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こんにちは。 「不育症」のつづきです。 ■内分泌学的異常 ホルモンの分泌異常が不育症の原因と考えられることもあります。ある不育症専門外来のデータでは不育症患者の40%くらいに高プロラクチン血症(潜在性高プロラクチン血症も含む)と黄体機能不全を認めたとありました。(同じデータの中に原因不明が40%くらいありました)黄体機能不全は不妊症の原因とも知られていますが、妊娠成立早期の流産を引き起こすため不育症の原因のひとつと言えます。黄体機能不全の原因は排卵前の卵胞成熟過程の異常と黄体機能の維持する仕組みの異常とに分けられますが、重要なのは前者だといわれています。そのため黄体機能不全に対して黄体期のホルモン補充のみならず、卵胞刺激という意味でクロミッドなどの排卵誘発剤を使用する場合もありましたね。 高プロラクチン血症(高プロ)は排卵障害を引き起こし、不妊症の原因となりますが、排卵障害を伴わない場合でも(潜在性高プロ)、高プロを改善させることで妊娠率も改善するとする報告もあります。プロラクチンは妊娠維持に関していろいろな関与をしている可能性がありますね。その他甲状腺機能異常も原因として考えられていますが、頻度はあまり高くないようです。 ■免疫学的異常 以前のブログに書きましたが、自分の細胞の持っている抗原は自己と認識され何も反応が起きないはずですが、自己免疫性疾患といって自己の細胞などに対する抗体(自己抗体)を作り出してしまい様々な症状を引き起こす疾患があります。つまり自分自身の体を自分自身が攻撃することになります。血液検査である種の自己抗体が非常に高い数値を示すときがありますが、自己抗体の中には病原性がないものもありすべてが悪影響があるというわけではありません。この疾患のはっきりとした原因はわかっていないんです。 不育症において、自己免疫性疾患の中でも抗リン脂質抗体症候群(APS)という疾患が重要になります。リン脂質という細胞の表面の膜を作っている成分がありますが、このリン脂質に対する自己抗体を作りだし流産や血栓症(血液が固まりやすくなり血管を詰まらせてしまう)を引き起こす疾患です。 ※この自己抗体は正確にはリン脂質自体に対する抗体ではなく、リン脂質に結合するある種のタンパク質に対する抗体ということがわかってきました。 APSは不育症の患者さんの10%くらいに検出されるというデータもあります。APSが流産を引き起こす機序としては、絨毛組織(胎盤の一部ですね)の中の細かな血管のなかで小さな血栓ができて血管を詰まらせてしまい、血流障害を起こし流産にいたるというものがあります。 血液検査が重要でループスアンチコアグラントと抗カルジオリピン抗体というものを測定して診断の補助とします。全身性エリテマトーデス(SLE)という他の自己免疫性疾患を合併していることも多く、自己抗体の幅広い検索も必要となります。 治療としてはステロイド治療、低アスピリン療法、ヘパリン療法などが行われます。(低アスピリン療法はバファリン(81mg)を妊娠がわかったときから35週くらいまで毎日内服します) ■免疫療法とは? 母体にとっては非自己である胎児(父親の抗原物質が含まれていますからね)を10ヶ月間宿しておくためには何らかの免疫学的抑制機構(免疫寛容状態)が働いているはずですね。不育症の患者さんはこの免疫抑制がうまく働いていなくて胎児を拒絶し、流産にいたるのではないかとも言われています。 免疫療法とは原因不明の不育症の患者さんに夫のリンパ球(リンパ球の表面には夫の証拠である沢山の抗原が存在します)を採取して、それを数回皮下注射して夫の抗原性に慣れを作り出す(減感作療法)というものです。そうすることで胎児が着床したときに拒絶反応がおきにくくなるというわけです。夫リンパ球による免疫療法は効果があるとする報告と効果がないとする報告が入り乱れていて、効くのか効かないのか医学的な決着がついていません。そのため病院により治療をしているところと、していないところがあります。ただ、原因不明の不育症の患者さんは治療法がないので、患者さんの希望により行っている施設もあります。 ただし、免疫療法はAPSなどの自己免疫疾患の患者さんは行うべきではないとされています。 ◇ ◇ ◇ 不育症はまだまだ原因不明のところも多くこれからの研究に期待したいところでもあります。また不妊症の一部として扱われ専門外来も少ないのも現実です。一般的な不妊症の方とはまた違ったアプローチが必要となることもあるので、不育症の方は一歩進んだ検査も必要かもしれませんね。 今回はこの辺で。
