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「自殺されちゃった僕」刊行鼎談
「自殺されちゃった僕」著者吉永嘉明×ねこぢるy山野一×特殊漫画家根本敬
──妻、ねこぢる、青山正明
身近な人間ばかり3人も「自殺」で失った
哀しみと怒りを綴った本「自殺されちゃった僕」。
その著者である吉永嘉明氏と、
ねこぢるの夫であり現在“ねこぢるy”として
漫画を描き続けている山野一氏、
それと2人の友人で、本に登場する人物達とも
親交のあった根本敬氏に集まってもらった。
本誌でしか読めない特別鼎談!
平沢端理●構成
2003年9月28日
妻、巽紗季が亡くなった。
2001年6月17日
僕の仕事仲間で編集者であり、たぶん日本一のドラッグライターだった青山正明さんが亡くなった。
1998年5月10日
僕と早紀の友人であり仕事仲間であった、熱狂的なファンをもつ異色の漫画家、ねこぢるが亡くなった。
共通しているのは、みんな僕のかけがえのない人間であったということ。
気むずかしいけれど、とても魅力的で、豊かな才能があったということ。
そして──。
自殺したということ。
(「自殺されちゃった僕」冒頭より)
 ●明後日、電気が止まるんですよね……。
吉永 ……明後日、電気が止まるんですよね。寒くなってきましたから、電気止まると辛いなぁ……。今さもしい生活してますよ。人生で一番貧してます。
根本 四千万も貯金があった時代もあったのに(笑)。
吉永 二千万ですよ(苦笑)。まあ二千万なんて、うつ病でだらだらしてたら3年くらいでなくなりますよ。妻も稼ぎがなかったですからね、貯金を食いつぶす日々でした。いや、貯金がゼロっていうの本当にきびしいですね(苦笑)。
根本 今やマイナスですからね。
山野 僕らの仕事って、原稿料が入るのは半年後とかじゃないですか。さし当たってが困ちゃいますよね。
吉永 出版社も厳しいみたいで、印税率も下がってますし、この本の版元の飛鳥新社はまだ一応10%なんですけど……その飛鳥新社の編集の赤田さんとは、元々、他の企画の話をしていたんですよ。そんな時に妻が死んだんですね。それでめちゃくちゃな状態になってた時、赤田さんがわざわざ僕の家までみえて、「先に、この今起こったこと書いてみないか」と言われて……ちょっと考えたんですけど、他にもうやりようがないとも思いましたので、じゃあ書こうというのが、この本を書くことになった経緯です。内容については赤田さんから「率直に」ということでね。だから僕も率直に書いたんですけど、自分で見て……この本は非常に感情的な内容になってしまったかもしれないというのはありますね。
根本 奥さんが亡くなってから1年も経ってない今の状況だと、まだある程度感情的にはならざるを得ないでしょう。
吉永 もともと僕は分析的な文章が得意ではないですし、正直、まだ無理だなっていう部分はあったんで。じゃあ率直に感情の本にしちゃえ、ということで、こうなりました。その「率直に」という部分で、山野さんには「フルチンの文章だ」って言われたことがあるんですけど(笑)。僕としてはパンツくらいは履いてるつもりで、あと一息でフルチンになれるところを多少セーブはしたつもりです。とにかく、皆さんには率直であるということと、あと「楽天的だ」ということを言われますね。普段はあまり意識してないですけど、そう言われると確かに楽天的なのかもな、とは思いますね。
根本 それは元々吉永さんの中にある、どうしても拭いきれない感性ですよね。
吉永 神経質で打たれ弱いくせに、最後のところでどこか楽天的な部分があるんですよね。先のことをきちんとシュミレートして、憂うことがない。
根本 まあ、そういうことができる人っていう方が少ないですよ。
吉永 うちの奥さんはしてたんですよね。若い頃からきちっと理屈で考えて、この先どうなるという悲観的なビジョンをずいぶん見てたみたい。そういったものを考えていくと、どうしても悲観的にならざるを得ない気がするんですよ。だから僕は考えないんですけど、その辺が、人から見たら楽天的だと言われるみたいです。でもすごい先のことを今考えて悲観的になってもしょうがないんですよね。とりあえず明日の飯が食えないと。
根本 そうですね、やっぱり、まず電気が止まらないってことは大事ですよ(笑)。
吉永 ホントね(笑)。明後日止まっちゃうんですよ。この寒い季節に。
根本 切ないなぁ〜、切ないなぁ〜。そういう本気でどうしょうもないときは、暖かいお茶一杯だけでも染みるんだよね。
山野 お酒が飲めればワンカップでもありがたい(笑)。
吉永 悪い影響としては貧乏ならではのうつ状態が来て、気持ちがしみったれてきましたね。そういうしみったれた気持ちが、身に染みつかないといいなあとは思っているんですが……染みついちゃうとまずいんじゃないかなと。
根本 大丈夫大丈夫、染みつかないですよ。吉永さんは絶対それを利用して何かしらまた商売しようと思う性質だから(笑)。
山野 吉永さん、僕はちょっと貴族的なところがあるように見えますね(苦笑)。
根本 そうそう、それが端から見れば楽天性に見えるんだけど、その部分が、よく言えば「全身編集者」みたいなところだと思うんですよ。あぁ…僕、今必死で吉永さんを褒めよう、立てようとしてますね。
一同 (笑)。
根本 ともかく、奥さんが亡くなった後、「今立ち止まっちゃったら自分はダメになると思うんで、とにかく仕事しないといけないと思うんですよ」っていうのを会う度に強調してたんで、今すごくつらい状況にはあるけど、この人は最終的に大丈夫なんだろうなっていうのは感じたんですよね。それで結局、途中でやめないでとりあえずちゃんと本にしたっていうのはね、本当に偉いですよ。
山野 吉永さんはすでに出版社に通ってる企画がたくさんあるじゃないですか。だから当面のお金を凌ぐの大変でしょうけど、先にやるべきことがあるって今すごいいいことですよ。
吉永 ええ、先にやるべきことはある。その先にやるべきことに集中したいはしたいんですけど……。
根本 したいんだけど、明後日には電気が止まると(笑)。
吉永 6千円くらいあればいいんですよね。それで電気代払える(笑)。
根本 いや〜、目先のお金っていうのは本当、引っ張られてみないと分からないですからねえ。
吉永 一回貯金残高ゼロになってみないと、ホントに分からないものですよねえ(笑)。
 
