|
第撥幕 【おとこ花、おんな花】
迎えの籠に乗った”双業平の桔梗亮”は
湯島の出会い茶屋を訪れていた。
そこには”花鳥亭一座”の芝居、
特に”桔梗亮”にご執心の浜田屋の内儀
”お初”が待っていたのだ。
浜田屋とは日本橋に構える呉服商で、
老中”水野忠邦”の屋敷に出入りしており
水野が行っている政策、豪奢禁止令を余所に、
贅を尽くした養女”藤女”(ふじめ)の為の着物を納めていた。
上様のご寵愛を受けた”藤女”は、
近々大奥に上がるのを待つ身であり、
水野にとってもその権勢は弥(いや)が上にも上っていた。
「”桔梗亮”様、遅かったじゃありませんか。」
じれったさを隠せない”お初”が”桔梗亮”の横に座ると、
その身を預けてきた。
”桔梗亮”が黙って肩を抱き寄せ
右手をそっと襟元に滑り込ませる。
そのまま布団に寝かせて”お初”の秘唇に舌を這わせると
途端に”お初”の頬が紅潮した。
”桔梗亮”のあだ名の”双業平”(ふたなりひら)とは、
”ふたなり”(両性具有)と、
美男子を指す”在原業平”(ありわらのなりひら)の
名を掛けた物である。
「あぅ、あぁぁぁ・・・”桔梗亮”様・・・」
豊かな胸をサラシで隠した”桔梗亮”の
屹立した逸物に身体を貫かれると、
”お初”の心は持ち上げられ、あるいは落され、
無限の宙を彷徨うが如く
なす術も無く快楽の渦に翻弄されて行ったのだった・・・
「只今戻りやした。」 小屋に帰った”桔梗亮”が
早速、長火鉢の前に座っている”菊乃丞”に挨拶すると
”お初”から聞き出した”芙蓉の方”(藤女)の事を報告した。
「”芙蓉の方”ですが、どうやら遠縁の娘の様ですな、
あの通りの器量好しでもあり自分の役割を心得ていて
それで上様の寵愛を受けたと言う訳です。」
「成る程、それであのやりたい放題って訳かい?」
そう呟いて”菊乃丞”が煙草の煙をふうっと吐き出すと
キセルの灰をタンと音をさせて叩き落した。
「”芙蓉の方”の取り巻きは水野の三名の側用人で、
”新吉”の女房”お美津”を無礼討ちした
”柳津月心”と”神室菊馬”、”橘 喜八朗”」
「そして彼らの剣の師匠が水野に雇われた用心棒、
”佐々木小次郎”以来と言われた
巌流の遣い手、浪人の”椿屋烈波”」
「あぁ、あの時”金の字”と睨み合ってた奴だね?」
”菊乃丞”は、”金の字”の強さを瞬時に見抜いた眼力と
”ぼたん”が幇間に掛けた術に気付き
すぐに正気に戻した冷静さを思い出していた。
「まぁ、”椿屋”の強さは門弟三人衆に比べて別格と見て宜しいかと?」
「それともうひとつ、浜田屋のご新造さんの話では
成田屋の七代目を江戸所払いにした罪状の表向きは
豪奢禁止令の見せしめと言われてますが、
実はお抱え役者にしようとした”扶養の方”に
逆らったのが要因だとの事。」
「ふぅ〜んそうかい、歌舞伎は庶民の娯楽、
それを独り占めしようなんてなんて奴だろうね?
