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JALが福田元首相を激怒させたサウジの夜

「公的資金じゃダメ。法的整理でないと分からないんだよ、あの会社は」

 11月8日、サウジアラビア西部「ラービグ」で、日本の住友化学とサウジアラビア国営の「サウジ・アラムコ」とが共同で建設した巨大化学石油プラントの完工式が賑々しく執り行われた。

 日本からは住友グループ各社の幹部が顔を揃えたほか、東京電力会長、勝俣恒久をはじめとした財界人、また政界からも日本・UAE(アラブ首長国連邦)友好議員連盟会長を務めるなど中東諸国とパイプの太い前総理、福田康夫、自民党の前衆議院議長、河野洋平、そして、政府特使として前民主党衆議院議員、岩國哲人らが参列した。

 輸入される石油のおよそ80%をアラブ諸国に依存する日本にしてみれば、サウジアラビアとの友好関係維持は国策にほかならない。ただ、同国が日本にとって重要なのは、そればかりではない。

■ サウジ国王が出席を見合わせた理由

 以前この欄でも触れたように、UAEが当面4基の原子力発電所の導入を決定し、今まさに最終コンペを迎えている。

 石油産出国であるUAEがそうであるように、サウジアラビアも原発導入を検討している。石油は1滴まで売り物、つまり国に富をもたらす物であり、国内インフラは原発で賄うという考えからだ。

 その意味では同国の最高権力者である国王、アブドゥラー・ビン・アブドゥルアズィーズの出席も予定されていた完工式は、日本が国として日本の原発メーカーを売り込む絶好の機会であった。

 また2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比25%削減を世界的な公約とした鳩山内閣にとっても、国家としての取り組みを示すチャンスでもあった。

 だからこそ、サウジアラビア国王に見合った政府特使の派遣が重要だったのである。

 結果から言えば、政府特使として国際的には全く無名の岩國がやってくることを知り、サウジアラビア側は国王の出席を見合わせてしまった。そして、石油鉱物資源相、ヌアイミの出席にとどめてしまったのである。

■ 当初、経産省が推したのは元首相の福田康夫だった

 当初、経済産業省が官邸に推したのは元首相、福田康夫。

 「自民党の”戦犯”の1人とはいえ、中東へのパイプは太い。現地でも名前を知られた数少ない政治家であり、やはり首相経験者という肩書きは重い」(経済産業省幹部)

 けれども、首相の鳩山由紀夫が選んだのは岩國だった。なぜ岩國だったのだろうか? 首相周辺から聞こえて来たのはこんなものだった。

 「鳩山さんとは古い付き合いで...。それに岩國さんから『海外を相手にしたコンサルタントの仕事をしたいからよろしく』と言われていたから、鳩山さんはその辺を考慮したらしい」

 とても国策などとは呼べるようなものではなく、ただ単に鳩山の友人だからというのが、その理由のようだ。これぞ ”友愛”ということなのか?

 普天間基地移設問題で米国の信頼を決定的に失っている鳩山内閣は中東でも個人的な理由だけで信頼を損なってしまった。

■ 機内で3時間待たされた揚げ句.....

 失政と呼んでよい「岩國政府特使」問題の総仕上げに登場するのが、鳩山内閣のドタバタ劇を象徴する日本航空機である。

 完工式出席者は、住友化学が用意した全日本空輸、日航それぞれのチャーター機で帰国の途に就く。現地時間午後9時、全日空機が飛び立ち、その15分後に日航機が日本に向けて飛び立つ予定となっていた。"なっていた"のである。

 全日空機が飛び立ってからおよそ30分後、整備に時間がかかっている旨のアナウンスが機内に流れる。

 それから待たされること約3時間。時計の針は深夜0時を回り、日付が変わってしまった。機内で待つ福田らからは、いつまでも待たせる日航側の対応に苛立ち、怒りの声が出始める。

 とその時、機内に流れたアナウンスによって日航機がその日、飛び立てないことを福田らは知らされる。理由は修理に必要な機材が現地で調達できないからというものだった。

■ 飛ばない、いや、"飛べないJAL"

 福田らは再び入国検察を受け、ホテルに引き返さねばならなかった。しかし、ここでも問題が発生する。

 既に入国検査などを行うサウジアラビア税関の係官たちが帰宅した後だったのである。彼らが職場に戻ってくるまでは、ホテルにさえ向かえない。福田らの一行は再び空港ロビーで待ちぼうけを食う羽目に。


 怒りを通り越し、ぐったりとなった福田がホテルに着いたのは午前3時を回った頃。ほかの財界人らはさらに遅れること2時間。彼らがホテルのベッドに入ったのは、早暁の5時過ぎだった。

 飛ばない、いや、”飛べないJAL”。日航救済問題で公的資金の投入やむなしを民主党が言い始めるや福田は、サウジアラビアの夜を引き合いに出しては、

 「あのね、JALは公的資金なんかじゃダメですよ。徹底的にやらないと。そのためには法的整理ですよ。それじゃないと分からないんだよ、あの会社は」

 と、いつになくその口調は厳しかったという。

 与党民主党の当事者意識のなさ。野党自民党の反省のなさ。

「民主党の外交センスの欠如」「自民党の戦犯」「相変わらずの日航」――。何やら3大話のようだが、日本の政治状況がこのサウジアラビア訪問に凝縮されていた。(敬称略)


著者プロフィール
児玉 博(こだま・ひろし)
ノンフィクションライター。1959年生まれ。主な著書に『降臨―楽天・三木谷浩史の真実』『幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来』(共に日経BP社刊)などがある。

2009年11月30日(月)
NIKKEI BP Online



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