●苦しんで書かなければ伝わらない、売れない
──本についてのお話も少し伺いたいんですが、書くことで、3人の自殺について自分の中でなにか結末をつけるといった部分があったんでしょうか?
吉永 途中で気がついたんですけど、書くことではなにも変わらないんですよね。それでもなぜ書くかというと、さっきも話したように、どこまで率直にできるかというのがありました。僕は分析的ではないですから、理屈ではなく感情表現でどこまで伝えられるかと。あとはまあ単純に生きるため食うためですよね。生きる為に書いたというとかっこいいですけど、それは食うために書いたともいえるわけで売れることを見出してより率直によりリアルにするために嫌ですけど、思い出したりして、赤田さんにも言われましたけど、苦しんで書かなかったら伝わらない売れないだから苦しんでくれと笑いを得るために苦しむのはやっぱり物書きなんじゃないかなと思います。
山野 僕もね、一昨年の2月くらいでしたか、吉永さんが書きはじめられるときに、「まだ早いんじゃないか」と言うことは言ったんですよ。5年くらい経って、はじめて整理がついてくるんじゃないかと。でも整理がついてからじゃ、今とは全然違う本になっているだろうから、今書いたからこそ、あの本が出来たという気がします。
根本 ジミヘンだってさ、あの短い生涯で一杯録音残してて、いくらジミヘンとはいえ、中にはどうしようもない演奏のもあるわけじゃないですか。でもその不調な状態の演奏でも、やっぱりそれはそれで胸を打つものがあるわけですよね。そういうことなんじゃないかと思いますよ。本気で、調子の悪い自分をあからさまに残しているわけだから。まあ、そういうのも含めて……吉永さんはなおかつ売ろう売ろうという計算が頭にあるんだから大丈夫ですよ。しかしある意味、今日のこの鼎談が、一番「売る」っていうことにつながらないかもしれませんね(笑)。
山野 ええ、つながりませんね(笑)。
 
──読者から反応は来たりしましたか?
吉永 ポツポツとハガキは来てました。反応が早かったのは、自殺未遂常習者の人が「本読みました。来週精神科に入院するんですけど、この本を持って行きます」みたいな内容のが主流で……女性ばかりでしたね。精神を病んだ人が多くて。今までにない特徴としては、感想の最後にみんな必ず「ありがとう」って書いてあることです。これは、僕が今まで作ってきた本にはなかった特徴ですね。
 
──単純にねこぢるさんや青山さんのファンだったから、読みましたっていう人もいましたか?
吉永 いましたよ。でも、ねこぢる絡みで読んだんだけど、ねこぢるについて書いてる部分よりも、妻について書いてる部分の方が入り込める、とだいたいそういう感想でした。やっぱり僕のテンションの差なんでしょうね。ねこぢるや青山さんのときもショックでしたけど、どうしても、一緒に暮らしてた人っていのは別次元のショックでしたから。ねこぢるや青山さんのところとは同じテンションで書けていないんですよね。そこがばれちゃってる。
 
──山野さんから見て、ねこぢるさんについて書かれている部分が、自分の持っているイメージと一致していたり違ったり、ということはありました?
山野 ねこぢると吉永さんは友達で、僕は夫であったんですけど、友人として仲良かった以上、僕の知らない会話もしてたはずですから。吉永さんがねこじるをどう捉えていたか、というのが率直に書かれていたと思います。僕は吉永さんの奥さんとは何度かしかお会いしたことがなくて、そんなには知らなかったんですよ。だから、吉永さんから奥さんのことはもちろん聞いてましたけど、それを本で読んで再確認したというか……よりわかったというのがありました。青山さんとも僕はそんなに親しくなくて、何度かお会いして、家に遊びに来てくれたことがあった程度だったんですけど、吉永さんの本読んで「ああ、こうだったのか」とあとから分かった感じですね。
 
──ねこぢるさんは「右脳人間」だ、と吉永さんの本の中で触れられてましたけど、そのあたりは山野さんから見てどうだったんでしょうか?
山野 そうだと思いますよ。なんて言うのかな……直感みたいなもので生きてる、という感じはしました。
吉永 直感が異様に鋭いんですよ(苦笑)。ちょっと予言者のようなね、鋭いところが。
山野 そういえば、吉永さんは32歳で死ぬ、とか言ってたことがありましたね。僕はもう忘れてたんですけど、意外とその言葉がこたえてたんだな、というのがを本を読んでわかりました。
一同 (笑)。
吉永 だって、予言者みたいだと思ってた人にそう言われたら、ちょっと困りますよ。やっぱりどこか楽天的なもので、どれだけドラックをやっても、死ぬって思わなかったんですよ。本当に死にそうになって、これはいかんと救急車に乗るんですけど、やっぱり死をあまり覚悟しないで遊んでたから、ねこぢるに「32歳で死ぬ」って言われて、ちょっとドキッとしましたね。
根本 あ、……、今32歳って聞いてさ、昨日たまたまザ・フーのキッズ・アー・オールライトのDVD見てたんだけど、キース・ムーンが楽天的にドラッグやって32歳で死んでたな、とふと思い出した(笑)。
吉永 僕はそれより10も年取ってるんだ(笑)。なんだかんだで結構長生きしてますねえ。
 
●大麻よりやっぱり電気代ですよ。
──この本について、新聞でも取材を受けられたとか?
吉永 取材に来た新聞記者の人に「いろいろ率直に書いてて、ドラッグの方で捕まったりはしないんですか?」とか言われましたけど……やらない、持ってないから書くのであってね、現役だったら書けないですよ(笑)。知り合いのライターの人たちも本当はドラッグについて書きたいんだろうけど、現役だから書けないっていうのがみんなあって。僕はバースト・ハイとかで書いちゃってて、悪いなとも思うんですけど……書くにはやめるしかないですよ(笑)。現役じゃ書けないですよ。マークされるに決まってるじゃないですか?
 
