まんがレコードA面/B面

懐しいアニメ・特撮のレコード・ソノシートに愛をこめて
たいへんご無沙汰しています。

この2か月あまり、5月4日に中野で開催される「資料性同人誌博覧会」の準備に追われていたこと、さらにこの一週間は風邪に苦しめられていたことで、ブログを更新できる状況ではありませんでした。

さて、今年に入り(昨年末から)、アニメ・アニソン界のレジェンドたちの訃報が次々と伝わっています。

2日前には、昭和40年代〜50年代を中心に声優で活躍された白石冬美さんが亡くなったことがわかりました。

白石さんといえば、我々の世代ではラジオパーソナリティとしての存在も大きいところですが、ラジオをあまり聴かなかった私としては、「W3」のボッコ隊長や、「巨人の星」の明子ねえちゃんといった声優ワークの印象が強いです。

多くのキャラクターを演じた彼女のベストワークを選ぶのは難しいですが、ここは主題歌も歌った「怪物くん」を挙げましょう。

「怪物くん」といっても、♪カーイカイカイ…の方ではなく、43年に放映開始した、モノクロ版の方です。

同作品は、「オバケのQ太郎」「パーマン」に続く、藤子&不二家路線の第3弾。制作も前2作に引き続き、東京ムービー(現・トムスエンタテインメント)が担当しました。

43年という年代は、41〜42年に巻き起こった空前の「怪獣ブーム」が沈静化し、替わって「怪奇ブーム」になった年。「ゲゲゲの鬼太郎」や「バンパイヤ」、「どろろ」「河童の三平妖怪大作戦」「怪奇大作戦」など、アニメ・実写問わず、その手の作品が続々と出現したのです。

「怪物くん」は、そんな中でもギャグアニメとして、他とは異なるポジションでした。
しかも、主人公のお供であるドラキュラ・オオカミ男・フランケンに代表されるように、西洋色の強い「モンスター」という立ち位置のキャラクターが大挙して登場。中にはどうみても「怪獣」としか形容しようのないキャラもいて、「怪獣ブーム」から「怪奇ブーム」への橋渡しをする作品ともいえるものでした。

白石さん演じる主人公の怪物くん(怪物太郎)は、怪物ランドの王子で、一見すると人間の男の子のようですが、数々の特殊能力を持ち、悪事を働くモンスターたちを懲らしめるスーパーヒーロー。
それでいて、短気で自己中心的な性格で、お供のモンスターたちにヒステリックに命令する声は、白石さんの声質がうってつけで、まさにはまり役でした。

主題歌「怪物くん」は、白石さんをはじめレギュラー声優が自分のキャラで歌い上げるもの。この構成も、「オバQ」(音頭)からの伝統でした。

 おれは 怪物くんだ(オー!)
 怪物ランドの 王子だぞ(オー!)
 おれの指先 一本で 一本で(オー!)
 大怪獣も でんぐり返るぞ(オーレー!}
 1・2の 3・4で
 たたんで のしいか
 ドカバカボカボン ドカバカボカボン
 ドカバカボカボン ドカバカボカボン
 ドラキュラ!(ハイざます!)
 オオカミ男!(ウォーでがんす!)
 フランケン!(フンガー、フンガー!)
 行くぞ3匹 ついてこい(オー!)
 愉快 痛快 奇奇怪怪の
 怪物くん(オー!)

作詞は藤子不二雄(おそらく安孫子さんでしょう)、随所に入る3匹の声までを含めた藤子の詩だったかはわかりませんが、後半の怪物くんと1匹ずつのやりとりだけでは、これだけの賑やかさはでなかったでしょう。
しかもこの声、途中で闘牛よろしく「オーレー!」に変わるところも、良い意味でワル乗りの成功例といえます。

それにしても、3匹のセリフはいずれも神フレーズだなあ!

作曲は筒美京平。当時のGSブームを受けたエレキ・ロック(筒美自身、「バラ色の雲」などのGS曲を手掛けた)が、小気味いいテンポと重厚感を演出しています。藤子作品では、前作「パーマン」の副主題歌「パーマン2号はウキャキャのキャ」に続く作曲となりました。

音盤は朝日ソノラマをはじめビクター出版、ミュージックグラフ、ケイブンシャ、エルムからドラマ入りソノシートが、コロムビア、テイチク、東芝、ビクターからEPがリリース。日音による音源管理のため、基本的にすべて同じバージョンの主題歌が収録されました。

この主題歌、TV放映版とレコード版で別音源となっており、白石さんのメインボーカルには大きな差はないものの、3匹(大竹宏、兼本新吾、今西正夫)のノリがレコード版では控えめになっています。
特に、大竹さんのドラキュラはイントロ部分で大きく異なり、TV版では"ギャーヒヒヒヒ"と目立つ奇声?を発しています。(レコード版でも言ってほしかった!)

