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■映画「ヴィットリオ広場のオーケストラ」
2007年11月3日(土・祝) 渋谷シアター・イメージ・フォーラム
痛快なドキュメンタリー映画だ。イタリアの首都・ローマ旧市街のヴィットリオ広場周辺には、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカからの移民が多く暮らす。一部は地元マフィアと結託したアジアン・マフィアだが、圧倒的多数は「先進国」に仕事を求め、あるいは母国の抑圧体制から逃れてきた人たちだ。映画の中心人物マリオはバンドのキーボード奏者で、この地区に住む移民たちの多彩な音楽を結びあわせる民族楽器のオーケストラの結成を思い立つ。一方、映画作家のA・フェッレンテも、街の中心の由緒ある「アポロ劇場」の荒廃に心を痛め、広場を再生させようとしている。この二人を中心とする仲間たちが、劇場を音楽や映画の多様な交流の場にするために「アポロ11協会」なる団体を立ち上げ、劇場救済キャンペーンのライブコンサートを企画した。2002年のことだ。
おりしも右派のベルルスコーニ政権下、排外主義的風潮の高まりのなかで「ボッシ=フィーニ移民法」(*)が制定され、労働ビザのない移民は即時強制退去という強硬手段がとられるようになっていた。オーケストラのメンバー集めに苦労していた「協会」は、移民排斥反対のデモやストライキとも連帯していく。集会のスローガンとして「アフガン派兵のために、移民の医療をカットするな」といった主張が掲げられていることは、今の日本の政治情勢とも重なって見えてくる。
楽団に集まってきたメンバーの母国は、エクアドル、キューバ、米国、セネガル、チュニジア、エジプト、インド、等々。登場する楽器も、ケーナやサンポーニャ、ツィンバロン、シタールのようになじみ深いものから、カホン、ジェンベ、タブラなどの打楽器、アラブ・ヴァイオリン、ハルモニウムといった鍵盤楽器など珍しいものもある。言語も文化も違うが、音楽が共通言語になる様子が印象深く映し出される。
メンバーたちはときに対立しながらも、02年11月、コンサートを成功させる。その結果、ローマ市当局は劇場を買い上げ、改修を決定した。まさに現実政治を動かすキャンペーンとなったわけだ。楽団はその後、メンバーの出入りを伴いつつ活動を継続している。こうした活動の様子を映画は淡々と描くが、そこに貫かれる楽天性がなんとも微笑ましい。
ヨーロッパの移民問題の深刻さは「ベルリン・フィルと子どもたち」でも描かれていたが、新自由主義的グローバリズムのもとで広がりかねない排外主義的な風潮にたいして、価値観や文化の違いをこえた草の根の社会的連帯のたくましさを感じさせる映画だ。
*ボッシ=フィーニ移民法とは
北部同盟党首ボッシと国民同盟党首フィーニが、移民排斥のため「労働契約がない限り入国させない、強制的に退去させる」という移民法を推進したことからこの名前で呼ばれる。憲法裁判所は、部分的違憲判決をだしている。(パンフレットより)
【データ】
原題:L’orchestra di Piazza Vittorio
製作年:2006年
製作国:イタリア
監督・脚本:アゴスティーノ・フェッレンテ
キャスト:マリオ・トロンコ
ディーナ・カポツィオ、ほか多数
音楽:ヴィットリオ広場のオーケストラ
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