スコアブック使いと少年

「全国野球場巡り」(2017現代書館)の著者です。旅、読んだ本を語ります。

男たちの旅路

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(ドラマ)男たちの旅路・第三話「猟銃」  20110615

脚本・山田太一。傑作である。DVDで見た。

(あらすじ)
主人公・鶴田浩二司令補の勤務するガードマン会社が警備するビルばかりに
何者かによって猟銃が撃ち込まれる事件が相次ぐ。犯人の狙いは何か?

その頃、鶴田の頑固な人間性に嫌気がさし、ガードマン会社を退社した
森田健作、水谷豊、桃井かおりの三人は無為な日々を過ごしていた。
特に森田は、自分の母親が若いころ鶴田と知り合いだったと聞いて、
どんな知り合いだったのかと気になって仕方がない。

森田はついに母親(久我美子)を問い詰める。
久我は、これでも若いころはモテたのよ、と話し始めた……

母の話を聞いた森田、水谷、桃井の三人は鶴田を訪ねる。
鶴田は「お前らもヒマだな」と呆れながらも、観念したのか、
これまで語りたがらなかった久我との経緯を三人に語って聞かせた。

それは戦争末期、飛行兵だった鶴田がいつ特攻隊として出撃させられる
かもしれない頃の話だった。
鶴田とその親友は、勤労奉仕に来ていた女学生の久我に一目惚れした。
鶴田とその親友は、ともに久我と結婚したいという気持ちを譲れず、
殴り合いで決着をつけた。鶴田が敗れ、親友が勝った。
ところが、親友は久我に求婚する勇気が出なかった。いずれ死ぬ身だからと。
そして鶴田に、「お前生き残ったら久我と結婚して幸せにしてやってくれ」
と言った。そして親友は戦死し、鶴田は生き残った。
鶴田は自分だけが幸せになる気にはなれず、久我を愛していたが結婚しなかった、
という。

水谷はその話を笑い飛ばす。死んだ親友に義理立てして女と別れるなんて
信じられないね!と。話がキレイすぎて信じられないね。
鶴田は言い返す。じゃあお前らは汚なきゃ信じるのか。ズルきゃ信じるのか。
お前ら若い奴はそうやってタカをくくっているが、こういう人間だっているんだ。
30年前に死んだ親友を忘れない人間だっているんだ。
人間みなが、得なほうに転ぶような、人間はそんな単純なもんじゃないんだ、と。
森田が云う。それならウチの父親が可哀そうだ。母が貴方を愛し続けていたために
父は母から愛されなかった。貴方が母と結婚していれば、父は優しい妻と
出会えたかもしれないのに!
鶴田は言う「そんなことはない。お母さんはもう忘れているよ」
森田は言い返す「貴方が30年前の親友を忘れないように、母も貴方を忘れて
いないんです」
鶴田は何も言えなくなる。

鶴田の話に心打たれた桃井は、また鶴田のもとで働きたいと、
ガードマン会社に戻りたくなる。
それで深夜、森田、水谷とともに鶴田の警備現場に会いに行くが、
鶴田ともども猟銃強盗事件に巻き込まれ、監禁されてしまう。
犯人は、水谷顔負けの今風の考え方の若者。
わずかの給料で、生命と引き換えにするなんて馬鹿らしいじゃないか、
どんどん金庫の開け方とか警備装置の解除法とかしゃべっちまいなよ、と
鶴田らガードマン、それに森田ら一般人に猟銃を突きつけて脅す。
鶴田はそこでも「タカをくくるな。誇りをもって仕事している人間だって
いるんだ」と犯人に説教するが、逆上した犯人に猟銃で撃たれてしまう。
反抗しなかった水谷、森田、桃井だが、ついに桃井が口火を切り、
犯人に反抗、みごと犯人を取り押さえる。三人は鶴田が言っていた「人間が
損得では動かない状況」を体験した。あらためて鶴田に深く影響を受ける三人。

後日。水谷と桃井はガードマンに戻り、森田は別の道を歩み始めた。(おわり)

(感想)
中年ガンコ親父の鶴田と、若い世代の対立が面白いこのドラマ。
この回では、世の中に、人生に、人間に、「タカをくくる」、
「若い世代の醒めた態度」と鶴田が対決します。
この回は第1シリーズの最終回ということもあって、
このシリーズのメインテーマをぶつけたといっていいでしょう。

