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生を見つめ、死を見つめる
 
                            洞林寺住職 
 
1、小林麻央さんの訃報
 歌舞伎俳優、市川海老蔵さんの妻で、フリーアナウンサーの小林麻央さんが六月二十二日に三十四歳の若さで亡くなられた。
二年前小林麻央さんが乳がんに罹り療養していることが知られ、メデイアにとって格好の取材対象であり、海老蔵さんの自宅に張り付く等過熱気味の取材活動があったようです。それ故、海老蔵さんは度々取材の自粛を訴える声明を出していました。
当初、麻央さんが自らの病状を語ることは無く、沈黙の状態でした。昨年九月から麻央さんが「KOKORO.」と題する闘病ブログを書き始めインターネット上に公開しました。夫への感謝、子供への愛情、進行する病状への不安…。ブログでは、妻として、母として、そして一人の女性としての、心のうちを綴っていました。二十八年十月三日の記事には「ステージ4だって治したいです。」という悲痛な叫びが記されていました。
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しかし、病状は重く不安であるけど、真剣に病気に向き合い、前向きに生きようと努めて居られました。麻央さんは昨年十一月二十二日そんな心境の一端をBBC放送のニュースサイトNEWS JAPANに投稿していました。
 
「今も、私の身体は、がんと共にあります。私は、テレビに出る仕事をしていました。病のイメージをもたれることや弱い姿を見せることには「怖れ」がありました。なので、当時、私は病気を隠すことを選びました。隠れるように病院へ通い、周囲に知られないよう人との交流を断ち、生活するようになっていきました。
一年八カ月、そんな毎日を続けていたある日、緩和ケアの先生の言葉が、私の心を変えてくれました。
「がんの陰に隠れないで!」
私は気がつきました。元の自分に戻りたいと思っていながら、私は、陰の方に陰の方に、望んでいる自分とはかけ離れた自分になってしまっていたことに。
何かの罰で病気になったわけでもないのに、私は自分自身を責め、それまでと同じように生活できないことに、「失格」の烙印を押し、苦しみの陰に隠れ続けていたのです。」
 
 小林麻央さんのような心境は、多くの人々が通ってきた道だと思います。既に故人となられた方々も現在病床に伏せる方々も、同じような心境となり、自らの生と死に向き合ってきたと思います。
 
 
2、生死 ( しょうじ)の中に仏あれば、生死 ( しょうじ )無し
 我々は、この世に生を受ければ、いつか必ず最期の時を迎えます。死を迎えます。こういう当たり前のことをわかっていても、人は死に対して背を向け、ただひたすらに生を追って、しっかりと死を見つめようとはしません。そしていつまでも生きられるように錯覚し、ひたすら生に執着してしまいます。
 
 『修証義』第一章に「生死の中に佛あれば、生死なし。ただ生死すなわち涅槃と心得て、生死として( いと)うべきもなく、涅槃 ( ねはん )として ( ねが )うべきもなし。」とあります。
ここで言う「生死( しょうじ)」とは「生と死」という意味ではなく、生死 ( しょうじ )流転 ( るてん )生死 ( しょうじ )です。「輪廻」とも言います。「生まれ変わり死に変わる、迷い苦しむ世界」という意味です。苦しみの最たるものは、死の苦しみです。癌の告知を受け、余命幾許も無いと言われれば、苦しみのどん底です。
 さきほど挙げた修証義の一文は
「今のこの世の人生がそのまま仏の世界となれば、迷いも苦しみもありません。悩み苦しむ我々の現実世界も、仏の悟りの世界も、決して別物ではありません。そのことをよく理解して、この現実の人生を嫌ったり拒否したりせず、特別な悟りの世界がどっかに有ると求めたりしないことです。」と言う意味です。
 病気と言う現実から逃げたり、目を背けたりしても、決して楽にはなりません。病気と言う現実を受け入れ、病気と言う現実に向き合うところから、「今自分は何を為すべきか?」「これから自分はどう生きるべきか?」考え、行動していくことです。
 
BBC放送への投稿の最後で麻央さんは次のように述べています。
「私は、闘病をBlogで公表し、自ら、日向に出る決心をしました。すると、たくさんの方が共感し、私のために祈ってくれました。そして、苦しみに向き合い、乗り越えたそれぞれの人生の経験を、(コメント欄を通して)教えてくれました。私が怖れていた世界は、優しさと愛に溢れていました。」

  病から逃げることを辞め、病にしっかりと向き合ったからこその言葉だと思います。この言葉は、病に苦しむ人々にとって大きな力となることでしょう。
 
                (洞林寺護持会会報 平成29年お盆号)
 
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         小林麻央さん、最後のブログ投稿写真
 
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