神田のガリレオ

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 最近のワイヤレス業界で驚いたニュースとしては、三菱電機の携帯電話事業からの撤退を3月3日に発表したことでした。三菱電機は、1983年から電電公社へ自動車電話の納入を始めていました。この年は私も、自動車会社から電機メーカーに転職当時で、私の仕事も電電公社向でしたので、当時の業界の動きも記憶に残っています。

 三菱電機のホームページによると、「市場が成熟化し、携帯電話端末の需要の伸びが見通せない中で、お客様の嗜好がますます多様化する非常に厳しい事業環境の下、当該事業につきましては、足下の出荷台数が減少するとともに、今後の業績改善を見通すことが非常に難しくなっております。このような状況の中で、当社は、あらゆる角度から携帯電話端末事業の方向性に関して検討してきた結果、当該事業を終息するとともに、当該事業の経営資源を、当社がより注力・強化していく事業にシフトし、当社全体の持続的成長と、企業価値の一層の向上を目指すことといたしました。」(以上、ホームページからの転載)ということでした。

 今年の1月、三洋電機が携帯電話事業を京セラに譲渡することで合意したいうニュースが流れました。これは、携帯電話ベンダーに激震が走ったのですが、今回の三菱電機の場合は、携帯電話事業を他社に譲渡せず、その技術資産はNGN(次世代ネットワーク)関連機器や携帯電話基地局機器、自動車向けの通信事業などに再配置するようです。

 昨年の日経エレ4月9日号で、私がワイヤレス製品の規格から設計から実装、出荷までの流れについて記事を書いて以降、「日本の製造業再生のシナリオ」というと大げさですが、 規格と技術の全体像を産学官の方々とディスカッションする機会が増えてきました。また、マスコミの記者の方々も、記者という立場よりも、取材を通しての日本の製造業界の危機感を非常に感じられることを言われます。

 そこで、ワイヤレス業界で、製造業が直面している問題を今、整理しています。これは、日経BP社で主催される講演会

           http://techon.nikkeibp.co.jp/NE/academy/080425.html

でお話しようと思っていますが、以下に現時点で思ういろいろな市場についておのおの1つだけ問題点を挙げてみました。講演会では、それ以外の問題点などもお話をしようと思っています。

● 携帯電話

 三菱電機のホームページにも書かれていましたように、日本は3G携帯電話(マルチメディアを意識した携帯電話ですが、世界的には音声+ショートメッセージの安価な2G携帯電話市場がまだまだ根強い)がほとんどで、携帯電話ベンダーは、国内ではキャリアごとに対応した製品を作る市場構造となっており、各キャリア同士のサービスの差別化や機能などに対応しなければならずまた製品サイクルが非常に短いので、限られた設計・開発者はその仕事に終われ、本来、日本のお家芸でもあった廉価な製品の2G携帯電話まで手がまわらない状況と思います。ただ、最近の日本の報道で、現時点で世界の携帯電話市場の大きなシャアを日本企業が取れていない理由として、日本は世界市場の比率の高いGSM携帯電話に、2G携帯電話のときに手を出さなかったことが敗因ということを聞いたことがありましたが、私はそれは誤りと思っています。GSMをやりたい企業は、1990年代前半には日本の携帯電話ベンダーには多かったのですが、日本がGSMを採用しなかった報復?として、ヨーロッパで日本で製造するGSM携帯電話の受け入れがなされず、当時の携帯電話ベンダーは、ヨーロッパに現地法人を作り、工場を設立したりなどとても苦労をしていました。当時は私も自分の会社以外に、国内やアジアに製造拠点を持つ無線機ベンダーの開発部長や研究所長を兼務していた頃で、大手の携帯電話端末ベンダーの担当者の方々と、対策を話し合ったこともありました。

 世界市場でも日本の携帯電話はシェアが低く、この業界はだいぶ苦しい状況におかれています。今後、日本の携帯電話端末ベンダーがどのようになってゆくのか、撤退の道を歩むのか・・・ワイヤレス製造業界再生のシナリオを考えている私には気になるところです。


