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皆さん、こんにちは。 いつもご訪問ありがとうございます。 久しぶりの更新となってしまいました。 今回は久しぶりに不妊症関連について。 毎年、この時期になると日本産科婦人科学会から、全国の登録施設の体外受精・胚移植などの臨床実施成績が報告されます。 約2年遅れのデータになりますが、日本における生殖医療の総まとめ的なデータとしては最新のものになります。今日本でどの位の数の体外受精が行われ、どの位の成績なのかを紹介します。 ◇ ◇ ◇ 全国の施設数 全国の641登録施設の内、626施設から回答が得られた2005年1月1日〜12月31日までのデータを集計したものです。 妊娠成立は胎嚢が確認できたものとし、化学的流産(chemical abortion)は含まれていません。 出生数など 2005年に上記治療を行い出生した総数は19112人でした。 出生数は年々上昇しています。 2005年は106万人くらい出生しているので出生数の1.7%がARTにより出生したことになります。 また、統計を取り始めてからの累積出生数は約15万人となりました。 ARTの成績 データは三つに分けられています。 1.新鮮胚(卵)を使用した治療成績(顕微授精を除く) 2.顕微授精法(新鮮胚)を用いた治療成績 3.凍結融解胚(受精卵)を用いた治療成績(顕微授精も含む) 新鮮胚を使用した一般的な体外受精(約42000治療周期)よりも顕微授精(約47000治療周期)の方が治療周期総数が多いのはここ最近の特徴です。 1.新鮮胚(卵)を使用した治療成績(顕微授精を除く) 移植あたりの妊娠率30.3%、妊娠あたりの流産率21.9%、移植あたりの生産率19.2% 2.顕微授精法(新鮮胚)を用いた治療成績 移植あたりの妊娠率25.9%、妊娠あたりの流産率23.8%、移植あたりの生産率15.9% 3.凍結融解胚(受精卵)を用いた治療成績(顕微授精も含む) 移植あたりの妊娠率32.7%、妊娠あたりの流産率24.1%、移植あたりの生産率19.9% このあたりの成績は毎年同じようなデータで著名な変化はありません。 注意点として、一般的な体外受精の成績は、妊娠率や生産率の高さ、流産率の低さのすべてにおいて、顕微授精よりも良いと言うように単純に比較できません。 顕微授精を行う場合は顕微授精を行う理由がちゃんとあるからです。 数年後に凍結から目覚めさせて子宮内に戻すという凍結融解胚を用いた治療も、実は新鮮胚と同じような成績であるということは注目すべきことですね。 凍結や融解に関する技術の進歩の表れだと思います。 まとめ ・年間2万人弱の新生児が高度生殖医療により出生している。 ・出生数は年間出生数の1.7%ほどになってきた。 ・妊娠率などの成績はここ数年横ばいである。(移植あたり3割くらいの妊娠率) ・凍結融解胚による治療は新鮮胚のそれに匹敵する成績である。 ◇ ◇ ◇ 今回はこの辺で。
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体外受精
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こんにちは。 ご訪問ありがとうございます。 さて、不妊症の内容もそろそろ終わりが近づいてきました。今回はちょっと難しい用語ですが、孵化補助法についてお話しいたします。 ■透明帯とは? 今回の話題の基礎知識として透明帯のことを知っておく必要があります。 卵子や胚は透明帯と呼ばれる膜状のもので球状に覆われています。精子が透明帯を貫通して受精が成立し、胚の分割が始まりますが、初期胚は分割した後それぞれの結合が弱く、バラバラになりやすいものです。しかし、透明帯が存在するために一つ一つの細胞はバラバラにならずにまとまっていられます。透明帯は胚の保護をしているわけですね。 また受精直後にこの透明帯の性質がかわり硬くなります。そうすることで多数の精子が一度に受精する多精子受精を防止しています。 ■孵化補助法とは? 胚盤胞に達し、卵管から子宮内に移行した胚はこの透明帯からでてきて子宮内膜に着床します。透明帯から胚がでてくることを孵化といいます。にわとりの卵からひよこがでてくるように・・・。IVF-ETやICSIなどの体外で培養した場合、胚の周囲に存在する透明帯という膜が厚くなったり、硬くなったりして胚がそこからでられないことが(孵化できないことが)着床率低下の原因のひとつではないかといわれています。 人工的にこの透明帯を切開したり、穴をあけたり、薄くしたりして孵化を補助することで妊娠率の向上を目指す方法があります。この方法を孵化補助法(assisted hatching;AHA)といいます。 ■どんな場合におこなわれるのか? 