──マークされてる気配はないんですか?
吉永 どうですかねえ。まあ、とりあえず僕、今尿検査受けても家宅捜査されてもなにも出ないので、そこは楽天的に行きたい(笑)。一番やめにくいと思ってた大麻は、お金がないことでやめられましたし。大麻よりやっぱり電気代ですよ。
一同 (爆笑)。
 
──戻りましたね。話が(笑)。
吉永 いや、こういうパブリックなところで「電気代が払えない」なんて話をしてるのはどうかと思うんですけどね(笑)。包み隠さず話をしてきたとはいえ。
 
──では、ここを読んでくれとか、こういう人に読んで欲しいとか、ありましたらお願いします。
吉永 まあ……僕の電気代の話もありきで(笑)、本当に生きるのは大変ですけど、それでも生きようと思っているわけですよ。だから……まあ、「生きましょうよ」と。楽天的にでいいんですよ。まだ実家にいたりで、僕よりは経済的に追いつめられてない人が多いと思うんです。僕はわりとギリギリですけど、楽天的に行きますので、経済的に追いつめられてないんだったら、もうちょっと人生を楽しく生きたらいいんじゃないかと思います。やっぱり生きてる方が、なんかね……楽しい気がしますよ。だから楽しくない人に読んでもらいたいですね。それで「少し割り切るか」と思って欲しい。空前のベストセラーになった「完全自殺マニュアル」は「死んでもいい」という本でしたけど、僕の本は「生きましょう」という本で、正反対なんですよね。同じように売れてくれたらどんなにいいかと思うんですけど、もし同じだけベストセラーになったら、僕は……ドラッグで死にますね。
一同 (爆笑)。
 
──駄目じゃないですか(笑)。
吉永 それは止められないと思うんですよ。そこまで売り上げ手に入れちゃったら、止まらなくなって死にますよ。
根本 いや、でもそういうもんなんだ人間っていうのは(笑)。
吉永 勿論、売れて欲しいですけどねもそんなに売れないから大丈夫ですよ。あと自殺した3人の話が書いてあるわけですけど、背景にはレイヴカルチャー、ドラッグってものがあります。青山さんを除いては、そんなにドラッギーな人ではないですけど、筆者の僕自身の話として、そういう90年代の東京のドラックカルチャーってものがある程度読めると思います。みんな、レイヴ第一世代だからね。僕が倒れてねこぢるに助けられたりとか(笑)、僕が倒れてばっかりなんですけど、まあ、そういうことが書いてありますので、読んでみてください。

吉永嘉明
1962年東京生まれ。明治大学文学部卒。バブル期に就職を迎え、出版界に入る。以来、ずっとフリーで雑誌・書籍の編集に従事。バブル末期には雑誌編集の傍ら就職情報誌や企業案内パンフレットなどを手がけ、「出版バブル」を体験する。海外取材雑誌『エキセントリック』編集部を経て、サブカルで勢いがあった頃の『別冊宝島』で編集・ライターをするようになる。95年〜97年、雑誌形式のムック『危ない1号』(データハウス)の編集に従事。著書に『タイ〔極楽〕ガイド』『ハワイ〔極楽〕ガイド』(共に宝島社文庫)など、編・著書に『アダルトグッズ完全使用マニュアル』『危ない1号』(共にデータハウス)。『サイケデリック&トランス』(コアマガジン)など多数。現在、雑誌『BURST HIGH』にドラッグ&レイヴ小説を執筆。近年、編集より執筆の仕事に重きをおくようになる。
山野一
1961年福岡生まれ。立教大学文学部卒。四年次在学中に持ち込みを経て『ガロ』で漫画家デビュー。以後、各種エロ本などに漫画を執筆。キチ○イや障害者、差別、電波などを題材にした作風を得意とする。主著に『夢の島で逢いましょう』『四丁目の夕日』『貧困魔境伝ヒヤパカ』『混沌大陸パンゲア』『どぶさらい劇場』(共に青林堂)他多数。故・ねこぢるの夫でもあり、現在はねこぢるy名義でも活躍中。雑誌『BURST HIGH』に4ページのマンガ「火星波止場」を連載中(当時)。
根本敬
1958年東京生まれ。東洋大学文学部中国哲学科中退。『ガロ』1981年9月号「青春むせび泣き」にて漫画家デビュー。活動の場は多岐に渡り、かつての『平凡パンチ』から『月刊現代』、進研ゼミの学習誌からエロ本まで。自称・特殊漫画家。他にイラストレーション(しばしば便所の落書きと形容されるドギツク汚らしい)、文筆、映像、講演、装幀等、活動の場は多岐に渡る。主著に『生きる』『因果鉄道の旅』他多数。著者公式HP『因果鉄道の旅とマンガ

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今月は漫画家の山野一さん(ねこぢるy名義でも活動)をゲストに迎えての対談形式でお送りします。山野さんは約8年前、僕は2年半前に共に妻を自殺で亡くしています。同じ境遇の先輩として僕は妻に死なれた当時、山野さんにとても助けられました。2年と8年の違い──残された者はどのように立ち直っていくのか? そのへんを探ってみたいと思います。
◎ ◎ ◎
吉永(以下、吉)どうも、お久しぶりです。今日はとんだ遅刻をしてしまって……

山野(以下、山)2年くらい前は約束自体を忘れてましたよね? 僕も妻に死なれたばかりのとき、同じような症状がありました。音が聴こえづらかったり、温度が分からなかったり。12月なのにTシャツ1枚で過ごしていた時もありました。

吉 僕は未だに重い鬱状態になると自律神経が狂って暑さ寒さがわからなくなったりしています。健忘の方はだいぶよくなってきたんですが……。山野さんは今、(妻に死なれたことからくる)鬱状態を完全に脱しているように見えますが、解放されたという感じはありますか。

 鬱を脱したというより、ショックから遠のいたという感じですね。結婚する以前の状態に戻っていくという感覚ですね。

吉 僕はいまだに妻にとらわれていて、まったく解放されていないので、山野さんみたいな感覚にいつかなれるのかな? と思っているんですが。

 革命的にガラッと心境が変わるわけではなく、なだらかに変わっていくものだと思うんですよ。

吉 (亡くなった)二人は、生前から自殺願望を口にしていましたけど、その点に関しては、どう気持ちの整理をつけましたか。

山 自殺に関しては、健全な状態で選んだことではなく、欝という病気が背中を押したということもあるかもしれない。病気が死に至らしめたという面も否定できないと思っています。

