産婦人科の基礎知識

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分娩時母体損傷

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「羊水塞栓症」その2

皆さん、こんにちは♪
今日もご訪問ありがとうございます。
前回の続きです。


   ◇   ◇   ◇



■診断は?
羊水塞栓症で確定診断となるのは、そのほとんどが死亡された方の剖検例です。
剖検例では肺の細かな血管の中に胎児成分が証明されます。
生存例では迅速な診断法がなかったため、症状から羊水塞栓症だろうと疑われて治療がなされても確定することが困難でした。
臨床的には急速に症状が進行するため、

・急激な血圧低下
・急激な呼吸困難やチアノーゼ(皮膚の色が黒くなること)
・原因不明の産科DICや大量出血
  ※DIC;播種性血管内凝固症候群(簡単に言うと血液が固まらなくなり血が止まらなくなる状態)

などをみたら「羊水塞栓症ではないか!」と疑うことが重要となります。

最近では母体血液中の胎児尿成分や胎児便成分を科学的に検出することが出来るようになったため、羊水が流入したかどうかを確認しやすくなったようです。



■治療は?
診断の補助となる検査法が開発されましたが、その原因を除去することがなかなか難しいため治療は困難となります。
基本的には呼吸管理循環管理DICの治療を同時に行う必要があります。
呼吸困難で酸素が足りなくなるので、ます迅速に酸素投与が行われますが、重症化していることが多く気管内挿管(気管にチューブを入れること)し人工換気が行われることも多いです。
ショック状態に対しては輸液療法や循環改善薬の投与などが行われます。

発症すると超緊急状態となるので高次医療への搬送は必須ですが、手を尽くしても救命できないことも多いのが事実です。


   ◇   ◇   ◇


今回はこの辺で。

「羊水塞栓症」その1

皆さん、こんにちは♪
今日もご訪問ありがとうございます。

今回は羊水が母体の血管に入り込んでしまう「羊水塞栓症」についてのお話しです。
珍しいですが非常に怖い病態です・・・。


   ◇   ◇   ◇


■羊水塞栓症とは?
耳慣れない言葉ですね。
「塞栓症」とは何らかの流れがあるところが詰まり、その下流に悪い影響を与えてしまう病態のことをいいます。
この場合の流れとは血管内の血流であることがほとんどですね。
血液の固まりが血管内に詰まることを特に血栓塞栓症と呼んでいますが、これも塞栓症の一つですね。

羊水塞栓症とは羊水やその中に存在する胎児成分が母体の血管内に入り込み塞栓症を引き起こし、急性の呼吸循環障害をきたします。
血栓の原因が羊水というわけです。
胎児成分とは胎児のうぶ毛、髪の毛、皮膚の細胞、胎便、胎脂(胎児の皮膚に付着しているクリームのような脂)などです。

発生頻度は2万〜3万分娩に1例くらいと非常に珍しいですが、発症すると死亡率は60%〜80%と非常に高く、怖い病態なんです。
子宮の静脈などから進入した羊水成分が母体の肺動脈系などの血管に塞栓をつくり、血液の流れを遮断してしまうことが原因だと言われてきました。
しかし、物理的な遮断だけでは説明がつかない状態になることも多く、羊水成分による化学的な反応(アレルギー反応のような)が起こっているのではないかとも言われています。



■症状は?
典型的な経過は、特に何の合併症もない妊婦が分娩中もしくは分娩直後に、突然の呼吸困難と胸痛を訴えて、あっという間に全身がどす黒くなり、ショックに陥り、意識を回復することなく死亡する、というものです・・・。
ただ、初発症状の呼吸困難や胸痛が必ずあるわけではなく、急激な血圧低下などから発症することもあり診断が難しいとも言われています。
典型例では発症から1時間以内で死亡する方は半数を超えるとも・・・。


   ◇   ◇   ◇


次回へ続きます。

「子宮破裂」その2

皆さん、こんにちは♪
今日もご訪問ありがとうございます。
前回に引き続き「子宮破裂」について。


   ◇   ◇   ◇


■子宮破裂の症状
破裂の程度により症状は様々です。
外出血と腹腔内出血、顔面蒼白、下腹部の持続的な疼痛、胎児心拍異常、血圧低下、チアノーゼなどの症状が出現します。
子宮破裂前の切迫子宮破裂兆候としては過強陣痛発作、分娩進行の停止、収縮輪の上昇、子宮円靭帯の過緊張と過伸展などがありますが、これらの兆候がなく突然発症することもまれではありません。



■子宮破裂の診断と治療
完全破裂の場合は激烈な症状から診断は容易なことが多いです。

不完全子宮破裂の場合は激烈な症状がないこともあります。
分娩後出血で弛緩出血や膣壁・頚管裂傷などが否定されて出血が続くときは不完全な破裂を考える必要があります。

子宮破裂の診断もしくは疑いが強い場合は、高次医療が可能な大きな病院へ搬送されます。
治療は出血に対する管理と破裂部位に対する管理を同時進行で行う必要があります。
前者は血管の確保、バイタルサインチェック、輸血などが行われ、後者は一般的には開腹手術で破裂部位の縫合となります。

