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膵がんで遠隔転移した場合は、局所に対して放射線治療を行っても意味がないので、抗がん剤による全身治療が行われる。ジェムザールが第1選択薬となっているが、じつはこの薬の適応範囲は考えられているよりももっと広いかもしれない。
「局所進行膵がんと診断された患者さんも、開腹してみると30パーセントぐらいに腹膜播種などの転移が認められます。すなわちステージ3と診断される膵がんのうち、3割くらいはステージ4ということになるわけです。そうなると、それらの患者さんに対して、化学放射線治療で局所を叩く治療を行うのはあまり効果的ではないのではないかということになります。切除できない膵がんは今は臨床的に2種類に分けて治療していますが、『この段階では強力な抗がん剤で全身治療を行うべきであり、あえて放射線治療をしても意味がないのではないか』という考え方があってもおかしくありません」
現在、このような切除不能膵がんを対象にして、ジェムザールと他の新しい抗がん剤を組み合わせる治療法の臨床試験が進められている。そして、最終段階である第3相試験の治療成績が次々発表される中で、ある事実が見えてきた。
「これらの成績を分析してみると、局所進行膵がんでジェムザールだけで治療した人の成績が分かってしまうのです。それによると、生存期間の中央値が10カ月、1年生存率40パーセントとなります。じつはこれは、5-FUを用いた化学放射線治療の成績と変わりません」
だから、まだ無作為化比較試験で確かめられていないといっても、ジェムザールだけを使った治療で十分化学放射線治療の代替治療になりうる可能性がある。石井さんは、「外来で投与が可能で、毒性が少なく、患者さんにやさしい治療法として、ジェムザールを選択してもよいのではないか」と考えている。
「化学放射線治療はどうしても入院が長期になり、国立がんセンターでも2カ月間を超えてしまいます。そして治療が始まると副作用のため、食欲不振、吐き気、倦怠感などの状態が続きがちですが、ジェムザールにはこうした副作用はさほどありません。ですから、『長い入院がいやだ』とか、『高齢なので放射線は避けたい』、『がんが広がりすぎて照射範囲が広すぎる』、さらに『確実とはいえないけれど、肝転移があやしまれる』といった場合には、化学放射線治療よりもジェムザール単剤による全身治療を選び、患者さんにお勧めしています」
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