まで変えていくと、勇気を与えてくれる作品。
感想
町工場が、大企業をギャフンといわせる所が痛快でした。一生懸命な佃社長に、難色を示していた人たちがひとり、またひとりと応援者になっていく所に熱いものを感じました。
自分ひとりでは夢はなかなか叶えられません。それを支え、応援してくれる
人の存在は本当にありがたいものだと思いました。
♪人の夢の実現に関わることで見えること、感じることはたくさんあると
思います。そこから刺激を受け、自分が本当にやりたいことを見つけて
いけたら、それはとっても意味のある事ではないでしょうか♪
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日本文学16「ツリーハウス」文藝春秋
角田光代(かくた みつよ)
中華料理店「翡翠飯店」の定休日、良嗣ただ一人で祖父の死に立ち会ってしまった。
祖父の死を機に、根のないように思われた家族の過去を紐解こうと考え始めた良嗣。良嗣と叔父の太二郎は、祖母の同行者として祖父母の出会いの地、かつての満州へ向かう。逆行したかに思える時間の中で、祖母の当時の姿を想像する良嗣。
家族三代が背負ったそれぞれの時代を通して、苦悩や後悔、それでも人生は、前に進むしかないのではないかと、問いかけられる作品。
感想
時代は違えど誰でも若い時はあり、時代に翻弄され、恋に苦悩し、時には
そこから逃げてきた経験があると思います。
しかし、どこまでも逃げているわけにもいかず、腹をくくる覚悟が必要で、
あとはそこで踏ん張って生きていくしかないんだなあ〜とつくづく思いました。
一番の幸福って、今いる場所に、まあまあ満足している事なのではないで
しょうか? 469ページ、読み応えタップリでした^^
♪身から出たさび、これを受け止める事が本当の強さではないか、
と感じております。時には、身内のさびも引き受けなくてはなりませんが^^;
もちろん、その逆もあります^^;♪
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