”梗さん”ご苦労様だったねぇ休んでおくれ。」
「いえ、お安い御用で、失礼しやす。」
下がった”桔梗亮”と入れ替えに
するっと楽屋に入ってきたのは”金の字”である。
「よっ邪魔するぜ! 今チラッと聞かせてもらったが、
”芙蓉の方”も阿漕(あこぎ)な真似してるじゃねぇか?」
「ったく、油断も隙も無い人だねぇ〜、
ここは関係者以外立ち入り禁止だよ。」
急に現れて驚いた”菊乃丞”が呆れ顔をするのも構わずに
”金の字”は勝手に急須のお茶を湯飲みに注いで一服飲み干した。
「まぁそう邪険にするなって”太夫”さんよぉ、
ところで”水野”の政策に以前から反対視していた南町の奉行、
”矢部駿河守”(矢部定謙)が更迭されたぜ、
後釜は”鳥居甲斐守”(鳥居耀蔵)だそうだ。」
「こっちもご贔屓さんから聞いてるよ、
『町々で惜しがる奉行、やめ(矢部)にして、
どこが取柄(鳥居)でどこが良う(耀)蔵』
という落首が世間じゃ流行ってるって噂ですよ。」
「そうだ、妖怪と言われた”鳥居”が奉行になると
天保の改革が加速する。
そうなると矢部と意見を同じくしている
北町奉行の”遠山左衛門尉”(遠山景元)の首もあぶねぇかもな?」
そう”金の字”が苦笑いすると
おどけた様に諸手を広げて首をすくめて見せた。
【第漆幕に戻る】 ⇔ 【第玖幕に続く】
*************************************
”花鳥亭 菊乃丞”(かちょうてい きくのじょう) ”花鳥亭一座”の座長で一枚目(看板役者)
通称”太夫”(たゆう) ”双業平の桔梗亮”(ふたなりひらのききょうのすけ)
一座の二枚目で”菊乃丞”のボディーガード
通称”梗さん” ”花鳥亭 萩花”(かちょうてい しゅうか)
若い座員のまとめ役で”牡丹”の双子の姉
通称”おはぎ”
”花鳥亭 牡丹”(かちょうてい ぼたん)
同じくまとめ役で双子の妹、
通称”ぼたん” ”藤女”(ふじめ)
老中”水野忠邦”の養女で
通称”芙蓉の方”(ふようのかた)
”柳津 月心”(やないづ げっしん) ”橘 喜八朗”(たちばな きはちろう) ”神室 菊馬”(かむろ きくま) ”芙蓉の方”の家臣
”椿屋 烈波”(つばきや れっぱ)
”芙蓉の方”の用心棒で巌流の使い手 ”金の字”
”花鳥亭一座”の興行に現れた謎の遊び人 「この物語はフィクションです。」
|
全体表示
[ リスト ]







これから3日まで出かけますのでゆっくりリコメを致しますので
申し訳ございません。
良き年を迎え来年も宜しくお願い致します。
2017/12/31(日) 午前 9:46
はこふぐさん、良いお年を!
何処か御旅行ですか? いいですねぇ〜
私は家で寝正月です、お気を付けて行ってらっしゃいませ!
2017/12/31(日) 午前 10:25
かれちちさん、いつもナイスありがとうございます( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
2017/12/31(日) 午前 10:26
はこふぐさん、いつもナイスありがとうございます(*´∀`)♪
2017/12/31(日) 午前 10:27
yamaさん、いつもナイスありがとうございます(* ̄∇ ̄)ノ
2017/12/31(日) 午前 10:28
mizunaさん、いつもナイスありがとうございます(о´∀`о)
2017/12/31(日) 午後 6:34
あんなパパさん、ナイスどうもありがとうございます( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
2018/1/19(金) 午前 6:23
不義密通はお家のご法度ですから欲情もメラメラと燃え上がる・・・
もう少し楽しみたかったですねぇ〜〜
罪な作者ですね〜〜〜
2018/1/22(月) 午前 9:10
はこふぐさんは艶っぽいのを期待されてましたか?
この小説はフルオープンなので青少年に見られても良い程度に書いておりますσ(^_^;)
適度にアダルトチックに描いて行きますね(*´꒳`*)
2018/1/22(月) 午後 10:37
はこふぐさん、いつもナイスありがとうございます😊
2018/1/22(月) 午後 10:38