|
庭木の埃ばかりか家の外壁の埃までも洗い流した
激しい雨の日を跨いでから急に暑い日が続いている。
暑い・・・とにかく暑い。
普段より車の窓を開けてエアコンを使わない私には
非常にすごしにくい時期に突入したのをぼやく。
今日は私用で遠出をしなければならない日。
雨の日よりはいいが、暑いのは非常に苦手にしているだけに
人の見舞いとはいえ、出かけることにさえ抵抗を感じる。
が、ぼやいたところで仕方が無い。
これ以上日が高くなる前に行かなければ、帰りに地獄をみる。
それだけは嫌だ。
暑くなれば、どんな車に乗っていても受けなければならない
洗礼の儀式「社内の熱気」の始まりだと覚悟して、扉をあける。
屋根つきのガレージに置いてはいるが、それでも暖められた
外気を掻き分けて歩いているような状況に期待感は薄れる。
激しい洗礼をうけるのだろうか・・・・。
おそるおそる鍵を外し取っ手に手をかけ、一気に開く。
扉を開けると閉じ込められた熱い空気の層が襲い掛かる。
両扉の窓を開け覚悟を決めて空気の層の中に身を沈める。
熱気を我慢しつつ、エンジンをかける。
陽気なエンジン音が背中を押す。
今日も頼むぞ!相棒!! とつぶやき公道に出る。
窓をあけているのでスピードを上げると、横殴りの風も暴れる。
風の直撃する腕、顔を撫でる風は心地よい。
が、走っているときに対角線に風が抜けないから
空気の撹拌が非常に行いにくいMiniくん。
足元にはエンジンルーム側の熱気がうっすらと漂う。
足腰まわりには暖かい空気が残っており、それが絡みつく。
まるでぬるま湯のお風呂に浸かっているような感じに
包まれながら、Miniを駆り足早に病院へと急ぐ。
途中から風が出てきて車内の温度も落ち着きだした。
お陰で苦痛も無く、延々と続く道を鼻歌交じりに征く。
二時間後、私は病院に着いた。
帰りに同じ体験を極力しないで済むように
駐車場で再度熱せられる事を嫌い、日陰に車を止め人を見舞った。
病状を確認し安心したので、相手を疲れさせないように、
30分ほどで病院での用事をすまし、再び車へ。
車内の熱はそれほど上がっておらず、安心して乗り込む。
エンジンをかける。元気なエンジン音が応える。
いつもより少し上ずった声を多少いぶかしみつつも、
ギアを入れてさぁ出発・・・
・・・・・。
ギアがうまくかまない?!
何故・・・何故なんだ・・・?!
エンジンオイルや冷却の件を嫌というほど聞いていただけに
慌てて、エンジンルームをあけようとボンネットに手をかける。
熱い!!
むちゃくちゃ熱い!!
熱さに耐え、ボンネットを開ける、。
中はサウナ状態。
渡る風がその上を通るたびに熱気が襲う。
あら熱が飛ぶのをひたすら待って、ラジエーターの水量と
エンジンオイルの油量を慌てて確認する。
どちらも問題が無い。
が、エンジンオイルは非常に水っぽい。
熱が原因なら、冷えれば走れるな・・・と思いつつ
完全に立ち往生を食らった現実と向き合う。
そう、ここは陸の孤島。
タクシーを呼んでも30分はかかるし、それで最寄の駅に
行こうにも更に30分は移動しなければならない程の場所。
嫌なものが背筋を走る。
最悪・・・否。
だが、思考はとまらない。
焦る・・・焦る・・・・・焦る・・・・・・・。
見舞い外来の時間を過ぎ閑散とした駐車場で
一人嫌な汗をかき続ける。
落ち着きを取り戻すために、数回深い深呼吸をする。
そしてゆっくり原状回復の方法を考える
・どのようにして帰宅するか
・どのようにして車の回収を図るか
即答はできない。
だが、エンジンルームの熱が下がった状態で
動きを確認してから次を考えることも可能だと思い
少し落ち着きを取り戻した。
焦りに支配された心を落ち着けるために
いったん病棟に戻る。
売店で雑誌と飲物を補充し、来るべき時が来るまで
静かに待機することに徹する。
そして、おおよそ2時間が経過した。
雑誌を完全に読み終え、現実に戻ってきた頭が
再度動揺する。
まぁ、なるようにしかならん。
あきらめとも取れる言葉を自分に吐き捨て、
車へと移動する。
静かに運転席に着くと出発の準備をして、静かにキーをまわす。
ご機嫌な声が周囲の静寂をつんざく。
期待感が一気に加速する。
緊張した左手でギアを入れる。
・・・・・。
ギアは静かに繋がった。
移動ができたことに喜びを覚えつつ、アクセルを少しだけ踏む。
レスポンスが回復してるのを感じる。
今しかないな・・・。
そうおもうと、胆をくくって帰宅の徒についた。
嫌な汗を拭いつつ、Miniを駆る。
Miniも素直に反応する。
なんだったんだろう・・・と疑念をもちつつ、
ひたすら帰宅する事に専心する。
時間が少し遅くなった事もあり、少しすいた道を軽快に抜けていく。
そして、おおよそ二時間が経過し無事に帰宅。
帰り着いて改めて車の調子を見る。
やはり、ギアのかみが甘い。
知人に電話で相談しながら、原因の調査をしてみる。
暫く話をしていると原因の可能性に繋がる興味深い話をしてくれた。
帰宅時間も遅くなってしまったのと、またこれから
エンジンの熱が冷めるのを待ってという条件を満たさないと
テストはできないから明日改めてテストする事にした。
。
翌朝・・・。
エンジンをかけてみる。
いつもどおりの快調なエンジン音が響く。
ギアを入れてみるとすんなりとレスポンスが返ってくる。
そのまま、近くのPITへ急いだ。
PITについて店員にエンジンオイルの交換を依頼する。
10W-40W のものから 10W-50W のものに完全交換。
読みがあたっていればこれで問題は解決するであろう。
期待感に胸を膨らませながらオイル交換が完了するのを待った。
オイル交換が済み駐車場のスペースを使って軽く慣らしをしてみる。
オイルがなじんでないこともあり、出だしは引っかかり感が
あるもののギアはしっかりと咬む。
数分毎のインターバルで何度か繰り返して、慣らしを
続けてみるが問題は一切ない。
そこで安堵をして公道にでて再度テストをしてみる。
時間をかけ走ってみては停止して再度エンジンをかけなおして
走るのを何度か繰り返す。
走りが完全に蘇った。
読みがあたっていたのに安堵するとともに、
Miniはすぐ壊れるというゴシップの所以を体験したのだった。
Miniは女性のように繊細で且つ敏感である・・・。
実に可愛い車である。
|