音盤リリースで力が入っていたのは朝日ソノラマとビクター。前者はソノシート4集のほか、「鬼太郎」とのカップリング17㎝レコード盤、後者もソノシート2集とEPをリリースしました。

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画像はソノラマ版の第1集。

ブックレットには、表紙回りに藤子の画稿、中ページにはアニメ画(カラー)を掲載。原作付きの作品は、漫画家による画稿でブックレットを構成するソノラマには、珍しい作りとなっています。
これはおそらく、藤子の多忙さゆえの措置といえるでしょう。

シートでは本編第1話をベースにした新録ドラマ「怪物くんがやってきた」で白石=怪物くんが堪能できるので、この盤を聴きつつ彼女を偲びたいと思います。





いつもご覧いただきありがとうございます。

新年早々、残念なニュースがありました。
CMソングやアニメ・特撮主題歌の歌手としても活躍された天地総子さんが、亡くなられたのです。
年末の藤田淑子さんに続き、慣れ親しんだ方々の訃報に接するたび、心が痛みます。

でも、考えてみると、私のように1960年代に幼少期を過ごした世代に活躍されていた方は、仮に当時20代半ばとしても、現在は70代半ば。
いくら平均寿命が延びているとしても、"いいお齢"であることに変わりありません。

ということで、今回は"フーコ"の愛称で親しまれた天地総子さんを偲んでお送りします。
(本当は前回のタイミングでこの題材にしたかったのですが、新年早々の追悼企画はちょっと…という判断です)

さて、我々の耳になじんだ多くの歌を手掛けた天地さんですが、アニソン・特ソンの分野ではそれほど曲数は多くありません。
主題歌としては「かみなり坊やピッカリ・ビー」「怪獣王子」「進め次郎丸」「チビラくん」、そして「オバケのQ太郎(第3作)」くらいでしょうか。(副主題歌や挿入歌として、あと数曲)
「オバQ」では、Qちゃんの声も演じてましたね。
個人的には、アニメや特撮ではないですが、バラエティ番組「お笑いオンステージ」の主題歌が印象深いです。

で、どれを取り上げようかと悩んだのですが、彼女の初アニソンとなった「ピッカリ・ビー」に決めました。

一般にはあまり認知度が低い作品なので、簡単に内容をお知らせしますと…
空から地上にやってきた、かみなりの子供ピッカリ・ビーが、仲良くなった人間の子供たちとともに活躍する、というもの。

主題歌「ピッカリ・ビーのうた」は、作詞がピッカリ・ビー・グループ(制作スタッフ)、作曲が萩原哲晶。
音域が高いアップテンポの楽曲で、天地さんにうってつけでした。

天地さんの声をご存知の方はおわかりいただけると思いますが、声質が高く張りがあり、インパクト抜群。たとえ短い時間でも、一度聴いたら忘れない存在感がありました。(加えて、実力もあったことは言うまでもありません)

そのようなこともあり、短い時間でインパクトが必要なCMソングを多く手掛け、楠トシエさんに次ぐ"CMソングの女王"となったわけですね。

閑話休題。
そんな天地さんの声が主題歌の分野で最大限に生きるのは、コミカルさが求められるギャグ作品であり、「ピッカリ・ビー」はまさしくうってつけであると私は思います。
他の方がこの曲を歌うことは、まったく想像できません。

肝心の楽曲は、冒頭のエレキベースとファンファーレ状のブラスから一気にテンションがあがり、天地さんのメイン・ボーカルにボン・くーるのコーラスが花を添えます。1コーラスの終盤には、主人公たちの敵役"005ヱ門"がセリフで登場。ピンタラポンタラ…と笑いを誘います。

ちなみに、この005ヱ門役は近石真介さん。「サザエさん」の初代マスオ役他、多くのアニメやバラエティ番組のナレーターとしても活躍されていますね。

音盤は、朝日ソノラマからソノシート、コロムビアからEPがリリースされました。
主題歌は別録音ながら両盤に収録されましたが、2曲目としてはソノラマ盤には「雲のドライブ」(歌:美保くるり)、コロムビア盤には「ピッカリ・ビーはいいな」(歌:真理ヨシコ)と異なるものとなっています。

リリース時期はソノラマ盤が昭和42年4月、コロムビア盤が同6月。以前の回でも取り上げましたが、ソノラマによる期間限定の独占契約が本作でもあったのでしょう。

両盤の2曲目が異なるのは、放映時期によるエンディングの差し替えがあったのかもしれません。
(近年、本作のDVD−BOXが発売されましたが、EDまでの完全網羅ではないようで、確認は難しいです)

