楽興の時・音の絵

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伝統芸能

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■国立劇場第167回文楽公演・第2部「ひらかな盛衰記」
2009年5月10日(日)16時開演 国立小劇場

 5月の文楽公演は二部構成。そのうち第2部の「ひらかな盛衰記」を観る。元文4年(1739)4月、大坂竹本座初演。タイトルは、平仮名のように分かりやすく書かれた『源平盛衰記』という意味だそうで、源義経の木曽義仲攻めから一の谷の合戦までを題材にした時代物だ。角書には「逆櫓松(さかろのまつ)」「矢箙梅(えびらのうめ)」とあり、作品の主人公が、木曽義仲の敵を討とうとする樋口次郎兼光と、坂東一の風流男と言われた梶原源太景季(かじわらげんたかげすえ=梶原景時の長男)の2人いることを表している。

 今回は、全5段のうち、2段目と4段目の半通し上演となっている。この2つの段では「矢箙梅」――梶原源太景季と彼に尽くす腰元千鳥(傾城梅ヶ枝)を軸にした話が展開する。あらすじは以下のとおり(藤田洋編『文楽ハンドブック改訂版』<三省堂>より要約)。

 寿永3年(1184)源義経は宇治川を渡って義仲軍を撃破したが、その先陣を争ったのが、梶原源太と佐々木高綱で、結果は佐々木の勝利となった。源太の父景時は怒り、息子は鎌倉に追い返し、妻延寿に息子を切腹させよという手紙を送る。源太の弟平次は病気と称して合戦に加わらず、腰元千鳥をくどいており、兄が高綱に負けたことを知っていながら、宇治川の手柄話を所望して辱める。だが、源太は、父景時が失策を犯して義経の不興をかった際に高綱がかばってくれた恩義からわざと負けたのだった。その秘密を打ち明けられた母は息子を殺すわけにはいかないと、勘当して屋敷から追放した。かねて恋仲の千鳥とともに、母の慈悲に感謝しながら館を去る。だが、源太には生活能力がなく、千鳥は神崎の遊廓に身売りして、傾城梅ヶ枝になる。義経軍は一の谷の合戦の最中で、源太も参加して武功を立てたいが、鎧は質屋にある。夫に手柄をたてさせたい梅ヶ枝が、無間の鐘になぞらえて一心こめて手水鉢を打つと、金が降ってきた。2階から小判を降らせた主は、侍客に変装した延寿だった。

 文楽の頭に「源太」というのがあり、二枚目の役どころに使われるが、これはこの作品の源太景季で使われたのが最初だという。歴史物だが、2段目と4段目でいえば、梶原源太景季を軸に、その妻になる腰元千鳥(傾城梅ヶ枝)、そして源太の母延寿のあいだで、人情の通いあいがドラマティックに描かれるところに特色がある。作品全体に影を落としているのは梶原景時の怒りであり、それに先立つ失策なのだが、景時本人はドラマのなかに登場しないという作劇術が巧い。

 導入部となる「梶原館の段」では、仮病を使って合戦に赴かず、兄源太と恋仲にある千鳥に横恋慕している弟平次景高が登場し、嫌がる千鳥を口説いている。横須賀軍内が現われ、宇治川の先陣争いで源太が敗れ、父・景時が怒っているというエピソードが紹介され、主人公・源太景季をめぐる波乱を予感させる。2段目の山場は「先陣問答の段」で、ここでは源太が京から帰りついているが、彼はまだ切腹を命じる父の手紙の内容を知らない。千鳥に懸想する平次が兄を陥れようとして、宇治川の合戦の様子を意地悪く訪ねる「先陣問答」が始まる。舞台上は、下手から千鳥、源太、平次、延寿という3人使いの人形が4つ並び壮観。大夫の「謡い語り」によって、源太のいくさ物語がくりひろげられる。それに突っ込みを入れて哄笑する平次。あくまで源太の肩をもつ千鳥。その様子から源太と千鳥の仲を察する母延寿――。4人の人間模様が浮かび上がる。続く「源太勘当の段」では、源太が母に対して、宇治川の合戦で佐々木高綱に手柄を譲った理由――以前に父景時の失策の窮地を救った高綱への恩返し――が明かされる。だが、武士の情けからその事情は明かせず、そんなことは知らない父景時の不興を買うという不条理な事態が浮かび上がる。それは忠と孝との板挟みでもある。事情を知った母延寿は、武士の体面を保つ切腹よりもむしろ厳しい勘当(「阿呆払ひ」)を源太に命じて、その命を救い、千鳥にも「不義」を理由に暇をやり、二人を添い遂げさせようとする。子を思う母の慈愛の深さだ。