● 無線LAN

 高速化が始まり、IEEE 802.11n規格の製品も出始めました。しかし、現在の製品はあくまでもドラフト2.0対応であり、今春のドラフト3.0以降、802.11nの標準化が完了予定の2009年7月までは、各社とも綱渡り状態での製品化をしているのではないでしょうか? 楽観的な見方をすれば市場にでてしまったユーザの多い製品から、標準も大きくドラフトとは変わらないだろう見方もあれば、競合する他のシステム(WiMAXなど)と戦うために、ますます進化するということも考えられます。最近の情報通信機器は、数年前に買ったばかりなのに、今は使えなくて部屋の隅においてあるというものも多い現状を見ると、今後、どのようになってゆくかは、まだまだ予断を許さないのではないかと思っています。

 また、高速化のキーワードであるMIMOも、送信機と受信機の高周波回路がアンテナの本数分必要で、移動端末では、消費電力の問題点も残ると思います。


● WiMAX

 無線LAN同様に、標準化終了が伸びていて、注目されていたベンチャー系半導体ベンダーは、資金面で会社の維持が難しく、会社をたたむ話が聞こえ始めてきました。これは、裏ではどろどろした業界の話もあるようで、ビジネス面では心配なところです。


● UWB

 最近では日本の大手企業も薄型テレビで、UWB技術を使ったものが販売されています。日本ではUWB普及のために2008年12月末までは、4200〜4800MHzまではDAA(Detect And Avoid)機能無しでも使えるようになっていますが、その後は、規制が厳しくなります。4G携帯電話の新周波数での干渉の配慮なのでしょうが、業界でも混乱がおきないと良いと思っていますが・・・


● RFID

 UHF帯での干渉対策としてLBT(Listen Before Talk ・・・ 誰かが同じ空間で電波を出していることを確認した場合、電波の送信ができない)機能が導入されたことにより、リーダライタの前に読み出したいモノがあっても読み出すことができないときが多発し、やっと自分が電波を出せる時には、すでにモノが自分の前からいなくなっている・・・という物流では致命的な問題になってしまいました。しかし、これはごく近いうちに電波法が改定され、LBT機能無し(ただしミラーサブキャリア方式となる)の周波数が、今のUHF帯の周波数帯域の一部で使えるようになります。

 RFIDというよりユビキタス構想の全てのモノにIDコードを割り当てることが、今は問題化しているようです。同じモノにバーコード、RFIDなどが取り付けられ、同じものを管理するのに、IDの体系がシステム(RFIDの場合は周波数によってもIDの形態が変わってしまう)が統一されていないため、ネットワーク上でのID管理が難しく、また、そのID変換を行うテーブルも費用がかり、管理も大変なので、IDを今後はどのように関連付けてゆくかが課題のようです。ユビキタス構想の考え方事態が基本から変わらざるを得ないくらいの大きな問題かもしれません。


● 日本の若者の工学離れ対策

 ワイヤレス市場を活性化させるために、若者の工学離れをどのように防ぐかを、教育面でも見直さないといけないと思います。そこで、4月からの私の大学での講義用に新しく教科書を作りました。回路設計は、オームの法則でかなりのところまでできると思っています。この本では無線回路設計が広く浅く理解し、全般的な高周波回路が設計できるようになることを目指した教科書です。回路自体は実用上でも使えるレベルですが、高性能をめざす設計事例ではありません。まず、動く回路を設計できることを理解してもらう本です。そこから高性能化設計は、経験をつめば自然とわかるようになってくると思っています。設計ができるようになることが、若いエンジニアにとって大切であり、それを基盤として、高級な回路設計ができるための布石となってほしいと思っています。

 この教科書は、全国の理工学書を扱う書店に3月27日に並びました。筆者は私で、タイトルは「高周波・無線教科書」です。

        http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/15/15411.htm

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