吉 山野さんは僕からみるととても理性的に見ます。僕は山野さんと同じ時を経たとしても果たして同じ心境になれるかどうか……。

山 とにかく二人は世の中に失望していたんだと思います。諦めていなかったから失望するわけで、現実を失望しきることで治癒するということもあるかもしれませんね。

吉 確かに妻は、僕に会う前から失望していました。僕と一緒にいた時は、一瞬失望を忘れたのかもしれませんね。でも7年たって鬱病になって……。

山 でもおかげで、7年生きれたという見方もありますよね。

 僕は、「死なれちゃった。とても悲しい」という本をだして、それにくる手紙を通じて僕よりもヤバイ人、死にたがっている人がたくさんいることを実感しました。それで、どうしても今度は「なぜ生きるのか」ということを考えちゃうんですよね。

 僕はそれには違和感があります。死を選ぶのは能動的なことだと思いますが、生きることは積極的に生きようと思わなくても普通にしていれば生きますから。生きる意味なんてなくても、ささやかな楽しみで人は生きていけるんじゃないでしょうか?

吉 でもささやかな喜びを積み重ねることを人は忘れてしまうんですね。

山 生きる意味を考えずに生きることを虫のように生きているととらえられるかも知れませんが、虫で何がいけないのだろう? と思います。人は等身大の自分より大きな夢を持って、それが達成できないと失望してしまう。それは狂気なのかもしれません。

 山野さんは僕から見るとある種「乗り越えた人間」なんですが、身近な人に死なれて壊れてる人に何かメッセージをいただけますか。

山 ある時スッと抜ける場合もあるし、つらい欝がちょっとした出来事を機に好転する時もある……。とにかく浮き沈みや早い遅いはあっても、時間の経過とともに徐々に解除されるのは間違いないと思うんです。あと、えらそうなことは言えませんが、みなさん生真面目過ぎると思います。色んな事に前向きに正しく失望しろと言いたいですね。
◎ ◎ ◎
確かに人間は錯覚して生きないといきていけないのかもしれない。山野さんと話して、ささやかな喜びに生きるという謙虚な姿勢が自分にも欠けていたと思いました。

吉永嘉明
1962年、東京生まれ。海外取材雑誌『エキセントリック』編集部を経て、サブカルで勢いのあった頃の『別冊宝島』で編集・ライターをするようになる。95年から97年、編集者及びドラッグライターとしてカリスマ的存在だった青山正明氏と『危ない1号』(データハウス)の編集に従事。著書に『サイケデリック&トランス』(コアマガジン)、『自殺されちゃった僕』(飛鳥新社)など。

所収:ミリオン出版『実話GON!ナックルズ』2006年5月号 p.111
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 自動販売機雑誌 JAM 佐内順一郎
わしらのフリークランド
『Jam』って雑誌知ってる? 百恵ちゃんゴミあさり事件で有名になった自販機雑誌の帝王!とまではいかないけれど熱狂的なファンを持つ雑誌のニュー・ウェイヴ。その若き編集長(25)が公開する『Jam』のすべて!
 
百恵ちゃんありがとう!
『微笑』の記者がジャム出版(エルシー企画という出版社内に『Jam』専門の出版社を発足させた)に取材に来たのは創刊号が出て2ヶ月ほどしてからだったと思う。一目見て下等物件だと判る男が二人やって来て、具体的なゴミあさりの方法、山口百恵の家をどうやって調べたのか、企画の意図は、Jamとはどのような方針にもとづいて作っているのか、などを聞くので、僕としては初めからこの手の記者を信用する気にはなれず、どのような記事を書かれてもかまわない、と覚悟した上ですべて本当のことをしゃっべったママ

相手は「できうる限り『Jam』の新しいこころみを紹介していくような形で面白い記事を書きますから……」とかなんとか言って、気持ちの悪いニヤニヤ笑いを浮かべて帰っていった。今でもハッキリ覚えているのは彼らの「モモエに関するネタを載せれば確実に売れますんで……」という言葉である。

そしてどのような記事ができあがったかは『微笑』五月二六日号をお読みになれば分かる。「前代未聞!アングラ雑誌が百恵宅のゴミを集め堂々とグラビア公開あまりの手口にファン、関係者は“やりすぎだ!”と」というサブ・タイトルで正に「微笑ならでは」のものだった。かなりドートク的に非難されちゃったもんね。

だけどぼくたちにとってこの記事はとても有効なものだった。というのは、その後この記事を読んで創刊号の申し込み、新聞、雑誌などの取材、定期購読申し込みなどが次々と舞い込んだからだ。百恵ちゃんどうもありがとう。

ところが馬鹿な読者がいるもので、この企画を連載にしろなんて言っている。山口百恵の使用済ナプキンをグラビアで大衆の面前に公開してしまった今、これ以上何を見せろというのだろう。極致は一回きりでいいのだ。
なお、ゴミあさりページの最後に小さな活字で山口百恵のゴミをプレゼントします、と書いたところ、数名の青少年から申し込みがあったことを付け加えておく。
 
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『Jam』を始めるまで
世の中には、自分の好き勝手に仕事をさせてくれる場所というものが、まだ残っていた。

今からちょうど一年前、町で一冊のオールカラー・ポルノ雑誌を拾ったぼくは、その中に少女が素肌にパンティー・ストッキングをつけた美しい写真を見つけた。これがフェティッシュの極地で、何とも言えない傑作写真だった。

ぼくはさっそく発行元のエルシー企画に電話をし、こういうフェティッシュ写真のいっぱい載っている本は他にありませんかとたずね、ついでに自分は大学をやめて今好きなことをやって過ごしています、それに友だちとミニコミのようなもの出していますのでよかったら送りますから読んでください……などと話したのだった。

結局一度遊びに来てくださいということになり、こうしてエルシー企画とのつき合いが始まったわけだ。ある場所から違った場所への展出は、だいたいこうしたたわいもないきっかけから始まるものだろう。

初めてエルシー企画に行った日の夜、正確には新宿の飲み屋「池林坊」にて第一回目の企画が決まり、『スキャンダル』という雑誌の中の八ページを「Xランド独立記念版」とすることになった。

『宝島』誌上ですでに有名な隅田川乱一君と二人でその八ページを作り上げ、それを渡した段階で次号の『スキャンダル』を新雑誌『Xマガジン』として一冊引き受けることに決定。