 「辻法印の段」は、そうして西国・大坂にやってきた源太だが、生活力がないため、みすぼらしい姿でインチキ占い師(辻法印)の家に匿われていることをユーモラスに示す「チャリ場」。これをはさんで「神崎揚屋の段」では、千年屋という遊廓で千鳥が梅ヶ枝という名の傾城(遊女)となっているが、実は源太に操を立てるため、源太の鎧を質に入れて金を工面していた。ここに千鳥を探していた姉お筆が登場。木曽義仲に従っていた父・鎌田隼人が非業の最期を遂げたことを伝える。源太は一の谷の合戦に加わって、手柄を立てたいが鎧がない。梅ヶ枝は客に300両を出させると約束するが当てはなく、途方に暮れたあげく、庭の手水鉢を「無間の鐘」になぞらえて必死に叩く。オペラ風にいえば、ここはまさしく「狂乱の場」だろう。とそこへ、2階の窓から300両が降ってくる。引き続く「奥座敷の段」では、梅ヶ枝が質屋から鎧を持って戻り、源太が出陣しようとするが、自分は父親の仇を討ちたいと語る。そこへ姉お筆が現われ、父は梶原景時の手勢の番場忠太に討たれたため、梶原景時一族は亡き父の仇に当たることを明かして、妹に源太との離縁を迫る。そこに姉妹めがけて鏃のない矢柄が飛んでくるが、それを射たのも、前場で300両を降らせたのも、源太の母延寿であることが明らかになる。延寿は自害を試みて、姉妹の敵討ちを終わらせようとするが、その覚悟はお筆の心をうち、敵討ちをやめることを決意する。源太は梅の枝を箙にさして戦場へ向かうところで大団円となる。

 大夫の語りは、それぞれ変化があって面白かったが、とくに「神崎揚屋の段」の豊竹嶋大夫が、身振り手振りも交えて変幻自在、ドラマティックな語りで、さすがに聴きごたえがあった。人形では、桐竹勘十郎の千鳥=梅ヶ枝が、源太に尽くすけなげな女性像とそこはかとない色気を表現する。同時に「神崎揚屋の段」の「梅ヶ枝の手水鉢」の場面での狂乱ぶりのように、激しい動きが冴えている。吉田和生の源太景季は、ダンディーな主人公にふさわしく品がよい。全体を通じて、休憩をはさんで3時間45分、変化に富んで弛緩するところのない、良い舞台だった。

【データ】
 作:文耕堂・三好松洛・浅田可啓・竹田小出雲・竹田出雲
《梶原館の段》
 豊竹松香大夫
 鶴澤清志郎
《先陣問答の段》
 豊竹呂勢大夫
 竹澤宗助
《源太勘当の段》
 竹本千歳大夫
 鶴澤清介
《辻法印の段》
 豊竹英大夫
 竹澤団七
 豊澤龍爾(ツレ)
《神崎揚屋の段》
 豊竹嶋大夫(切)
 豊澤富助
 鶴澤清馗(ツレ)
《奥座敷の段》
 豊竹咲甫大夫
 鶴澤清友

<人形役割>
 腰元千鳥後に傾城梅ヶ枝:桐竹勘十郎
 母延寿:吉田玉也
 梶原平次景高:吉田文司
 横須賀軍内:吉田勘市(16日まで)
 梶原源太景季:吉田和生
 法印女房:吉田一輔
 腰元お筆:豊松清十郎
 辻法印:吉田勘緑
 揚屋亭主:吉田幸助
 仲居:吉田蓑次
 質屋の男:吉田玉誉
 腰元:大ぜい
 百姓:大ぜい
 駕籠舁:大ぜい


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