初回のIVF-ETのときにAHAを行っても妊娠率に差はでないといわれていますが、反復着床不成功の患者さんに使用することで妊娠率の向上が期待できるともいわれています。良好胚を移植したにもかかわらず着床に至らなかった場合、凍結融解胚移植を行う場合、大量のhMG製剤を使用してIVF-ETを行う場合などに行われています。また、高齢者(特に40歳を越える場合など)は透明帯が硬化しているともいわれており、年齢的な要素からAHAが行われることもあるようです。 ■その方法は? 沢山の方法が存在しており、技術的にどの方法がもっとも効果があるのかまだわかっていませんので、施設によりその方法は違ってきます。具体的には、透明帯を切開し穴をあける方法、酸を使用して透明帯を薄くする方法、レーザー光線を使って穴をあける方法などがあります。 AHAは一般的には8細胞胚くらいの時期に行われます。細胞同士の結合も強くなり透明帯がなくなっても胚としての形態を維持できるためですね。 ■デメリットは? AHAを行うことで一卵性双胎が増加するという報告があります。 AHAは新しい技術で、まだその効果や副作用がはっきりと証明されていません。 今後の検討が必要な分野でもあり、十分に説明を受け、主治医とじっくりと相談してから行われるべきですね。 今回はこの辺で。
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みなさん、こんにちは。 ご訪問ありがとうございます(^_^)。 凍結胚に関する話題の最終回です。 ■凍結融解胚移植の方法 胚は凍結するときと融解するときに、ダメージを受ける可能性があります。そのためすべての凍結胚が良好な状態で移植を行えるかというとそうではありません。融解しても元の状態にもどらない胚もでてきます。 融解後にしばらく培養を行い、胚の状態を確認して移植を行います。どの段階の胚を凍結したかで融解後の培養期間も違いがでてきます。初期胚の場合は融解後、時間をおかずに初期胚の段階で移植することもありますし、胚盤胞まで発生することを確認して移植することもあります。 着床、妊娠継続のためには、子宮の内膜の状態やホルモンの状態が重要なので、いつ移植してもよいというわけではありません。移植する胚の発生状態に子宮の環境を同調させて移植のプランを立てます。 移植する際に薬剤を使用しない自然排卵周期にあわせて移植する方法と、ホルモン剤で人工的に環境を整えて移植する方法があります。後者の方が移植時期をコントロールしやすい利点がありますね。 自然周期で胚移植を行うときは、経膣超音波で卵胞の測定を行い、排卵が近いと判断したらhCGの投与で排卵推定時刻を予想し、同調させて胚移植を行います。 ホルモン剤を使用した周期での胚移植は、エストロゲンを月経初期から投与し同時にスプレキュア等で内因性のLH分泌を抑制し、子宮内膜の状態を確認し移植が行われます。この場合は当然luteal supportが必要となります。 ■凍結による影響 胚凍結による先天性異常の割合は新鮮胚の場合と変わらないと報告されています。 凍結に使用される耐凍剤や凍結保存により胚の周囲に存在する透明体が硬くなるといわれています。(透明体の硬化)そのため、妊娠率向上のため、assisted hatching(AHA)が併用されることもあります。(AHAに関しては次回、改めてお話しします)。 ■卵の段階で凍結できるのか? 現在の技術では受精していない卵子をそのまま保存しても、胚の保存ほどの妊娠率は得られていません。未受精の卵子は受精した胚よりも安定しておらず、染色体異常が増えるといわれています。まだ実用段階ではないようです。 今回はこの辺で。次回はAHAについてお話しします。
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みなさん、こんにちは。 ご訪問ありがとうございます(^_^)。 前回からの続きで凍結胚に関する内容です。 ■どんなときに胚を凍結保存するのか? 移植後に胚が余った場合がまずあげられます(余剰胚の保存)。いくら沢山の受精卵ができても、一度に移植できる数は多くて3個以下ですので、余った胚は原則、凍結保存することができます。 何らかの理由で新鮮胚の移植が中止となった場合にも保存されます。たとえば採卵数が多くなり、移植を行うことでOHSSの発生が予想されるときや子宮内膜の厚さが十分ではなく、移植時期が適切だと判断されなかった場合です。そのようなときは全胚凍結保存が行われます。 また前核期胚、初期胚、胚盤胞のどの段階でも凍結保存が可能です。良好な胚を凍結保存しておくことでOHSSによる母体合併症の抑制や卵巣刺激や採卵による身体的、経済的負担を軽減させることができます。 ■凍結保存期間は? 基本的には半永久的に保存することができます。