この回の物語の構造は、

1、ナメた態度の若者がいる。
2、若者は年長者に諭されるが、バカにして聞き入れない。
3、若者は、自分よりも、もっとナメた態度のヤツと出会う。
  (若者は自分の姿を鏡で見る)
4、若者は改心し、年長者の言っていたことを理解する。(成長する)

というようなものです。非常に基本通りであることがわかります。
だからこそ面白いのです。

中盤の、鶴田と若者三人のディスカッション場面が面白すぎて、
終盤の強盗事件のくだりが物足りなく思えるほどでした。
やはりこのシリーズは面白いです。

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男たちの旅路1「非常階段」 080427


第1話。シナリオ集で読む。山田太一・作。

(概略)
舞台はとある警備会社。新しくガードマンとして採用された
人々の中に、竜夫(森田健作)と陽平(水谷豊)がいる。

新人研修に現われた、50歳のガードマン・吉岡司令補(鶴田浩二)
は、新人たちの中から6人の男を選び、
「私を取り押さえてみろ」と命じる。竜夫、陽平含む6人が
飛びかかるが、吉岡は6人を簡単にのす。
「君たちは弱いんだ。ガードマンの仕事をする上で
そのことを忘れるな」と訓戒する。

竜夫は大きな会社に定職があったが、高卒なので辞め、
ガードマンになることにした男。吉岡は竜夫に
「お母さんは反対しなかったか?」と聞く。

陽平は調子のいい若者。

ある時、吉岡、竜夫、陽平が3人一組になり、
高層ビルの夜間警備を担当することになる。
そのビルは飛び降り自殺が相次いでおり、それを防いで
ほしいというのが依頼主からの要望だ。

3人は警備に入るが、数週間何も起きない。
勤務の途中、吉岡はそれとなく竜夫に竜夫の母親について
訊く。なぜ吉岡は母に関心を持つのか?不審に思う竜夫。

そんなある夜、ビルに女が侵入する。自殺しようとする
悦子(桃井かおり)だった。
3人は緊迫の警備行動の末、窓拭き用のゴンドラに隠れている
悦子を発見。吉岡が「自殺はやめろ」と説得する。
それでも悦子は「死にたい」という。吉岡は、「30年前の
戦争では、死にたくなくても死ななければならなかった連中も
いたんだぞ。お前はギリギリまで生きてみたのか」などと
説得するが悦子は聞き入れない。吉岡はキレ、
「仕事だから自殺してほしくないんだ。死ぬならよそのビルで
死んでくれ」と言ってしまう。
飛び降りる悦子。その手をつかみ、決死の行動で助ける吉岡。
悦子を安全な場所に引き上げた吉岡は、悦子をめちゃくちゃに
殴る。

吉岡は竜夫と陽平に心境を話す。「戦争中、俺は特攻隊だった。
周りには、殺されるんじゃない、自分で死なせられる仲間が
いっぱいいた。その気持ちが分かるか? 俺はフワフワ生きてる
若い奴が大嫌いなんだ」と言う。
竜夫も陽平も、そんな吉岡に「俺達はあんたを嫌いじゃないスよ」
と言うのだった。

(感想)
第1話だけに、基本設定紹介編。

吉岡の「今の若い奴の生き方が嫌いだ」という考え方は偏見ではあるのだが、
若者側にしてみれば、自信を以って反論できない部分もある。
(若者サイドにも自分たちの生き方に自信を持てない部分がある。
いっぽう吉岡にも、自分の若者への見方は偏っていて
現代では受け入れられない見方という自覚がある)

このドラマは、偏見とばかりは言いきれないこの「微妙なゾーン」で
戦中派の吉岡と、若者たちが考え方を戦わせていくことになる。

なんと面白いドラマなんでしょう。感心しちゃう。

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男たちの旅路9「別離」 080425

シナリオを読む。山田太一 作。

(概略)
舞台は警備会社。
ガードマンの陽平(水谷豊)は同僚の悦子23歳(桃井かおり)に
結婚を申し込むが、悦子は断った。

あきらめられない陽平は、上司の吉岡50歳(鶴田浩二)を訪ね、
「『考え直してもらえないか』と悦子に話してくれ」と頼む。
吉岡は引き受ける。

吉岡は豪華なレストランに悦子を誘い、陽平からの伝言を
伝えるが、悦子の返事はノー。悦子は何か悩んでいるようだ。

その帰り、悦子は急に「吉岡のアパートに行きたい」と
言い出す。堅物の吉岡は困るが、悦子は部屋に来る。
そこで悦子は意外な話をした。なんと悦子は白血病で
ガードマンもやめないといけないという。
悦子は唯一の身寄りである母親と不仲。吉岡は悦子を支える決意をする。
悦子は「この部屋に泊まりたい」と言い、吉岡は困り果てるが
泊めてやった。