分娩中に発生した子宮破裂の場合は開腹して、胎児を出来るだけ速く娩出させます。
裂傷部を確認し縫合が可能であれば合成吸収糸などで子宮を縫合します。

裂傷部が大きく縫合不可能と判断されたときはやむを得ず子宮全摘術が行われます。


   ◇   ◇   ◇

今回はこの辺で。
次回は未定です。

「子宮破裂」その1

皆さん、こんにちは♪
今日もご訪問ありがとうございます。
最近は、寒暖の差が非常に激しいですね。
こんな時は風邪などを引きやすいので、お気をつけください。

さて、今回は「母体分娩時損傷」のなかでも最重症である「子宮破裂」について。


   ◇   ◇   ◇


■子宮破裂とは?
子宮破裂(uterine rupture)は主に妊娠後半から分娩中に発生する子宮の裂傷のことです。
3000分娩に一例くらいの非常にまれな疾患ですが、発生すると大量の出血を伴い突然に発生します。
そのため超迅速な判断と対応がとても重要な疾患です。

そのほとんどは妊娠中に発生するものです。
他院で帝王切開が行われ数年たって、妊娠とは無関係の月経中の子宮破裂を発症した珍しい症例を経験したことがあります。(当然緊急手術となりましたが・・・)
こんなこともあるんだなあと当時はびっくりしましたが。



■子宮破裂の分類
子宮破裂は完全子宮破裂不完全子宮破裂に分けられます。
前者は子宮が表面まで離断して子宮の外側から子宮の内面が見える状態です。
一方後者は子宮の表面の皮(漿膜面)は破れていなくて子宮筋層までで断裂がとどまるものです。
前者がより重症となりますが、後者は発見が遅れる可能性がありますね。

不完全子宮破裂にはいわゆる既往帝王切開創の離開も含まれます。
自然破裂は滅多になくほとんどは帝王切開後の子宮破裂ですね。



■子宮破裂の原因
子宮に何らかの傷(瘢痕部)がありそこから破裂する場合を瘢痕性子宮破裂といいます。
また、そのような傷がなくて破裂する場合を非瘢痕性子宮破裂といいます。

瘢痕性子宮破裂
子宮に対する手術の経験がある場合はこのタイプの子宮破裂を起こしやすくなります。
帝王切開術、子宮筋腫核出術、人工妊娠中絶術などで子宮に瘢痕が発生しているとその部分が脆く弱くなっていて破裂を起こしやすくなります。

特に頻度が高いのが帝王切開術です。
一度帝王切開術を経験した方は次の分娩も自動的に帝王切開術が選択されることが多いのは、このようなわけがあるんですね。
一般に37〜38週で反復帝切の予定が組まれますが、帝王切開術後に子宮破裂が発生する3分の1は分娩予定日から数週間前に破裂するともいわれているからなんです。

また、筋腫核出術も子宮筋に瘢痕を作る可能性がありますが、表面に近い部分でしかも大きさが2〜3センチ程度のものであればほとんど影響がないので状況によっては筋腫核出術後でも経膣分娩を行うこともあります。


非瘢痕性子宮破裂
全く自然な状態での子宮破裂は数万分娩に1例と言われ非常に珍しいものです。
沢山お子さんを出産した多産婦に多いとも言われています。

そのほかとしては交通事故などの外傷性の子宮破裂があります。
外傷性には子宮収縮剤の不適切な使用による子宮破裂も含まれます。



   ◇   ◇   ◇


子宮破裂は非常に迅速な対応が必要となるので、私たち産婦人科医は、瘢痕子宮、子宮収縮剤による過強陣痛、遷延分娩、多産婦などハイリスク群では子宮破裂を念頭において診療を行っています。

今回はこの辺で。
次回も「子宮破裂」の続きです。

「子宮内反症」その2

皆さん、こんにちは♪
今日もご訪問ありがとうございます。
「子宮内反症」の続きです。


   ◇   ◇   ◇


■症状と診断は?
子宮内反症が発生すると正常の子宮収縮機構が働かず、大出血が始まります。
また内反した子宮が外子宮口から脱出しているときは、膣内に真っ赤な腫瘤(内反した子宮の内面)を直視することになります。
重症では、腹部の激痛とそれに伴うショック状態(神経原性ショック)もしくは出血に伴うショック状態となることもあります。
内診して子宮底部を触れなければ診断は容易ですが、超音波検査が診断の補助となります。
(経腹超音波検査で裏返った子宮の断面を観察することが出来ます。)


■治療は?
出血と激痛により発症直後よりショック状態となる可能性が高いので迅速な治療がとても重要です。
「内反だ!」と判断した瞬間に治療を開始する必要があります!
程度によりいろいろな治療法があります。

非観血的用手整復術
内反症が発生したときはまず行われる治療です。
分娩後は子宮は収縮し、縮もうとしていますので裏返った状態で固まってしまう可能性があります。
そのため、まず子宮を弛緩させるために子宮収縮抑制を急速に投与します。
軽度の子宮陥凹では凹んだ部分を子宮内腔から内診指をつかって押し上げ整復します。

しかし、子宮内反症となった場合は基本的には全身麻酔下に整復します。
整復の際の激痛によるショックを防ぐ目的と吸入麻酔薬を使用することでさらに子宮を弛緩させるためです。
「裏返った子宮内面」を膣側から押し込むように整復します。
無事に整復できたら今度は急速に子宮収縮剤を投与して、直後に内反症が再発しないように十分注意します。
数日後に内反が再発することもあるため数日間は厳重な観察が必要となります。


観血的整復術
用手的に整復できない高度のものや内反から長時間が経過し子宮頚部で絞扼された状態にあると観血的(手術により)整復術を行います。
開腹して直接、裏返った子宮を元通りにします。


子宮全摘術
それでも整復できない場合や長時間が経過し子宮の血流が悪くなり子宮が高度ダメージを受けているときはやむを得ず子宮全体を摘出する場合もあります。


   ◇   ◇   ◇

子宮内反症は再発率も高いので整復後の管理もとても重要になります。
今回はこの辺で。
次回は「子宮破裂」についてです。

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