楽興の時・音の絵

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■音楽堂バロック・オペラ――ヘンリー・パーセル「アーサー王」
2010年2月28日(日)15時30分開演 神奈川県立音楽堂

 エルヴェ・ニケの率いるル・コンセール・スピリテュエルは一昨年の来日公演で、ヘンデルの「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」の鮮烈な演奏によって話題をよんだ。あいにくその演奏は聴けなかったのだが、今回、英国の作曲家ヘンリー・パーセル(1659〜1695)のセミ・オペラ「アーサー王」を演奏するというので、横浜まで出向いた。ところが、大津波警報の影響でJRのダイヤが乱れまくり、開演時間が当初予定の15時から30分順延となった。筆者もJRで行く予定を変更し、東急東横線で「みなとみらい」駅からてくてく歩く。「備えあれば憂いなし」とはいうものの、なぜ桜木町以西で電車を停めないといけなかったのだろうか。

 閑話休題。バロック・オペラは、筆者にとって得意分野ではない。パーセルといえば「ディドとエネアス」くらいはCDをもっているが、むしろブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のイメージが強いという程度の認識で、わずか36歳の若さで世を去ったこともよく知らなかった。だが、県立音楽堂のバロック・オペラでは、2006年にヴィヴァルディの「バヤゼット」の演奏を聴いて度肝を抜かれたので、食わず嫌いはしないようにしている。この公演は価格がリーズナブルなのが魅力だ。

 演奏時間約80分。本来は、17世紀の英国の詩人・劇作家ジョン・ドライデンの台本による芝居のなかで、儀式や戦闘の場面、魔法使いや妖精が登場するシーンだけに音楽がついているという構成らしい。芝居の部分を全面的に再現すると、5時間ほどかかるそうだ。この日の上演では、舞台の中央に20数人の管弦楽が陣取り、その後ろ左右に18人の合唱が配され、上手と下手に簡単な舞台がこしらえられて、そこにソロ歌手が登場したり、バレエダンサーが登場したりする。舞台の上の反響板に字幕が映し出され、その下に正方形のスクリーンのような箱がつくられ、そこに絵や文字が投影されたり、背後で踊るダンサーが影絵のように映し出されたりする。

 バレエダンサーを登場させ、17世紀に上演された芝居の雰囲気を伝えつつも、ル・コンセール・スピリテュエルの演奏を楽しんでもらおうという、構成の仕方は悪くない。だが、伊藤隆浩の演出は、作品の娯楽性や官能的要素を強調しようとするあまり、絵や文字でやたらに説明しすぎる。以前の「バヤゼット」の時も伊藤の演出で、ただ登場人物を交通整理しただけのような舞台だったが、あの方がまだマシだった。例えば今回、戦闘の場面のところで、わざわざ「9.11」などの文字をだすなどは、必要だったのか。また、終幕の合唱で農民が「十分の一税」を上げようとする権力と聖職者たちを揶揄的に歌うところは、そのままで風刺であることが分かる内容なのに、あえてわざわざ「消費税アップ?」とか「事業仕分け、芸術も?」とかいうように「アーサー王」の内容と直接関係ない文字を映しだすのには興ざめした(演出上の政治風刺が悪いと言っているのではない。こういうベタな演出が興ざめということなので、念のため)。それなら、むしろ作品の情景描写の説明をした方がよかったのではないか。

 エルヴェ・ニケ指揮ル・コンセール・スピリテュエルの演奏は、いささか猥雑でにぎやかな作品世界をうかがわせるもので、17世紀の英国の劇場で聴かれていた音楽の雰囲気が味わえ、それはそれで魅力的だった。歌手はいずれも比較的に若手で、装飾音の巧さなど歌唱力でねじ伏せるというタイプではないが、当時の市民階級に親しまれた劇音楽の雰囲気を伝える点では、作品の性格にうまく合致していたように思われる。

【データ】
 音楽監督・指揮:エルヴェ・ニケ
 演出・構成・字幕翻訳:伊藤隆浩

 ソプラノ:アナ・マリア・ラビン
 ソプラノ:シャンタル・サントン=ジェフェリー
 カウンター・テナー:アーウィン・エイロス
 バリトン:マーク・キャラハン
 バス:ジョアン・フェルナンデス
 管弦楽・合唱:ル・コンセール・スピリテュエル
 バレエ:東京シティ・バレエ団
  (上山千奈、小林洋壱、安藤紗織、松浦美穂、清水愛恵、岡博美)

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このオペラ、滞独中に地元オペラハウスで上演があったので観に行ったことがあります。読み替えやかなり音楽無しで演劇だけで舞台進行する時間も多く、内容は全くわからずじまいでした。横浜で上演があったとは知りませんでした! しかし、知っていたとしても東海道線が止まっていたので行けなかったのかもしれません、、。

2010/2/28(日) 午後 9:59 dom*6w*g*er

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> リエンツィ様。記事に書いたように、「アーサー王」は演劇の部分を全部やると5時間ほどかかるそうですが、今回はほぼ音楽部分にしぼって80分ほどだったので、まったく予習をしていなくてもそれなりに楽しめました。
エルヴェ・ニケ&ル・コンセール・スピリテュエルの公演は、2009年3月に仏モンペリエ国立歌劇場で上演されたものがDVD化されています。

2010/2/28(日) 午後 10:12 [ dsch1963 ]

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こんちには。最後のシャコンヌをカーテンコールにつかったあたりはセンスが良いところでしたが、これは演出家というよりニケのアイデアなのかもしれませんね。その他はまったく不要な演出と感じました。失礼いたしました。

2010/3/6(土) 午後 1:27 [ - ]

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> puumaa2様。確かに最後の所は良いセンスでしたが、ご指摘のように、エルヴェ・ニケのアイデアのような気がしますね。その他の演出については、スケートする合唱団は許容範囲かな、とも思っていますが…。(苦笑)

2010/3/7(日) 午前 2:00 [ dsch1963 ]


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