翌朝、陽平が吉岡のアパートを訪ね、布団の中の悦子を見る。
怒り狂う陽平。吉岡に「見損なったよ」と言い帰って行く。

悦子は吉岡のアパートで暮らし始めた。
(吉岡は堅物なので悦子に手を出してはいない)
吉岡は、悦子の看病と仕事が大変で、仕事でもミスを犯す。
そして、会社にいた女を吉岡が囲っているという噂が社内で
立ってしまう。そのことを言いふらしたのは陽平だった。

警備会社の社長(池部良)は吉岡を呑みに誘う。
社長は「社員の手前、厳しい処分をするけど、俺は正直ほっとしたよ。
堅物のあんたが若い娘に入れあげるとはね」と言う。
社長は吉岡の戦友。
吉岡は、未婚のまま戦死した特攻隊の仲間たちに義理を立てて
幸せな家庭を築くことを避け、一人きりで生きてきたのだった。
社長は悦子の病気の話を聞く。そして吉岡に「その娘を抱いてやれ。
結婚の約束をしてやれ」と助言する。

悦子の病状は悪化し、ついに入院する。
そしてますます悪くなり、警備会社の同僚たちも駆けつけ
すべての事情を知る。悦子の母親も病院に呼ばれる。
母親は吉岡に対して「なぜ今まで知らせてくれなかったんだ!」
と怒る。
最後の最後、悦子は吉岡一人だけを枕元に呼ぶ。
吉岡は悦子にプロポーズする。悦子は喜ぶ。その夜悦子は死ぬ。

数日後、吉岡は誰にも行き先を告げずいずこかへ旅立ってしまう。

(感想)
この回も、メッセージ色はさほど無く、ストーリーで見せる回ですが、
鶴田浩二氏と桃井かおり氏の演技が素晴らしく、
映像を見ながらボロボロ泣いてしまった憶えがあります。
たぶん今見ても泣いてしまうでしょう。

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男たちの旅路11「影の領域」 080423

シナリオ集で読む。作・山田太一。

(概略)
根室から帰った吉岡(演・鶴田浩二)は元の警備会社に復職する。
ただし、元のように司令補としての復帰は辞退し、
ヒラの警備員として働き始める。
根室から吉岡とともに上京した清水健太郎と、その妹・岸本加世子も
その警備会社に就職した。

吉岡を戻すことに尽力した陽平(演・水谷豊)は姿を消した。
吉岡とベタベタした付き合いはしたくないといって。
(これは実は演じる水谷豊のスケジュールの都合だったらしい)

警備会社では、吉岡不在の間に
よその警備会社から来たという磯田(梅宮辰夫)という
新しい司令補が幅を利かせ若い社員の人気を集めていた。
清水姉妹も、地味な吉岡よりも磯田のほうがかっこいいじゃん
と感じる。

ところが磯田は不正をしていた。
その不正は巧妙な手段で行なわれ、損害は保険でカバーされる
ので、誰も損をしない。
磯田は警備会社の大口の取引先からその不正を持ちかけられ、
警備会社のために、その不正を引き受けた。
(断れば警備会社は契約を打ち切られ損害となる)
磯田はそのことで利益を得ていない。純粋に警備会社のために
融通を利かせてやったということなのだ。

清水はその不正に気づき、磯田から事情を聞かされる。
「こういうことは世間にはよくあることなんだ。
誰も損をしないんだからいいじゃないか。これをつまらぬ
正義感で明らかにしたら、警備会社も困るし取引先だって
困るんだ。黙っていてくれ」と。

清水は警備会社の社長(池部良)に報告するか悩む。
妹はそのことを知り兄と一緒に悩む。

清水は迷った末、社長に報告する。しかし社長の答えは
「それは知っている。黙っていてくれ」というものだった。

清水姉妹は「しょせん世の中そういうものか〜」と感じる。
吉岡は「清水姉妹に言い含めてくれ」と社長に頼まれ姉妹の
もとを訪れる。
吉岡は「ことが明らかになると会社が困る」という会社の
言い分を伝えるが、続けて「しかし私(吉岡)の気持は違う」と言う。

