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「講和経済」のジレンマ 帰ってきた日本(20) 
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜


2013/1/19 7:00  日本経済新聞

 1951年9月8日のサンフランシスコ講和に対する日本の経済界の反応は複雑だった。占領が終わり、独立を果たし、国民的な悲願は達成された。独立とは文字通り独りで立つのであり、それは経済的には重い荷物を背負うことを意味した。
■「日本株式会社」の輪郭
 当時の日本はあのドッジの名を冠して「ドッジライン」と呼ばれた健全財政路線をとってきた。それは緊縮路線であり、当時は「超均衡予算」とも呼ばれていた。講和によって生じる賠償、対日援助債務の返済がのしかかってくる。防衛分担金も増えるし、治安費も増額が求められる。
 ドッジ路線を続けながら、講和関係費をひねり出せるのか、財政当局は頭を痛めていた。
 一方、金融は元気だった。均衡予算を補う形で、市中金融機関は旺盛な資金需要にこたえ、オーバーローンの状態にあった。それは不健全だったから、政府は日本開発銀行、日本輸出入銀行などを通じて需要にこたえようとしていた。
 資金の原資となる貯蓄の増強のために税制上の優遇も検討された。「日本株式会社」と後に呼ばれる仕組みは、このあたりから輪郭を見せ始めていた。
 藤山愛一郎といえば、岸内閣による1960年の日米安保条約改定にあたった外相である。吉田がサンフランシスコで結んだ安保条約をより対等な中身にしたいとして動いたのが岸信介首相、藤山外相だったわけだが、サンフランシスコ講和当時、藤山は外交とは縁の薄い立場にいた。

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    東京商工会議所会頭のときの藤山愛一郎氏=朝日新聞社提供

 藤山は講和のニュースであふれかえる9月10日付日経に「日本の繁栄する道」と題した論文を寄稿した。肩書は東京商工会議所会頭である。当時の経済界の論客のひとりだったのである。
 藤山論文は当時の経済界の空気を映している。
 講和を「喜びに堪えない」とまず受け止めるが、「敗戦という事実のためにある程度自信を失っている日本人にとって、喜びと同時に不安を感じ前途の困難を思っていかになりゆくかを心配するのも無理からぬことである」と書く。
■経済人・藤山愛一郎の反共論
 藤山は日本経済を繁栄に導く条件として2点を指摘する。
 第1は「日本が赤色帝国主義侵略に対面せる場であり、日本は自由主義国家群の一員として国際社会に復帰したということである」。第2は「わが国国民生活安定の基礎たるべき米、麦、大豆、砂糖などを大量に輸入しなければならないことである」。
 ソ連とその同盟国だった中国も念頭に置いた「赤色帝国主義侵略」の表現は、藤山の強烈な反共意識をうかがわせる。それが岸が藤山を外相に起用した理由かもしれないが、サンフランシスコ講和の是非をめぐる日本国内の議論が自由主義か共産主義かの体制の選択だったとすれば、経済人藤山の反共主義は当然だったのだろう。
 第2の食糧問題について藤山は「戦前考えられていた食糧自給自足論を完全に清算しておかねばならない」と続ける。今日のTPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる議論にもつながるようにも思えるが、前提はかなり違う。
 「戦前考えられていた食糧自給自足論」とは台湾と朝鮮半島の植民地の存在を前提としていたからであり、日本本土だけで食料を自給自足しようとするものではなかった。にもかかわらず、1951年当時の経済人が食糧自給自足論の清算を説くのは貿易立国を基礎とする国際主義の表現であり、それはTPPを推進する2013年の経済界の立場とも重なる。
 藤山がどんな人物だったかは60年安保に触れる時に述べる機会が来るが、ここでも簡単に触れておく。
 父、藤山雷太がおこした藤山コンツェルンの2代目であり、政治のために財産を使い果たした。「井戸塀政治家(政治に財産を使って井戸と塀しか残さなかった政治家という意味)」の代表であり、絹のハンカチが政治にまみれて雑巾になったともいわれた。悲劇の政治家である。
 晩年は日中国交正常化に力を尽くした。1970年代の中国は藤山の目にはもはや「赤色帝国主義」ではなかったのだろうが、日米関係のレンズを通してみたソ連や中国についてもこの物語の後に触れる。


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