理論的には数百年でも可能といいます。しかし、いつまで保存するかは最初に、きちっとした文書を作成して取り決めをしておかないといろいろな問題が出てきます。保存途中で夫婦のどちらかが死亡した場合、残った胚をどのようにするのかなどは非常にデリケートな問題ですね。また、長期保存をすることで保存する胚の数がどんどん増えて、施設内で保存するスペースもなくなってきます。欧米では一般的に5年、延長して10年ほどといわれています。 ■凍結保存の方法 胚凍結の際にもっとも問題となるのは氷の結晶ができることです。細胞をそのまま冷凍すると氷の結晶が細胞内部に発生し細胞が破壊されてしまいます。いかに結晶を作らないように凍結するかが重要になります。 現在凍結の方法としては2種類あります。従来から行われている緩慢凍結法(slow cooling法)と'''ガラス化凍結法(vitrification:ヴィトリフィケーション)です。 緩慢法はゆっくりと冷凍して細胞のダメージを少なくしようという方法です。高価なコンピューター制御のフリーザーを使用し、長時間かけて凍結するという手間と費用がかかりますが、機械の操作などが決まっていますので保存に差ができずに安定した成績を得ることが可能となります。しかし、氷の結晶を完全には抑制できない可能性があります。 一方ガラス化法は高価なフリーザーを必要とせず、簡短時間で胚を凍結することができますが、ガラス化を行う際に素早くきちっとした処理が必要となり、より厳密性が要求されます。しかし適切にガラス化が行えれば、氷の結晶をほぼ完全に抑制でき保存性が高くなるといわれています。 今回はこの辺で。
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みなさん、こんにちは。 ご訪問ありがとうございます(^_^)。 今回は、現在ARTを行っているほとんどの施設で行われている重要な技術である、胚の凍結に関わるお話です。 ■胚を凍結保存するということ IVF-ETの際に複数個の受精卵が発生したとき、良好胚をえらんで移植しても胚が余るときがあります。そのような場合に胚を凍結して分裂を停止させ長期保存する技術があります。これを胚の凍結保存といい、現代のARTには欠かせない技術です。凍結していた胚は解凍して移植を行うことができます(凍結融解胚移植)。 保存技術が進歩して液体窒素(マイナス196度)の中で、理論的にほぼ半永久的に保存を行うことができるようになりました。一人目のお子さんが生まれてしばらくして、一人目のお子さんが妊娠する前に保存していた胚を移植し妊娠することも可能となりますね。その場合、兄弟で年齢は違いますが、受精したのは同じ日という不思議なことがおきますね(^_^)。 20年くらい前から存在している技術なので、ヒトではまだそんなに長期保存の例は少ないですが、マウスの胚を25年後に移植して正常な妊娠、出産も確認されています。 胚を凍結するといっても簡単なことではありません、これまでに沢山の研究が行われて現在の方法が確立されてきました。生きた細胞である胚を凍結保存して、分割を停止させ(胚の時間を止めることになりますね)、一定の期間保存し、今度は解凍して分割を再開させ、着床、妊娠継続に持っていくことは非常に大変なことなんです。 アイスコーヒーなどに入れる氷を作ることを考えてみてください。製氷用のプラスチックの容器に水をいれ、冷凍庫にいれます。数時間すると氷ができますが、その氷をみると容器から氷の表面が盛り上がって体積が増えていたり、割れて亀裂が入っていたりしますよね。胚を含んだ培養液をそのまま凍結させても、胚の中の水分が結晶化して胚が内部から破壊されたり、浸透圧の関係で胚が膨張したり、縮小したり、培養液に亀裂が入りたまたまその亀裂に胚が存在すると胚が外部から破壊されたりしてしまいます。 そのような胚の凍結保存も、保存液を含めた技術的な進歩により、今では一般的に行われるようになりました。日本で年間約4万件の新鮮胚を用いたIVF-ETが行われていますが、凍結融解胚移植は3万件を越えており、新鮮胚に追いつこうかという勢いです。凍結融解胚移植による出生児も年間5000人を越えています(新鮮胚では年間6000人以上です)。 ■凍結融解胚移植の成績 凍結融解胚を用いたIVF-ETの成績は以前のブログでも書きましたが、妊娠率の高さや流産率の低さは新鮮胚を用いたIVF-ETを若干越える好成績です。しかし、凍結融解胚移植が圧倒的に有利かというとそこまではありません。ただ、裏を返せばそれだけ凍結融解胚移植の技術が進歩したということでもありますね。新鮮な胚を移植する場合と、長いと数年経った後に移植した場合がほぼ同じような結果なんですからね。 今回はこの辺で。
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