吉岡は翌日 清水姉妹を連れて社長に会う。そこには磯田もいた。
吉岡は、「不正を見過ごすべきではない」と社長に言う。
「世の中 そんなもんだ」とたかをくくったような磯田の
考え方も気に食わないと磯田に言う。
社長も目を覚まし、磯田をクビにする。
磯田は吉岡を殴り、会社を去る。
清水姉妹は吉岡に尊敬の念を抱く。

(感想)
この話は、私が「男たちの旅路」を好きな理由がハッキリ出ている。

世間の多くの人が「世の中ってそういうもんじゃん」と
甘えのうちに容認している問題点を一刀両断しているから
好きなのだ。
「生きるってそういうもんじゃないだろ よく考えたら
それは正しいことじゃないってわかることだろ」
とメッセージしてくるドラマが私は好きなのだ。

初期のウルトラシリーズもそうだけど。

この場合、打破される問題点は、
世の中の多くの人 みんなが感じていて、そのうま味を享受している
ような問題点であればあるほど、そのドラマがもつ「訴える力」は
より強くなる。
そういう、「世間の多くの人」のウシロメタイ部分を的確に突くから
私は「男たちの旅路」が好きなんだ。

何かドラマを作るなら、そういうふうに「世の中の人がいいそうな
こと」を打破するドラマでないと、作る意味がない。

誰もが実は持っている心の中のズルさとか弱さとか、
そういうものを問うていくドラマっていいなあと思う。

「1リットルの涙」でも、自分の息子が、将来体が動かなくなる
難病の少女と恋に落ちていることを知った医者が
「あの子とつきあうな」と息子に言おうかどうか迷うという場面が
あった。あの設定などはもっと深く掘り下げれば、
世間の人が陥りやすい部分を鋭く突く展開になったと思う。
そういう展開には深入りしなかったけど。

でもこういうドラマの場合、誰に正論をいわせるか?が難しい。
正論を言って、人々を納得させるだけの人物設定は難しいのだ。
聖人君子なんかどこにも実在しないということが知れ渡っているからだ。
「男たちの旅路」の場合は特攻隊の生き残り。
「銀嶺の果て」の場合は、山男。
いずれも「正論言わせ人」を上手い所に見つけている。

僕の尊敬する先生は「世の中を客観的に見る視点がないとモノなんか
書けないよ」といつも言っているが、それはそういうことなんだと
思う。

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男たちの旅路10「流氷」 080421

シナリオ集所載の脚本を読む。山田太一作。

(概略)
悦子と死に別れた吉岡(演・鶴田浩二)が
姿を消してから1年半が過ぎた。

吉岡の部下だった陽平は北海道に向かっていた。
実は吉岡から警備会社の社長に葉書が来て、
その消印が根室だったのだ。(現住所は書いていない)
陽平は社長から吉岡を探し出し連れ帰るようにと
命じられて北海道に来たのだ。

陽平は根室で、船が火事になり職を失った若い漁師・
清水と出会う。そして清水と一緒に吉岡を探し回る。

吉岡は場末の食堂で皿洗いをしてひっそり暮らしていた。
東京に戻るよう説得する陽平に、吉岡は
「今の俺には皿洗いが合ってる。それに、
死んだ人間を一年や二年で忘れるような生き方は
もうしたくないんだ」と断る。

陽平と一緒に吉岡を探し続けた清水は、陽平が
口で言うのとは反対に吉岡にホレこんでいること、
そして自分も吉岡に惹かれるものを感じていた。
清水が陽平の思いを代弁して吉岡に伝えたが、
翌日 吉岡はいなくなっていた。

陽平と、自分も東京に出る決意をした清水が
根室駅で列車に乗ると、そこには吉岡の姿が。
吉岡も東京へ戻る決意をしたのだった。

(感想)
消えた吉岡を東京に戻すという難事業をやってのける回なので
(第4期シリーズの最初の作品)
仕方ないとはいえ、他の回に比べると、
ストーリーだけで運ばれているような印象を受ける回。
メッセージ性はこのシリーズの中では無いほうといえる。
でも充分に面白いのだが。

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