年明けて一月、特集ドラッグと銘打った今では幻の雑誌『Xマガジン』が発売された。内容はドラッグ・ソング訳詞、笑いガスの実験、実際には存在しない本の書評、不可解SF小説、インタビュー、それに後にマスコミをわかせた芸能人ゴミあさりの第一回「かたせ梨乃の巻」があった。

現在この『Xマガジン』はぼくの手元にも5冊しか残ってない。噂ではかなりのプレミアが付いて売買されているという。現在の『Jam』はさらにこれを新雑誌として創刊したもので、正式には『Xマガジン Jam』という。

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●Jamの前身=X magazine
 
オーナーと会社のことなど
オーナーはエルシー企画という自動販売機ポルノ雑誌専門の制作会社の社長で、とにかく「口は出さないから何でも好きなことをやっていいよ」という恐ろしく太っ腹な人で、実際おなかが太く、ときどきカメラマンに変身して女の子の股間を撮りまくったりする人です。

今のところ『Jam』に関しては、どんなに馬鹿ばかしく、過激な記事を載せても文句を言われたことはありません。本人は三〇そこそこのくせして「Jamなんて読んでも全然わからんもんね、わ。」なーんて言っております。

会社は池袋にあり、毎月『Jam』とか『メッセージ』などの実話誌と呼ばれる月刊誌を五、六冊と、「悶絶トルコ壺洗い」などというとてつもないタイトルをつけて売るグラフ誌と呼ばれるオールカラー六四ページの本を四、五冊作っています。

これだけたくさん出しておきながら、販売に関してはまた別の会社があって全国の自動販売機に入れているため、あまり儲からないようです。有名な亀和田武さんの存在で名をはせたアリス出版も、同じグループの制作会社です。

毎月たくさんのポルノ雑誌が自動販売機で売られていますが、よく売れているのはエルシー企画の『メッセージ』『少女激写』、アリス出版の『ガール&ガール』、土曜出版の『告白人』などですが、売上げは毎月かなりの変動があります。

自動販売機のばあい表紙しか見えないので、たまたま表紙にエロチックな女の子が出てる奴が売れてしまう、ということもあるようです。けれども『Jam』については毎月毎月ビリから数えた方が早いという現状です。(それでも公称一〇万部だから凄いでしょ)

エルシー企画で出している実話誌のほとんどが外注による制作で(社員でない人が作る)だから僕たち『Jam』のスタッフもエルシー企画の社員ではありません。ジャム出版というのはエルシーの中の三軍会社で、隅のほうで小さくなってポルノ雑誌とはとても言えないような『Jam』を作っているわけです。(社長註:その割にはでかいツラしてメシ食ったりソファーで寝たりしてるじゃねーか、バーロー‼︎)
 
これがジャムの主力メンバーだ!
まず隅田川乱一君。彼は学生時代からの仲間で、永年印籠(いんろう)の研究をしています。いまだにその正体がはっきりせず、最近では『宝島』のほか『本の雑誌』などにもオティズムやプロレスの話を書いていますが年齢はわかりません。

次に山崎春美君。彼は現在、工作舎という出版社に修行に行っていますが、目の下にクマを作ってニヤニヤ笑いながらロックの話をしてくれます。『Jam』では主に音楽ページと小説を担当していて、打ち合わせで会うと作業服を着てときどき体をケイレンさせたりする面白い子供です。

次に高杉弾君。この人は1号から5号までいますが、どれも大した違いはないみたいです。どうも大した才能はなさそうで、普段はいつも放心していますが、締め切りが迫ると突然思い出したように「自分と他人の区別がつかない」「いつか夢で見たあの素晴らしい場所」等のコピーを考えついてくれます。巻頭のヌード写真のコピーと、「バッド・トリップ」というコラムその他を書いています。

そして僕は佐内順一郎といって、いちおう編集長の役目をしていますが、生まれつき頭がパーなので何をやってもうまく行きません。その上最近被害妄想が強く、道を歩いていると向こうから来る女の子にいきなりぶんなぐられるんじゃないかとか、『Jam』が発禁になってオマワリさんに棒をお尻の穴に突っ込まれるんじゃないかとかがとても心配です。ヌード写真のディレクションや図版を集め、レイアウトや原稿取りやオナニーなどをしています。

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●編集長近影
 
企画をどーやってたてるか
まず月の初めに四人の編集者が集まって企画会議をやります。会議といっても、渋谷の喫茶店でお茶を飲むだけの話ですが、だいたいこの席で、殆どの企画が決まってしまう……などということは絶対にありません。たいてい一人は来ないし、ひどい時はぼく一人で企画会議をします。こういう時のために佐内順一郎は1号から3号までいるのです。

うまく四人が集まったときは最近聴いたレコードの話、それに本や映画や人物について、横浜の中華街にホステスが全員オシのバーがあるとか、どこそこのカメラマンはモデルの女の子を手ごめにしているとか、オナニーというものがあるのにセックスなどをする人の気がしれないとか、NHKにフリーメースンが出て恐ろしいことをしゃべったとか、まあ、そんな話をしていますが、たまには存在学とか禅とダダについてとか、神秘学がどーしたとかロバート・フリップやイーノが今何をしようとしているかとか、工作舎の話とかもします。

だいたいこれが編集の第一段階で、これらの話の中で面白そうな所をぼくがピック・アップしておくわけです。そして後日「幼稚園とうんことオカルティズムの問題をポルノ雑誌風にナニしてもらいたいんじゃがのう、ワシとしちゃー」かなんか言って人に頼むわけです。

こんなふーに書くと、何かとっても安易に作っているように感じられるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。

有名な隅田川乱一君も言っているように、現代において、霊的な衝動というものはこのように奇形的な感性を通じて表出してく来るのであって、時代の裂け目へのアプローチは尋常な手続きからは決して始まらないのです。

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●企画会議中のスタッフ
 
盗難事件
八月一二日、エルシー企画のカメラマンと新宿歌舞伎町の喫茶店「マジソン」でおしゃべりをしている間にイスの横に置いておいた手さげ紙袋を盗まれてしまった。

それにはJam第七号の原稿とレイアウトの他、カメラに時計にダイヤモンドの指輪、それに現金が四〇万円にマリファナが七キロ、ヘロインが二キロにピストル2挺、ダイナマイトが6本入っていたので警察にもとどけるわけに行かず、ほとほと困ってしまった。
 
