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サブプライムローン問題がアメリカ一国の問題(ディバティブがなければ、住宅ローンの貸し倒れの問題で終わっていました)に留まらずに世界中に飛び火したのはデリバティブという日本語だと金融派生商品が作られては売られて世界に広まったためです。
そこでデリバティブとは何かから見ていきたいと思います。経済書などを見ると、定義が以下のように書いてあります。「一般的な金融取引(借り入れ、預金、債券売買等)や、実物商品の相場変動によるリスクを回避するため、金融工学を活用し作られた金融商品の総称」。
デリバティブの種類としては、代表的なものとして、先物取引やスワップ取引、オプション取引などがあり、これらの目的は、数多くある経済取引において、将来にわたる価格変動を回避(ヘッジ)することにあります。ただ、よっぽど経済に詳しくないとこれだけではわからないと思いますので、身近な例題から取り上げれば少しはわかり易いかと思います。そこで先物取引の中の原油の先物取引を例にとっていこうかと思います。
新聞などでWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)というアルファベット3文字を見たことがあるかと思いますが(WTI、1バレル○○ドル)、このWTIの指数が世界の原油価格の指標となっています。春からの原油価格急騰はこのWTIに資金が大量に流れ込んだために起きました。この急騰する原油価格の大本がニューヨークで取引される原油先物相場なのです。
先物相場で取引されるのは、現物ではなく、将来の一定日時に一定の価格で売買できる“権利”です。例えば、現時点で原油1バレル100ドルであるとし、A社は一年後に原油100バレルの需要を見込んだとします。A社はコストの関係上1バレル120ドル以上になると赤字で元が取れなくなります。将来の原油価格上昇のリスクを回避するため、A社は原油先物市場で原油を100バレル購入する契約を結びます。これが「買建玉」と呼ばれる商品先物のデリバティブ取引です。逆に売る契約を結べば「売建玉」になります。
通常であれば1バレル100ドルの原油を100バレル購入するわけですから、1万ドルの支払いになりますが、先物取引は証拠金取引ですから、実際に契約時に支払うのは代金の一部(例えば千ドル)で良いのです。
1年後、原油価格が1バレル130ドルになっていたとします。でも、A社は契約どおり残金(契約時に千ドル払っていますから)の9千ドルを払えば、原油を1バレル100ドルで引き渡してもらえます。通常の取引では130ドルで買う羽目になり、赤字に陥るところでしたが、先物取引によってそのリスクを回避できたわけです。
ただ、逆に原油価格が70ドルであった場合、A社は本来なら市場から70ドル×100バレルの七千ドルで購入できるところを先の契約どおり一万ドルで購入することを強いられます。このケースでは三千ドルの損失となります。ただ、先物取引はあらかじめ定められた期日を待たないで、期間内に反対売買をして差金決済することは可能です。上記の例は単純化しただけで、実際は買建玉・売建玉を持つ両建てなどして、価格が下落した時の備えはしています。また、先物取引の契約のほとんどは、現物を受け取らずに、転売などするのがほとんどです。現物と先物の規模の違いが大きな歪みを生んでいるのは間違いないでしょう。
次にレバレッジという用語を説明したいと思います。このレバレッジはデリバティブの取引では、ほぼ自動的にその機能が働きます。意味は、「自分の資金に他人の資本を加えて利益を高めること」です。
一般的に先物取引の証拠金は取引総額の5〜10%であるとされますが、つまりは10%だとしたら、証拠金千ドルで一万ドル分の取引ができることになります。少ない自己資本で多額の取引ができるところにレバレッジの意味はあります。ただ、これはハイリスク・ハイリターンなのです。
一般の日本人の中で商品先物取引を何か胡散臭く感じる人は多いかと思います。それは先物取引そのものの問題というよりは、不勉強のままレバレッジを効かせて手持ちの資金の10倍、20倍の契約を結んでしまい、損失を出して追証を求められて破産する例を見てきているからだと思います。問題は、リスクや仕組みを知らないまま、巨額の取引をしてしまうところにあります。最近では、FXで何億円儲けたという本が出ていますが、その裏ではその逆もあるのです。手持ちの資金を有用に活用することは、間違ったことではありませんが、理性をなくした行動はすべてを失わせます。
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