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巨匠指揮者たちの魅力


巨匠指揮者たちの魅力

 指揮者に関する逸話ほど面白いものはない。それが素晴らしい音楽を作る著名な指揮者であればあるほど笑わせてくれる。

 今年、没後30年を迎えた、モーツァルト演奏の権威として知られた指揮者、カール・ベーム。クラシック音楽の“総本山”ウィーン国立歌劇場の総監督という肩書だけでも大変偉いが、ハンブルクやドレスデンの歌劇場の音楽監督などを勤め上げ、国からは「オーストリア音楽総監督」なる最高の称号まで与えられた。

 86歳の長寿を全うしたが、晩年の日本での人気は「ドイツ音楽の正統派」としてとてつもなく高かった。

 このベーム、実はドがつくほどケチだった。日本で大歓迎されるから日本が大好き。日本人はベームが身につけているものを何でも「記念に」といって欲しがった。

 そこで新しい収入源とひらめいた巨匠は、世話係のゴッチェ氏に「日本人はわしの指揮棒を欲しがって仕方がないんだが、それで一儲(ひともう)けできんもんかの」と言ったという。

 また、東京公演で主催者のレセプション(食事代が惜しいからレセプションも大好き)に招かれ、プレゼントをもらうことになった。腕時計(腕時計好きで有名だった)とステレオ・セットのどちらがいいか聞かれたベームは一言。「どっちの方が値段が高いかね」(いずれのエピソードも「舞台裏の神々」音楽之友社から)。

 1965年に亡くなったドイツの指揮者にハンス・クナッパーツブッシュがいる。この人は練習が大嫌いだった。ある演奏会の前、「あなたがたはこの作品を知っています。私も知っています。では今夜」

といって練習をせずに帰ってしまった。ただの“怠け者”?!

 ベームやクナッパーツブッシュだけではない。こうした俗っぽい人間的な逸話は巨匠たちに必ずついて回る。では彼らの音楽がひどかったか。当たり前だがそんなことは決してない。

 音楽的な能力が優れていなければ指揮者になれない。なにしろ演奏に1時間もかかる譜面を何十曲も暗記し(オペラは2、3時間はざらだ)、100人からの楽団員の出す音をすべて聴きわけ、間違いを指摘し、個性豊かな音楽を作り出すのだ。

 逸話自体が神格化され、エピソードがあってこそ巨匠指揮者と呼ばれるのだ。「モーストリー・クラシック10月号」は、こうした指揮者の最新ランキングを掲載、「最新格付け! 世界の指揮者」を特集している。(モーストリー・クラシック編集長 江原和雄)

from  Editor
2011.8.26 07:32 
産經新聞

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