ドクター大島の紬物語り

100,000反の大島紬を検査した男の着物裏話

ドクター大島誕生物語

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私の目指す大島紬

伝統は、革新の上に成り立ちます。
何時の世も、どの世界においても、職人は身を削り、
技術の研鑽向上にしのぎを削って伝統を積み重ねてまいりました。

業界は、絣技術高度化にしのぎを削って参りました。
多くの同業者、職人仲間から、手柄話のように自分の作品を自慢いたします。
見るたびに、聞くたびに、心充たされる事無く、虚しさを覚えていました。

奥さんこれ12マルキよ、最高に絣が細かい最高の技術者しか出来ない、
年に何反しか出来ない、超逸品物ですよ。
産地にもこれが作れる職人は、数えるしかいないのですよ。と呉服屋は迫る。

おかしい何かがおかしい。
学歴を謳い上げないと自分の息子の価値は伝えられないのか。
自分の娘の容姿を誇示しないと娘の魅力、素晴らしさは伝えられないのか。

何かがおかしい。
そお、お客様をなえがしろにしている。
産地は、技術を競うことに価値観を
呉服屋は、儲けを競うことにしのぎを削ってきた。

やっぱりおかしい。何かがおかしい。
一番大事な物を、置き去りにしてきたのでは?

織る人も、普通の人、それぞれの生活パターンがあります。
織り上がるまでは、用も足せないのか?
そんなことはありません。

その時々に対応した、機転は働かさないと、それも技術の一つです。
それが体の中に刻み込まれている人が、ベテランと言われるのでしょう。
この様なケース365日の中では、多々あることです。

機を止めたら、必ず、慎重に、恐る恐る、3cm〜5cm織ってみることです。
織り段ができてないか、確かめてから、織り始めます。

もし出来ていたら、機をとめて、緯糸を解きます。
丁寧に、解かないと、経糸を毛羽立たせてしまい、
今度は、経糸毛羽立ちによる、横段不合となります。

もし経糸が、毛羽立ってしまつたら、糊を薄く水で溶き
柔らかい布に含ませて、経糸に軽くつけてやります。
乾いてから、又慎重に、丁寧に織り始めます。

痛んだ髪は、悲しいけど、リンスして、一晩、回復を祈るのと同じ気持ちかもしてません。

前々からよく言われていたんですが、
従来の大島でも十分単衣で着られますし、
現に家内なんか、特に白大島を単衣で愛用していますので自信を持ってお客さんにも勧めてきました。

最近特に単衣の大島が欲しいと言う声が多くなり
もう、そろそろ創らないと、密かに研究はしていました。
問題は経糸と緯糸の相性。経糸の太さに対して、緯糸を何本織り込むか。

約60センチの間で、色々な太さの糸を試織いたします。
もちろん緯糸の打ち込みも変えながら。
布を、糊落としをした場合、どれくらいの柔らかさ、風合いになるかを考えて。

ベストな条件で織り始めました。期待を胸一杯に膨らませて。
順調に行っていたのですが、昼休み、機を止めて、食事に行ったのです。
昼休み時間をはさんで、雨が降り始めました。

お昼を済ませ、ゆっくり休養をとり、さあ、織りましょうと機を織り始めました。
ここに大きな落とし穴がありました。
午前中と違い、午後からは、雨・・・経糸が湿気を呼び、微妙に伸びていたのです。

午前中と、同じテンションで緯糸を打ち込んではいけないのです。
この不注意、気の緩みが、打ち込み不良、織り横段を作ってしまったのです。

大島紬は、機からおろすまでは、八方に気を配っての真剣勝負です。
画像が取れたら、後日、添付いたしますが、非常にデリケイトな問題です。

何年やっても、こんな失敗を
当り前の事を、当たり前にやれば、こんな事には、ならないのに。

紬つくりの掟として
糸には絶対い逆らうな・・・と言う厳しい不文律が御座います。
一方、早く、織り上げたい。
新柄、新作は特にその衝動に、突き上げられます。
あたかも、我が子を早く見たい、早く抱き上げたい。そんな気持ちと同じかもしれません。
物創りには、一生ついて回る欲望であり、又それは、創り手にとっては、生きる源泉でもあります。
でも、それはやっぱり欲なのです。

糸には、それぞれ性質があります。
糸から、「早く織って」、と言っているかの如く、自分達から、スムーズに織りあがるもの。
経糸と緯糸の相性が悪く、なかなか馴染んでくれないもの。
これは機嫌取りが難しいです。
機嫌を、上手にとつて、コツを掴んで、糸を手なずけられたら・・・・
最高。思わず、バンザイ・・・・

今回の失敗は、新製品でした。
今までの経験と知識を、総動員して糸をたてつけ、慎重に織ったつもりです。
順調に、織り進み、ヨシシャ・・これでいけると思った矢先に、ドンテン返し。

後3メートル40センチ織れば、ゴールなのに
緯糸、織り込み不良による、横段不合。
後わずか。 3メートル40センチですよ。

残念で、悔しくて。
誰を責めてもせん無きこと。
私が、あせっていたのです。
早く、新製品を見たい、この手に取り上げたい。
その欲が強すぎたのです。
誰を責めてもせん無きこと。

大島は、いいけど高い。
だけど一度は、袖をとしてみたい憧れのきもの。

着た人にしか解らない、表現できない着心地の良さ。
大島を着たら、他の着物は、着れないね。着た人は、異句同音におっしゃいます。

大島の着味を味わえる、お求安い価格の大島は出来ないものか。
しかも大島紬独特の染色技法、泥染めで。

試作を、昨日、福島の呉服屋さんに送りました。
2〜3日中に、評価が来るでしょう。楽しみです。

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