楽興の時・音の絵

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■新国立劇場オペラ公演――R.シュトラウス「影のない女」
2010年5月26日(水)18時開演 新国立劇場オペラパレス

 最近仕事が多忙で、更新が滞りがちになっており、ずいぶん遅れてのエントリーになってしまったが、新国立劇場のニュー・プロダクション「影のない女」を観た。ところで、男はどこか「影のある女」に心ひかれる部分があるのかもしれない。管理人の場合、「影のある女」ということで思い出されるのは、往年のテレビドラマ「寺内貫太郎一家」で篠ひろ子が演じていた小料理屋の女将・涼子さんだ。どこか訳ありの感じを漂わせた藤竜也との間に漂う雰囲気が絶妙で、おとなの男女の世界を垣間見た気がした。

 R.シュトラウスの「影のない女」は、今みてきた「影のある女」とは何の関係もない。ここでいう「影」とは、子どもを産み母親となることのできる能力のことを指している。人間界の皇帝の妻=皇后となった、霊界の王カイコバートの娘のことだ。本来、この皇后が作品の中心に座るはずだろう。だが、今回の演出のドニ・クリエフは、皇后ではなく、バラクの妻を中心に据えるという解釈にたっていた。そして、公演パンフレットのプロダクションノートによれば、バラクの妻は「現実から逃げるため、『こうであって欲しい』という妄想を脳内に構築している一人」であり、「カモシカに姿を変えた皇后、皇帝、皇后を支える乳母、鷹などといったキャラクターはすべて、彼女の幻想の産物であるというのが私の解釈」だとしていた。また「バラクと妻との間には2年半の結婚生活でただの一度も肉体関係がなかったと設定するべきです」とものべていた。

 しかし、この演出のコンセプトは必ずしも成功していない。二人の間に関係がなかったというのは歌詞からみても無理がある。それに、中心に据えられたバラクの妻は、もともとヒステリックな面もあるが可愛げもある人物だと思うが、この演出では終始ヒステリックなだけで、登場人物としてもまったく共感できないキャラクターにさせられている。

 演奏面でも、こうした演出とあいまって、バラクの妻を演じたステファニー・フリーデは、声は良く飛んではくるが、終始一本調子のヒステリックな歌い方で、聴き疲れするだけ。乳母のジェーン・ヘンシェルも、声は大きいが、ヴィヴラート過多の古いタイプの歌い方。これにたいして女声陣では、皇后役のエミリー・マギーが透明感のある伸びやかな歌唱で、特に第3幕が素晴らしかった。男声陣では、皇帝役のミヒャエル・バーバは、終始ぶら下がり気味で安定感に欠ける。一方、バラクを演じたラルフ・ルーカスは、妻に比べてやや存在感に欠けるが、堅実な歌唱を聴かせた。

 エーリッヒ・ヴェヒターという指揮者は、長くドイツのリューベック歌劇場音楽監督を務め、2002年よりデトモルト州立歌劇場の音楽監督に就任しているそうだが、良くも悪くも手堅い。どちらかといえば、筋肉質の音楽づくりで、弱音でのR.シュトラウスらしい艶やかさをもっとほしいという感想をもった。もっとも、日本ではめったに演奏されない(1992年のバイエルン州立歌劇場来日公演以来だという)作品を新国立劇場で取り上げた点は歓迎しておきたい。

【データ】
 指揮:エーリッヒ・ヴェヒター
 演出・美術・衣裳・照明:ドニ・クリエフ
 合唱指揮:三澤洋史
 音楽ヘッドコーチ:石坂宏
 舞台監督:大仁田雅彦

 皇帝:ミヒャエル・バーバ
 皇后:エミリー・マギー
 乳母:ジェーン・ヘンシェル
 霊界の使者:平野和
 宮殿の門衛:平井香織
 若い男:高野二郎
 鷹の声:大隅智佳子
 バラク:ラルフ・ルーカス
 バラクの妻:ステファニー・フリーデ
 バラクの兄弟たち:青戸知、大澤健、加茂下稔
 天上からの声:村松桂子
 生まれざる子どもたちの声/声:
  吉原圭子、國光ともこ、黒澤明子、池田香織、村松桂子、三輪陽子
 侍女:吉原圭子、國光ともこ、池田香織
 夜番たちの声:青戸知、大久保光哉、山下浩司

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こんばんは。これぐらいはコメントしなくっちゃ。

この公演は、賛否両論ありますが、私は20日初日だったので、良くありませんでした。厳しい意見には賛成です。

私は4階3列という、ほとんど最後方で聴いていて、バラクの妻のみ声に威力がありました。ということは、1階で聴いたら、声が大きすぎるのかもしれません。

この役の弁護をすると、先に聴いた、ギネス・ジョーンズとジャニス・マーティンという大歌手も「終始一本調子のヒステリックな歌い方」の傾向でした。

2010/6/6(日) 午後 7:18 nike

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> にけ様、お久しぶりです。コメントとTBをいただき、ありがとうございます。拙者の周囲も賛否両論分かれていますが、エミリー・マギーは総じて評判が良いようです。
拙者の場合、にけさんほどこの作品を聴きこんでいるわけではないため的外れなところがあるかもしれず、ジャニス・マーティンの歌唱もDVDで知るのみですが、強靭だけれどもどこか可愛げがあったように思っています。この印象の違いは、多分に演出の要素が大きいかもしれませんね。なお、拙者は3階席でした。

2010/6/6(日) 午後 8:36 [ dsch1963 ]

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