股間にジャムをぬるのはいーです
表紙、巻頭巻末カラーなどのモデル撮影は、締め切りが中身のページよりだいぶ早いので大変です。わがJamには岡克巳という天才的な才能を持った変態カメラマンが付いているので質的には毎号自信を持ってお送りしていますが、モデルはとなるとなかなかむずかしい問題です。

こうした業界向けのモデルクラブがいくつかあり、それらのリストを見て決めるバアイもありますし、エルシー企画専属の撮影会社にいるモデルを使うときもあります。なにしろJamの場合、よそでは見れないようなハードな物を撮ることがありますので、そういうときはモデルをさがすのが大変です。

『ヤングレディー』かなんかの広告を見て来たモデル志望の女の子には、パンティは取りたくないとか、ひどいのになると顔が写ったら困るとか言う子がいますが、それでは撮影にならないわけで、そういう子はパスします。

逆に初めての撮影のときから何のためらいもなくパッパッパと脱いじゃう子もいて、だいたいこちらの方が多いようですね。

よくヌード写真のカメラマンなんてえのは脱がせたモデルはみんなヤッちやうんだぜ、なーんてことをいいますが、あれはウソです。本当にウソです。そんなことはありません。まあ、中にはそういうことをする人がいるかもしれませんが、ジャム出版、エルシー企画周辺にはそういう人はいません。

撮影のやり方というのは単純で、ある雑誌の巻頭カラー八ページなら八ページ分の企画、設定などを編集者が考え、それを発注書にしてカメラ部に渡すわけです。だいたいJamの場合、表紙、巻頭、巻末と三回の撮影が行われます。

とにかく一番苦労するのは、ポルノのパターンなんて、とっくに出つくしているわけで、いかに新手を考えるかということです。

僕の面白美学によると、女の子の股間にジャムをぬりたくるのは面白いけれども、ジャム、山芋を突っ込んだり、サラミソーセージを入れたりするのは猥褻でも何でもない‼︎ そーゆーのはダサい!

あと巻末については毎月フェティッシュ風接写写真でやっていますが、これが大好評で、特に八月、九月に発売された号の巻末はかつてどの雑誌もやらなかったというものです。何かポルノの新手があったら教えてください。
 
『Jam』ひん出用語一覧
真実、八百長、禅、幻想、奇形、神様、天皇、コンセプチアル、官能、愛、夢、オマンコ、狂気、肛門、芸術、乾電池、オナニー、幻覚、山口百恵、竹下景子、フェティッシュ、天才、快感、クァイカン、冗談、月、外科病院、暗号、アナーキスト、物質、変態、あれ、ダダ、暴力、サイケデリック、馬鹿、百姓、中卒、東北、興奮、主婦、霊的衝動、革命、プラスチック、深夜、星、存在学、脳みそ、タンポン、足の裏、問答、くそ、原爆、テロ。

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工作舎のこと
スタッフの一人が工作舎の遊塾生であることや、『遊』の特別組本(は組)に原稿を書いていることもあって、工作舎とは仲よくしています。図版や原稿を回してもらったり、工作舎のスタッフに原稿を頼むこともあります。

『遊』は第Ⅰ期の頃から見ていて、Jam創刊に大きな影響を受けてます。最近組本などで聖俗革命(アンシャンレジューム)を謳っているようですが、Jamでは工作舎とは別のアプローチで聖俗革命を起こして行きたいと思っています。
 
X-LAND
XランドというのはJam創刊の三か月前に『スキャンダル』誌上で独立を宣言したコンセプチアル国家です。

生活に夢を持たない人々のための国境も、法律も、制度もない、いってみれば、ただ革命だけを求める超デタラメ国家なのです。

ただ宮内庁というのがあり、天皇がいます。今上天皇は第三代目ですが、それが誰なのかは誰も知りません。毎月Jamの一六ページを占めるXランドの最後のページに、天皇から国民ヘの求愛のメッセージが載っています。

他には情報ページ、写真、Xボーイ・エキスプレス、インタビュー、レコード紹介、書評、市民の声などがあります。
 
まわりのイカレた人たち
Jamの原稿は前にあげた四人の他、工作舎の後藤君、中島君。大阪に住んでいる坂口君、この人はサイケデリック・ミュージックにやたら詳しく、今度アメリカに行ったので、その話を連載する予定。あと吉祥寺の「マイナー」関係の人たち、漫画は『ガロ』編集長の渡辺和博さんと、天才と言われる蛭子能収さんに頼んでいます。

渡辺和博、通称ナベゾ氏はセックスの一回性と子供の性生活、それにナチズム的ラリパッパ主義に燃えるオートバイ少年で、はっきり言えば、かなりの変態です。

あと表2と裏表紙をやっているのは『ダヴレクシー』というシャレた雑誌で世間をアッと言わせた羽良多平吉さんで、抜群の虹色感覚を見せてくれます。

それに「ウィークエンド・スーパー」のセルフ出版の人たち、天像儀館のお芝居の戯曲やプロレスで有名な変態坊主の上杉清文さん、イラストレーターの南伸坊さん、京都でマリファナ裁判をしている現代の仙人、芥川耿さん、神道ヨジレ派で現在失踪中の八木真一郎君、「迷宮」の武田さん、武邑さんなどなど、つき合っている人たちは限りなくいるのです。

まあ、どの人をとってみても一筋縄ではいかない変態ばかりで、Jamが日本一面白いと言われるのも当然のことでしょう、なはははは。
 
Jamに関する噂
●編集後記は誰が書いてもいいらしい。この前、編集長が喫茶店でとなりの女の子に頼んでいるのを見た。
●Xランドの天皇というのは若い女で、月に一回全員が渋谷の貸ビルの地下に集まって秘密の儀式をするらしい。
●Jamのバックナンバーは総て売り切れで一冊も返本がない。何か秘密の念力をかけているところを見た奴がいる。
●高円寺付近ではJamが異常な人気で、発売日に自動販売機の前に並ばないと買えない。
●山口百恵とホリプロがゴミあさり記事に対する報復を密かに画策しているらしい。
●今年いっぱいで休刊になるという話を編集長から聞いた。
●2千万の金をつんで大原麗子を巻頭カラーで脱がせる交渉に成功したらしい。休刊号でハデにやると豪語している。
●次号はいよいよ大場久美子のゴミあさりをやる。
 