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不育症
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こんにちは。 ご訪問ありがとうございます。 流産のところでちょこっとだけ「不育症」のことを書いていますが、今回は詳しく書いてみたいと思います。 「流産」と関連していますので過去の私のブログも読んでみてくださいね。 ↓ ↓ http://blogs.yahoo.co.jp/dr_obgy/7803765.html http://blogs.yahoo.co.jp/dr_obgy/7876723.html http://blogs.yahoo.co.jp/dr_obgy/7984373.html ■不育症とは? 不育症とは妊娠は成立するものの継続できずに生児を得ることがなかなかできないことと表現されます。3回連続した流産を習慣流産と呼びますが、流産が2回連続すると一般的には何らかの検査を希望されることが多いですね。 流産の頻度は元々高いので一回目は染色体異常などの原因が多いと思われますが、流産が2回、3回と反復すると別の原因である可能性がでてきます。不育症は結果的に不妊症の中に含まれますが、妊娠は成立するので、一般的な不妊症とは違ったアプローチが必要となってきます。 ■不育症の原因として考えられるもの 原因としては1.子宮の形態異常、2.夫婦の染色体異常、3.内分泌的異常、4.免疫学的異常などがあげられます。検査でこれらの異常が認められればそれぞれに応じた治療が行われます。ただ、原因不明の場合も多く難しいところでもあります。では、具体的に見てゆきましょう。 ■子宮の形態異常 おもに先天的な子宮の発育不全や奇形が関係してきます。不妊症検査で子宮卵管造影を行いますが、その10%くらいに何らかの子宮奇形が見つかるといわれています。決して珍しいことではありません。子宮はもともと左右2つの部分(Muller管)が胎生8週〜15週ころに真ん中で癒合してできます。この時何らかの理由でこの左右の癒合がうまくいかないと子宮の奇形となるわけです。 子宮の内腔に突出する部分があったり、子宮の形が半分だったり、子宮体部が二股に分かれていたり、子宮自体が2つ存在したり・・・沢山の種類があります。この中でも弓状子宮がもっとも多く、次に中隔子宮、双角子宮、重複子宮と続きます(どんなものかは図を見ていただくのが早いのでネット上で「子宮奇形」と検索して見てくださいね)。中隔子宮は子宮内のど真ん中がまっぷたつに分かれている(中隔がある)タイプで流産率は非常に高率で80%くらいとのデータもあります。弓状子宮は中隔子宮の非常に軽症のタイプと考えられますが、流産率は高いです。逆に重複子宮は形は中隔子宮と似ていますが、生児を得る率は80%に達し手術は不要ともいわれています。 子宮奇形が流産率を上げている理由は、形の異常だけではなく、子宮奇形があることで子宮内の血流不全が存在し着床がうまくいってもその後の妊娠継続ができないという説もあります。ただ、血流障害だけでは説明仕切れない部分もあり、はっきりとした理由はわかっていないようです。 子宮卵管造影や超音波検査で子宮の形態異常が疑われた場合はMRI検査なども行われます。 子宮奇形が原因と考えられる場合は子宮の形成手術が第一となり、治療後の効果は期待がもてるようです。 染色体の構造異常があると、表現形(見た目や行動など)は全く正常な方でも精子や卵子などの配偶子を形成する際に異常な配偶子を作り出して、受精しても結果的に流産を繰り返すことになります。 不育症の夫婦に見られる染色体異常で頻度の高いものは相互転座やロバートソン転座などの転座型が多いようです。自然流産を反復する夫婦の染色体検査をすると約10%の頻度で夫婦のいずれかに何らかの異常が見いだされるといわれています。 また染色体異常検査を行う時は必ず夫婦両方行います。何も女性だけに原因があるわけではありませんので。検出される異常もほぼ夫婦半々の割合です。ただ、染色体に異常が発見されても決定的な治療法がないだけに安易に行われるべきものではないという考え方もあります。また染色体の異常が発見されてもどちらの結果なのかを告げないことも一般的かと思います。いずれにせよ染色体検査を受ける時は事前に十分な説明と検討が必要です。 ちょっと、中断します。
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