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〔第壱話〕
「お父様、警視庁の”藤田警部”と仰る方がいらしておりますが。」
奥の間で書き物をして居た老主人に若い娘が襖越しに声を掛けた。
「あぁ、構わんからここに通しなさい・・・」
奥に通された”藤田警部”が、
腰のサーベルを外して主人の前に正座すると一礼した。
「鹿児島に赴いた時以来すっかりご無沙汰しております新八殿、
養子に入られたと聞いておりましたが若いお内儀で羨ましい。」
「そそっかしい奴じゃ、お主も知っておろう芸妓の小常に産ませた娘の磯子じゃ、
今は女優の”尾上小亀”と言った方が名が通っとると思うがな?」
これはうっかりとばかりに藤田が頭を掻いた。
いやいやと豊かに蓄えた白髭を撫でながら微笑む老主人。
「久しいな斎藤よ、お主が”西郷南州”と一戦を交えてから早二十年じゃな?」
「それがしが警視隊の一員として出征してからそれ位経ちますな。」
「我らが壬生狼(みぶろ)と呼ばれ恐れられたのも今は昔、
天皇の治世になると逆に昔の遺恨で付け狙われる始末だわい。」
「お主も山口二郎から”藤田五郎”へと幾度か名を変え、
わしも今は薬屋の婿養子・”杉村義衛”じゃ。」
「近藤や土方ら仲間たちが維新に散って以降、
達者にやっとるのはお主くらいだ。」
「あの日、”紅蓮隊”の連中と別れて以来かれこれ幾ばかりか?」
「えぇ、”新選組”と同じく京都を護った”紅蓮隊”。」
「我らとは少し敵が違いましたが、
奴らが居なければこの時代も訪れ無かったでしょう。」
”藤田警部”の言葉を受けて永倉老は虚空を見上げて頷いた。
遥か文久年間に遡った京都某所・・・・・
「庵主どの、隊長は何処に行かれたでござるか?」
涼しい目をした精悍な侍が、主に向かって尋ねた。
「おぉ、”武羅将”どのでおじゃるか、名無しどのはいつもの場所じゃ。」
指で空を指し示しながら、上品な笑みを浮かべた庵主が答えた。
ここ故汲庵(こきゅうあん)は、乱れた公家社会や勤王と佐幕の争いを憂いた
左大臣”烏丸中将”が、世捨て人の様に囲んだ庵である。
一旦外に出た”武羅将”が、えぃやと屋根に駆け上がると、
屋根の上で寝そべる男の横に座禅を組んで声を掛けた。
「隊長、何か記憶は戻られたでござるか?
ところでお館様から話があると連絡が来たでござるよ。」
”武羅将”に声を掛けられた男が、
眩しそうに目を開けてむくりと起き上がると静かに答えた。
「あぁ、分かった 今日もいい天気だな”武羅将”よ。」
僅かな雲が浮かぶ日本晴れの空と、
隣の竹林からサラサラと吹き抜ける風がフッと香った昼下がりだった。
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この物語はフィクションです、実在の人物等一切関係ありません(^^;
”藤田 五郎”(ふじた ごろう) (元新選組・三番隊長の斎藤一
”杉村 義衛”(すぎむらよしえ) (元新選組・二番隊長の永倉新八
”千手院 武羅将” (せんじゅいんむらまさ) (柳生別働隊「紅蓮隊」隊長補佐
”烏丸中将” (からすまちゅうじょう) (現・左大臣職だが殆ど世捨て人
”隊長・名無し” (故汲庵に居候する紅蓮隊隊長
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「るろうに剣心」的なエピソードも入ってくるのかな?
2015/5/4(月) 午後 11:00
岩魚さん、モノマネになっちゃうので、
どちらかと言うと昨今流行りの妖怪物かもですかね〜?
2015/5/5(火) 午前 0:03
なんだか面白そうで期待しています。
2015/5/5(火) 午後 6:14 [ mizuna ]
mizunaさん、頑張って書きますのでご声援よろしくお願いします(^_^)
2015/5/6(水) 午前 1:15