第八号制作過程
あああ、企画が全然出ねえじゃねえか、ばーろー!少しはマジメに考えろちゅーとるのが判らんかこのっ!ばば、ばか、そんな話が雑誌に載せられるわけねーだろーが・あ、汚ねえなあ、よせ!やめろ!脱ぐなっ、こんなところで脱ぐなってば・そうそうおちついて、さてそれでは何か面白い話はないですか?どうでしょうか・うん、うん、それいってみよーか、キミ書く?え、書きたくない?なにっ、そうゆー話はお前が書かなきゃ他に書く奴いねーだろーが、ばーろー‼︎ あ、わかった、わかったから脱がないで、お願い困ったもんだねぇ、こう原稿が遅いとねぇ、印刷屋に渡すのあさってだよ、あさって・うわぁ、もう時間がない時間が、さっきの図版どこいった?それじゃないよ、どこいった、ないない、それじゃないちゅーとるのに、もうっ・うわっ、このレイアウト間違っとるやないか、くそくそくそ、うわあ、時間がない時間がない時間がない時間がないそう、そのポーズ、そのまま動かないでね、はい、きれいだよ、バシャッ、うん、いいなぁ実に美しい!はい今度はお尻の穴に指入れてみよーか、え、恥ずかしい?そんなことないでしょ、きれーだよ、うん、いい写真が撮れるからね、はいいってみよう、そうそうもっとグィッと、はい、そこでもだえる!バシャッ・もしもし二〇字の八六行で書いてね、あしたの朝取りに行くからね、書いてなかったらひどいよホントに・うわぁ、ねむいねむいねむいねむいその辺にある雑誌の写真ぶち込んどけ、そうそう・うわぁ、きたねぇ字だなぁ、読めねーじゃねーか・よ、よせ、そんなとこさわるな、気持ちわるいなぁ、あ、また安田がするどい目で虚空をにらんでる!もしもし、え、まだ書いてない?あした入稿だよ、あんた判ってるの?少しは責任感じなさいよあんた・あ、あ、ねむいねむいねむい、ヒロポン打ってヒロポン!はい、どうしたの?原稿なくした?あっそう、え、なに原稿なくした?この野郎ぶんなぐるよ、しまいにははい、どうも毎度遅くなりまして、どうもあいすみません、よろしくお願いします、はいはいどうも・ふう、ねむいねむい、やっと終わったばーろー、このぉ、こんな汚ねえ色出しやがって、どんな機械使ってんのお宅?あ、ここんとこ指定と違うだろ、これ、直しとかないとぶんなぐるよ本当に・あ、ここも違うじゃねーか、しっかりやってくれよねワシラ道楽でJam作ってるんだから、仕事でやってんなら多少間違えたっていいけどね、なんたって道楽なんだから……
 
今後の秘密計画
これだけ中身の濃い雑誌が八号も続けば当然ネタがなくなる──と思ったら大間違い。いよいよ日本初のストーンド・マガジンに向かって大刷新をしていくつもりだ。

企画としてはデボラ・ハリーをカバー・ガールにする。竹下景子の陰毛丸出し写真をやばい部分にすぐはがれるシールをはって出す。中央線沿線の一般書店売りを開始する。ロサンゼルスの書店にも置く。ロスの『WET』と特約をむすぶ──などが上がっている。
 
読者いろいろ
エルシー企画のジャム編集部で仕事をしていると、よく読者の人から電話がかかって来ます。

「ああ、あのあの、ぼぼく、あの見えてるやつが欲しいんですけど、いえあの、編集の人ですか、ええとあの……ガチャ」

「もしもし………………毛の見えるやつないですか………………修正してないやつ見たいんですけど………………ガチャ」

「あうあう、あう、あのうモデルの人とおまんこしたいんですけど……紹介してくれませんか……………おまんこおまんこガチャ」

「あ〜〜、あぁ、あああ〜〜、ガチャ」

だいたいこういうのがほとんどです。

あと通信販売でポルノを申し込んでくる人がたくさんいますので発送係の社員は大変です。中には一冊千円の本をいっぺんに一〇冊も申し込んでくる人がいます。

Jamの記事に興味を持っている人はたいてい編集部まで遊びに来てくれます。そういう時は忙しいのも忘れて話し込んでしまいますが、おしゃべりの中からアイデアが生まれることも多いのです。

『Jam』のファンに中央線沿線の人が多いのはなぜでしょうか。
今のところお手紙や電話の様子から見て、『Jam』という雑誌を誤解している人が多いようです。『Jam』は決して単にムチャクチャな雑誌ではないのです。
 
あなたにもできる簡単な『Jam』の作り方
①まず果物屋でイチゴを買ってきて砂糖を加え、すりつぶて煮つめます。
②新聞の記事をバラバラに切り離して放り投げ、適当に拾い集めて文章をつなぎ合わせます。
③今までに読んだ本の中で気に入っている文章を抜き書きします。
④写真集、雑誌などから気に入った写真を切り取ります。
⑤④の写真にできるだけ写真の内容と違う文章を考えて付けます。
⑥ポルノ雑誌の中からできるだけイヤラシい写真を選んで切り取ります。
⑦友達に話してあげたいような話や、面白い本の紹介、実際には存在しないレコードや映画の感想などを書いて情報ページを作ります。
⑧ゴミの回収日に人の家のゴミをあさって写真をとります。
⑨⑧で集めたゴミの中から出て来た手紙と、自分で作り上げた人様の手紙とを合わせて読者欄を作ります。
⑩自分が天皇になって読者へのメッセージを書きます。
⑪きのう見た夢を文章に書きなおします。
⑫もう一人の自分をつくって対談します。
⑬自分の性生活を告白します。
⑭『ガロ』という漫画雑誌の中から気に入ったものを選びます。
⑮編集後記と次回予告を書きます。
⑯それらを全部まとめ、一冊にとじ、表紙と裏表紙にクレヨンで絵を描きます。
⑰これらを大きめのナベに入れ、①でできたイチゴジャムを冷蔵庫から出して上からたっぷりかけます。
⑱紙にジャムが十分しみ込んだら火を付け、煮つめます。
⑲これでおいしいイチゴJamのできあがり。

※注意──あまり煮すぎますと、せっかく書いた字が読めなくなるので気をつけましょう。
 
X−LAND 天皇より宝島読者へ求愛のメッセージ
Jam創刊からもう7ヶ月が過ぎて、七〇年代も終わろうとしている。いよいよ世の中は放心状態の度合を強くしているみたい。手垢のついた愛という言葉、死んでしまったと思ったサイケデリックという言葉が今こそ甦る時じゃないかしら。

私はXランドの天皇。「わからない」ということと、「抱かれること」が大好きな、観念の子よ。今、大切なのは目醒めることだと思うの。起きてて見る夢のほうがずっと面白いと思わない?

