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蘇生した小次郎に武蔵の弟子たちがとどめ?
「世紀の決闘」に渦巻く“陰謀説”
2014.8.24 07:00 産經新聞
慶長17(1612)年4月、本州と九州を隔てた関門海峡に浮かぶ無人島、巌流島で宮本武蔵と戦った小倉藩剣術師範の佐々木小次郎だが、小次郎の名前は実名ではなく、対戦当時は70歳を超えていたというとんでもない説まで飛び出すなど、実態はベールに包まれたまま。
出身地も福井や山口、福岡などいろいろだ。こんな幽霊のような小次郎だけに、武蔵との真っ向勝負も本当だったのか。藩から疎まれ、武蔵とは別の人物に殺されたという話も残る。そんな中で見えてきた対決の実像とは−。
■ 錦帯橋でつばめ返し
武者修行中の武者らしく地味な身なりの武蔵に対して、きらびやかな衣装とともに常に華麗なイメージがつきまとう小次郎だが、ひげをたくわえた武蔵以上にこわもての江戸時代の錦絵も残る。
細川家の筆頭家老の兵法師範が江戸中期に著した武蔵の伝記によると、小次郎は越前の浄教寺村(現・福井市浄教寺)と書かれていて、地元に流れ落ちる一乗滝で秘剣「つばめ返し」を編み出したとか。
また、同じ福井の高善寺(現・福井県越前市)の宇多源氏、佐々木一族の出身とも伝わる。歴代、佐々木氏の流れをくむ寺の住職のうち17代目住職の6男、小太夫が武士になったという記述が史料や系図に残されており、これこそが小次郎ともいわれている。
小次郎はここで越前・朝倉家に仕えた中条流の富田勢源の門弟になったともされているが、中条流は60センチほどの短剣を使う流派のはずで、小次郎がつばめ返しに使う剣は物干しざおと称された1メートルほどの長剣。
小次郎はよほどのへそ曲がりだったのか、それとも中条流の体質がよほど合わなかったのか、それとも中条流と無関係だったのか−ということになる。
このほか周防の岩国(現・山口県岩国市)出身とする吉川英治の小説では、錦帯橋で柳の枝が燕を打つのを見て、つばめ返しを会得したとされるが、錦帯橋の完成が決闘から約60年後の1673(延宝元)年というから、錦帯橋と小次郎はつながらない。
■ 幅を利かす小次郎
小次郎は、細川氏が豊前・小倉に入る以前から副田(現・福岡県添田町)を中心に拠点を置いていた佐々木一族の出身という説もある。
天正13(1587)年に豊臣秀吉率いる九州征伐軍が攻めてきた際、岩石(がんじゃく)城に立てこもって牙をむいた佐々木氏が、当時は徳川の時代に変わっていたとはいえ、新領主の細川氏にそう簡単に従うとは思えない。
そこで、藩主の細川忠興は佐々木一族を取り込むため、秘剣「つばめ返し」を編みだし、天才の名をほしいままにしていた小次郎を藩の剣術師範に迎えたとも考えられる。
副田は当時、霊峰・英彦山を中心にした修験道のメッカとしても知られ、山伏から兵法を習った小次郎は自分の流派名を岩石城にちなみ、「岩流」にしたとも伝えられている。
そんな小次郎に藩の中では剣術で右に出る者はなく、小次郎人気もうなぎのぼり。門人の数もどんどん増える一方で、無視できないまでの勢力へのしあがっていった。
だが、これを苦々しく見ている人もいた。
筆頭家老の長岡佐渡ら古くから細川家に仕える古参の重臣たちだ。藩内での小次郎の発言力が増してくると、これが、いずれは内紛に発展しかねないことを恐れていたのだ。
そこで小次郎の対抗馬として目をつけたのが、廃れたとはいえ、かつては足利将軍家の剣法師範を務めた吉岡一門を京都・一乗寺下り松で破った宮本武蔵だった。
■ 小次郎は撲殺?
ここから重臣らの暗躍が始まる。ともに勝負の世界に生きてきた武蔵と小次郎だけに、2人のプライドを揺さぶったりなだめたりして決闘の世界へ導くのは、老練なこの人たちにとってはたやすいこと。
60回戦って負けたことがない宮本武蔵vs秘剣「つばめ返し」を操る佐々木小次郎。互いに評判は十分に知っていただろうから、武蔵にとって小次郎はいずれはやりたい相手だったはず。その機会が向こうから舞い込んできたのだ。
小次郎としても、不敗の剣豪・武蔵の挑戦を勝って退ければ、藩の剣術師範として自分の名がいっそう高まることになる。
そんなことで決まった巌流島での決闘。藩の検分役のほか、武蔵と小次郎以外は誰一人も島に連れてこないことを条件に迎えた4月13日。約束通り1人で待っていた小次郎の前にやってで来た武蔵。
島の波打ち際で戦った2人の勝負は、武蔵の勝ちで決まったのは従来のままだが、死んだはずの小次郎がこのあと蘇生(そせい)したという話もある。
起き上がった瞬間、陣幕の裏に隠れていた数人の男に小次郎はボコボコに殴られて、あえない最期を遂げたというのだ。これを武蔵の弟子の犯行とする史料もある。
このとき、小次郎の弟子の追跡から武蔵をかくまった小倉藩家老で門司城代の沼田延元が残した「沼田家記」に事の一切が書かれているという。検証を含めて詳しい話は次回に。
(つづく)
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