本ブログでは、基本的に本編オリジナル(に近い)楽曲の収録盤を取り上げますので、ソノラマ盤を紹介します。

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前述した2曲の他、オリジナル声優によるドラマ「勉強ロボット」を収録。
ブックレットは全編、原作漫画を手掛けたムロタニ・ツネ象さんによる書下ろし。
カラーページの色使いなど、とても力が入った仕上がりになっています。

ソノラマ盤・コロムビア盤とも、現在の中古市場では出現頻度は低く、1年間続いた作品の割には意外な感じですね。

おくればせながら、あけましておめでとうございます。
本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
とはいえ、相変わらずのスローペースになると思いますが(-_-;)

さて、新年の一枚目は、虫プロ初のカラーTVアニメシリーズ「ジャングル大帝」です。
本来ならば"国産初の"としたかったところですが、タッチの差で「ドルフィン王子」にその栄誉を譲ってしまいました。

しかし、放映回数や認知度・人気などを考えると、本作を"国産初"としても、世間一般は受け入れてくれるかもしれません。

ストーリーは、アフリカ大陸を舞台に、白いライオンのレオが、父パンジャの遺志を継いでジャングルの平和を守っていくもの。後年、ディズニーアニメ「ライオンキング」にも影響を与えたのではないか、といわれるほど、王道を行く内容でした。

主題歌は「ジャングル大帝のテーマ」で、バリトン歌手の平野忠彦が朗々と歌い上げるスケールの大きな歌。演奏も大自然の雄大さを感じさせるボリューム感のあるもので、当時のアニメソングとしては破格のオーケストラを起用し、話題となりました。

本ブログでたびたび紹介させていただいている元朝日ソノラマ編集者の橋本一郎さんによれば、本作の音楽の打ち合わせに参加された際、虫プロスタッフから「雄大な映像と一体化した力強いオーケストレーションのオープニングテーマにしたい。歌詞はあえて必要としない」と主張されたとのこと。

対して、橋本さんは「タイトルやキャラクターをきっちりと歌いこんだ、スタイリッシュなメッセージ性のある詞で、斬新な着想のテーマソングを作るべき」と強調し、激論を交わしたそうです。
ソノラマとしては、自社で制作するソノシートの売り上げを直接左右するものとして、子供たちにアピールする主題歌を求めたのは当然のことでした。

結局、手塚治虫の意見で作曲家に富田勲を起用、50人以上の大オーケストラ編成でテーマを収録することになってしまいました。
当時のアニメ業界では、音盤に関してソノラマの独占状態(いくつかの例外はありましたが)が続いており、音盤用のフルコーラス主題歌制作費として、ソノラマが収録経費を負担するという流れになっていました。

しかし、今回の経費は、通常の数倍かかる計算です。それではたして採算がとれるのか、橋本さんは大いに悩んだとのこと。

そんな折、顔なじみだった某レコード会社のAディレクターが、橋本さんに提案をしてきました。
曰く、「収録経費はこちらで持つ。完成したテープを無料でソノラマに提供する。だから、こちらでもレコードを出させてほしい」との内容でした。

橋本さんは一度は断ったものの、一応上司に報告すると、上司からは条件付きですが簡単にOKが出されたのです。

数週間後に届いたテープには、インスト版、ハミング版、歌詞有り版など数種類のテーマソングが収録されており、試聴した橋本さんは「芸術性が高くスケール感があり、アニメソング史上に残る傑作となるかもしれない」、同時に「ソノシートはあまり売れそうにないな」と感じたそうです。
たしかに、子供は歌わないですよね・・・

ソノラマでは歌詞入りバージョンを収録したソノシートを、「ハッスルパンチ」などと同時に昭和40年10月に発売。奥付の発行日は、なぜか40年12月となっていました。

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売れ行きは、それまで手掛けた「鉄腕アトム」などには遠く及ばなかったものの、なんとかプラチナセラーを達成したのでした。
現在の中古市場でも、「アトム」「鉄人」「ケン」などと比べ、出現頻度は少ない気がします。

ソノシートの売り上げが思うように振るわなかったのは、子ども受けするテーマソングではなかったことも大きな要因と思いますが、テレビ本編での扱われ方も一因だったと思われます。

というのも、ソノラマが受け取ったテープのように、数種類のバージョンを、放映回によって使いまわしていたのです。そのことで、ただでさえ子供が食いつきにくい楽曲が、いっそう親しみにくい存在になってしまったのでしょう。

芸術性と一般受けを両立させることは本当に難しいことを考えさせる顕著な例として、本作および本曲はこれからも語り伝えられる存在になるのではないでしょうか。







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