もしJamを読んで私たちの宇宙にバイブレートできたら、お手紙をください。
 
〒170 東京都豊島区西池袋〇の〇の〇
日東ビル3F ジャム出版・経由
Xランド宮内庁
 
JICC出版局『宝島』1979年12月号所載
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★ジャムってロックの雑誌があるけどこれはまた別のジャム。頁をあけると女の陰部にジャムべっとりというカラー・グラビアがあったりする自動販売機雑誌なのだ。山口百恵家のゴミをあさって、使用済ナプキンとか、妹の二八点の歴史のテストを発掘したりして、一躍、勇名をはせた。

ところが、その正体は……というか、表紙とグラビアにはさまれた中味は、大パンク大会。表紙にオナニー&メディテーションなんてあるのもおかしい。編集後記を他の雑誌の編集者が書いたり、日本のパンク・バンドの写真がメチャクチャ入れ違っていたり(わざとやった嫌がらせか?)、とにかく筋金入りのパンク。音楽傾向もどパンクで、ディヴォとか、ペル・ユビュをサイケデリックの構造を盗用した姑息な連中とこきおろす文章ものっていて、ススんでる。

「JAM」ジャム出版 三〇〇円
(東京都豊島区西池袋〇・〇・〇 日東ビル3FB)
※1980年頃『宝島』に載った『Jam』の紹介文より

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解説──パンクマガジン『Jam』の神話

七九年の象徴的な出来事として、『Jam(ジャム)』という同年三月エルシー企画から出版された「伝説の自販機本」の創刊を取りあげたいと思います。

「自販機本」とは、アリス出版、エルシー企画、アップル社、土曜漫画等の出版社が出版していた成人向けの娯楽読み物雑誌、いわゆるエロ本のことです。「本」と書きましたが実態は中綴じの雑誌で、おおかたは六十四ページ前後、カラーグラビアには大股開きのきわどいヌードを載せ、女性の性体験告白記事あり、性の事件簿あり、官能小説ありと、バラエティに富んだ内容でした。(中略)

当時、エロメディアは、世の中に「不足」していました。ビニール本やアダルトビデオの登場するまで、エロ本は、一定分量エロ要素が載ってるというだけで、内容は問われることなく、大半が「つくれば売れた」のです。

「エロさえ載せておけば、何をやってもいい」ということでこの世界に入ってきた若い編集者たちは、インチキな「性告白記事」だけ載せるのではなく、思い切った画像表現(女性器の接写、ストーリー性のあるポルノ、レイアウトや製版上の実験など)、水準の高い活字表現(パロディ、ブラックジョーク、劇画・音楽などサブカルチャーの評論など)を載せはじめました。

そんな数ある自販機雑誌のなか、アバンギャルドなおもしろさ、きわどさで群を抜いていたのが『Jam』でした。創刊号で山口百恵の家から出たゴミを漁ってきて誌面掲載して、大きな非難と反響を巻き起こしたことで「伝説の雑誌」とされていますが、実はこの雑誌の白眉は活字の部分でした。

プロレス、神秘主義、フリーミュージックなど、異色の記事を載せていました。また、(これは当時も禁じられたことだったのですが)著作権くそくらえとばかりに、『Jam』は海外の雑誌などからおもしろそうな記事や写真をバンバン盗んできてページを構成していて、全く「やりたい放題」です。そんなことから当時、自動販売機の雑誌の世界でひそかにビッグバンが起きていたのではないかということを以前から常々考えていました。

もっともラディカルなものは、サブカルチャーの底辺から生まれるというのが、私の基本的な考えです。大手資本はブームを待ち、そのカルチャーを水増しして取り入れ、牙を抜いて、大量販売します。ただし『Jam』のおもしろさはおそらくメジャーには消費されないでしょうし、最後まで理解されないでしょう。なぜなら表現の根底に、跳ねあがりものたちの消そうとしても消せない「毒」と「抵抗精神」があるからです。

私は、過剰な除菌やデオドラントの健康志向は、生きものとして、衰微のあらわれではないかと考えています。少々の毒、もしくは異物をも受け入れられることが、人間および社会の健康の証ではないかという立場に立つ人間です。
社会の常識や良識は往々にして生きる力や自由を押さえつけようとし、独創的に生きようとする人たちをLINEから排除したり冷笑を浴びせたりするような傾向がありますが、これに対抗するにはある程度の「毒」と言う思想が不可欠ではないでしょうか。(赤田祐一)

※この文章はエディトリアル・デパートメント『スペクテイター』Vol.39より引用されたものです。
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『SPA!』1996年12月11日号所収

“[鬼畜]たちの倫理観”と題した鬼畜大特集。
ロリータ小説家の斉田石也、V&Rプランニング代表の安達かおる、『BUBKA』編集長・寺島知裕、KUKIの鬼畜レーベル餓鬼の山本雅弘、特殊漫画家の根本敬らにコメントを求め、ショップ「バロック」周辺のお客さんに質問し、『FBI心理分析官』著者のロバート・K・レスラー、『すばらしき痴呆老人の世界』著者の直崎人士、横丁の性科学者こと松沢呉一らが鬼畜ブームに一言呈し、シメは青山正明村崎百郎の対談「鬼畜カルチャーの仕掛け人が語る欲望の行方」。

当時、両者とも東京大学駒場キャンパスで講義するほど注目を浴びており(岡田斗司夫氏のゼミ「国際おたく大学/おたく文化論」)、それの記念なのか東大前で撮影した写真が掲載されている。(この文章は以下のウェブサイトより転載された)
山止たつひこ
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