楽興の時・音の絵

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■新国立劇場オペラ公演――U.ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」
2010年11月18日(木)19時開演 新国立劇場オペラパレス

 アンドレア・シェニエは、フランス革命期の実在の人物をモデルとしたオペラ。アンドレアは、フランス名前アンドレのイタリア読み。1762年生まれで、詩人として活躍したが、政治的には穏健な立憲君主主義を説くフイヤン派(ラファイエット派)に属した。そのため、マラー、ダントン、ロベスピエールなど共和主義を説くジャコバン派とは次第に対立を強めた。その後、ロベスピエールによる「ジャコバン独裁」が確立したもとで逮捕され、1794年7月25日に処刑された。ちなみに、その3日後の7月28日には、反ロベスピエール派によるクーデタがおこり、ロベスピエールやサン=ジュストが処刑されるにいたる。

 イタリアの作曲家ウンベルト・ジョルダーノは、1867年に生まれ、第2次世界大戦後の1948年に81歳で亡くなっている。今回上演された「アンドレア・シェニエ」は、彼の代表作と言ってよいが、作曲されたのは1896年というから、29歳の時の作品だった。この若さで後世に残る大作を書いたことには、あらためて驚かされる。逆にいえば、後半生は必ずしも成功作を生み出せなかったということでもある。公演パンフレットに収録されている水谷彰良氏の解説「ジョルダーノの生涯と作品」によると、生涯に11のオペラを残しているが、30代までの5作品はいわゆるヴェリズモ作品で悲劇的な物語だ。ところが40代以降は、一転して喜劇的な作品に転換していく。しかし、時代はオペラの人気自体が翳りを見せていく時期と重なっており、後半の喜劇作品はあまり成功していない。1929年の「王様」を最後にオペラの作曲をできなくなり、ムッソリーニに厚遇され、ファシスト政権10周年讃歌(1933年)や、ムッソリーニを作者とする劇「チェーザレ」の付随音楽(1939年)をつくったというような経歴もある。だが、戦後はファシズム協力者という批判を辛うじてまぬかれた。

 今回の上演は、2005年に初演されたフィリップ・アルロー演出の舞台の再演。5年前も見ているが、当時も随分あざとい演出だと思っていたことを、今回も再確認することになった。アルロー演出は時代の置き換えや読み替えはしていない。舞台転換の際の幕は斜めに切れ目が入っていて、それがフランス革命の断頭台をイメージさせる。トリコロールカラーを意識した照明が多用され、斜めになった壁を組み合わせたような抽象的な装置が舞台中央にこしらえられ、それが回り舞台でくるくると回転することによって、時代の荒波に翻弄される人々の姿をシンボリックに描き出す。そういう点はよいとして、やたらギロチンを意識させる演出になっているのは、いかがなものか。1幕ごとに幕切れでは「シャキーン」というギロチンの刃が落ちる音をSE(サウンドエフェクト)として流すのは説明過剰だし、1幕と2幕の間にはCGで断頭台が「細胞分裂」のように1から2、2から4、4から8と増殖していき、64台までに増える様子が映し出される。このあたりの描き方が、いかにも訳知りという感じだった。第2幕の最後には、ジャコバン派を支持する民衆のなかに、第1幕の舞踏会でガヴォットを踊っていた貴族がにわかに三色旗を身にまとい、革命支持勢力のような顔をして現われている様子も、戯画的に描かれる。舞台から立ちあがってくるのは、民衆の熱狂に浮かされて先鋭化し、陰惨な姿を呈していくという角度からの「フランス革命」像だ。すなわち、アルロー演出は、フランス革命それ自体を事実上パロディー化している。第4幕の幕切れで、民衆たちは4人の子どもたちを除いてすべて倒れ、4人の子どもたちが三色旗をもって舞台奥に消え去っていく。演出家は「終幕では未来への展望を象徴する存在も取り入れています」と述べていたようで、今回のパンフレットにも再録されているが、率直にいってこの幕切れは、文字通りフランス革命は児戯に等しいと結論づけているようにも見える。

 演奏について。プレミエ公演のときは、歌手の時がいま一つだった印象がある。今回は、中心的な歌手に人が揃い、音楽的にはなかなか楽しめた。何といっても、マッダレーナ役のノルマ・ファンティーニが素晴らしい。声量もあるし、なにより役柄になりきって、場面ごとに実に自然に感情を乗せた歌唱ができている。標題役のミハイル・アガフォノフは、ロシア出身なのでイタリア・オペラのテノールとしてはいささか声が硬いし、第1幕のアリアはピリッとしない出来だったが、次第に調子を上げた。第2幕のファンティーニとの二重唱は絶品。ジェラール役のアルベルト・ガザーレは、歌唱や演技がやや一本調子のところがあるが、柔らかい声質で安定している。日本人歌手もまずまず健闘していて、ルーシェ役の成田博之、密偵の高橋淳、マデロン役の竹本節子などが印象に残った。

 フレデリック・シャスランの指揮は、もう少し血湧き肉踊るというところがあってもよいだろうが、東フィルから艶やかな響きをひきだし、全体を手堅くまとめていた。

【データ】
 指揮:フレデリック・シャスラン
 演出・美術・照明:フィリップ・アルロー

 アンドレア・シェニエ:ミハイル・アガフォノフ
 マッダレーナ:ノルマ・ファンティーニ
 ジェラール:アルベルト・ガザーレ
 ルーシェ:成田博之
 密偵:高橋淳
 コワニー伯爵夫人:森山京子
 ベルシ:山下牧子
 マデロン:竹本節子
 マテュー:大久保眞
 フレヴィル:萩原潤
 修道院長:加茂下稔
 フーキエ・タンヴィル:小林由樹
 デュマ:大森いちえい
 家令・シュミット:大澤建

 合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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