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筆洗  2013年10月2日  東京新聞

 毛利重就は、長州藩の中興の祖とされる。彼が断行した改革によって、長州は明治維新で躍動する礎を得た

▼その改革の一は、検地だった。土地の面積や生産高などを調査し直して、新たな徴税額を決める検地の必要性は、こう説かれたという。「(天災などで)田畠も状態が変化している…これは決して藩主の利益のためではなく、困窮農民の撫育(ぶいく)(救済)を意図している」(小川國治著『毛利重就』)

▼いくら大義を掲げても、実態は増税だ。重就は不満を封殺して断行する一方、検地で得た四万石余の新たな歳入は今で言う特別会計にして、一般会計の穴埋めには使うなと厳しい掟(おきて)を定めたという

▼天災の荒廃にあえぐ民がいて、莫大(ばくだい)な借金を背負う政府がある。今と似通った時代を生きた故郷の名君にあやかろうというのだろう。安倍首相はきのう、重就の功績を誇らしげに紹介しつつ、消費増税を正式に表明した

▼だが、問題は賃金という田畠の荒れようだ。十年以上も賃金が下がり続けているのは、先進国で日本だけという。非正規雇用の平均年収にいたっては、正社員より三百万円少ない百六十八万円と、格差は鮮明だ

▼やはり長州で、幕末に藩政改革を担った村田清風は<治まれる世は富士山の姿かな>と詠んだ。消費増税がますます裾野ばかりを削り取る結果になっては、長州の先人も眉をひそめるだろう。



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