失われた仏教最古の叡智

歴史の中に埋没し、忘れ去られてしまった仏教の最初期の時代に説かれていた「ブッダの究極の理法」の根幹について、その真相を語る。

大聖ラーマクリシュナ

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 インドの歴史において有名な聖者と言えば、ラーマクリシュナ、シャンカラ、そして、ゴータマ・ブッダの名前が挙げられるのであろう。


 その中で、今回のテーマはラーマクリシュナ(1836〜1886)という人である。ラーマクリシュナは、ブラフマンとアートマンは同一であるとする梵我一如説の流れを汲む宗教者であり、ブラフマンの境地に至ったと言われている人である。


 とても興味深いことであるが、ラーマクリシュナは、金銭や土地などの財産を所有することもなく、さらには、本や経典などを一切書き残さなかった人でもある。



 ラーマクリシュナの晩年の言行録を収めた「不滅の言葉」のベンガル語からの翻訳書『不滅の言葉(コタムリト)―大聖ラーマクリシュナ』 (田中嫺玉・奈良毅 訳・中公文庫)から、重要であると思われるいくつかの箇所引用してみようと思う。




『けれど、こう思ってはいけないよ。つまり、これだけが正しくて、ほかのは皆まちがいだ、なんて。』P32



『人間には我執があるから神が見えない。雲がかかっているから太陽が見えない。だが、見えないからって太陽がないわけじゃない。太陽はちゃんとあるんだ。』
P112



『神の信者としての“私“は、我執高慢にはならない。無智にならない。それどころか、むしろ神をつかむのに役立つ。こうした“私“は“私“の中に入らない
んだ。』P118



『どの宗教を通っても、神様のところへ行ける。すべての宗教は真実だ。屋根に上ることが問題なのだ。』P125



『わたしには、どの宗教をみても、みな一つだ。すべては、あの一つのものから出ているのだ。無性無相の実在であるあの御方が、同時に形をもっていらっしゃるのだ。色々様々な形になって現われていらっしゃっるのだ。』P128


『名誉のため、人にほめられたいため、死んでから天国に行きたいため―こんな気持は一切なく、何の報いも求めないで、人間ばかりではなく、あらゆる生きものを通して神さまにお仕えする―無私、無執着の気持ちで仕事をする。これを、カルマ・ヨーガといい、神に達する道の一つなのだ。しかし、これは大そう難しい道だよ。』P135


『果樹園に何百本の木があるか、それに何千本の枝があるか、何万枚の葉っぱがついているか、そんあことがお前たちにとって必要だと思っているのか。お前たちはマンゴーの果実を食べに来たんだろうが。さっさともいで食べろ。人間は、神をさとるためにこの世にいるんだよ。目的を忘れて、ほかのことに熱
中しているなんて、よくないね。』P144


『金、名誉、五官の歓び―こういう経験をしてからでなければ、つまり、苦楽の経験を卒業しなければ、たいていの人びとは神に熱中できない。』P151


『"私"と”私のもの”―この二つが無智というものだ。私の家、私の金、私の学識。これはみな私の財産

―こう思うのは、無智が原因だ。「おお神よ、あなたがご主人。そして何もかも、あなたのもの―家も、妻も、子供らも、使用人も、友人、知人、すべてあなたのものです。」

―こういう考えは、正しい知識から生まれる。よく考えてみれば、ワタシだの、オレだのというものは、どこにもありはしないのだよ。たまねぎのようなもので、先ずはじめにいい赤い皮をむけば、白い厚い
皮だ。次から次にむきつずけていけば、なかには探したってなにもない。考えてこらん。お前はその身体か?それとも骨か?筋肉か?なお内臓か?それともほかの何だね?

よくよく考えをおしつめていくと、その私、私といっているものは、あの御方―つまりアートマン(真我)のほか何ものでもないと覚るだろう。”私”というものが消えてしまえば、悩みも苦しみも消えてしまう。ところが、どんなに考えても、千回も決心してみても、どうしてもこの”私”という感じがなくならない。こういう場合は、「私は神の信者だ。神にすべてを捧げている私だ」と、誇らかな気分でいるのがようのだ。

神が使い手、私は道具。―これらを覚らぬあいだは何度も何度も戻ってこなくてはならない。つまり、生まれ変わらなくてはならないのだ。「あの御方だけが行為者である」ことを覚ったならば、もう再生はしない。”私”と”私のもの”が、真実(実在)をおおいかくしているのだ。』P170〜171


『神をつかむためには強烈な離欲の精神が要る。神への道に障害者だと思うものがあれば、すぐに捨てなけりゃいけない。もう少し後で。などと言ってそのままにしておいてはだめだ。女と金が、神に通じる
道の障害物だ。この二つから心を離すことだよ。グズグズしていたら、だめ。』P184


『わたしは、どんな場合でも「我はブラフマンなり」などとは言いたくない。「あなたは神さま。わたしはあなたの召使」と言う。あの御方の名をほめたたえよう。これがわたしの願いなのだ。神と私の関係を、”主人と召使”または”親と子”の関係にしておくのは、たいそういいことだよ。ガンジス河の波とはいうこれど、波のガンジス河とは誰も言わないだろう?「我こそが”それ”(大原理、神)である」などという思い上がりは、ためにならない。この肉体が自分だという意識から脱けきらないうちに、そんあふうに思い上がっていると大へんな害になる。向上できるどころか、だんだん堕落していく。それは他人をあざむき、自分もあざむいていることだ。自分自身のことがよく理解っていないのだ。』P186




 この言行録を見る限り、究極に言って、ラーマクリシュナの境地と釈迦の境地とは、同一のものであるのではないのかと感じている。ラーマクリシュナという人が本当に悟っていたのかは、疑問を残すところではあるが、それでも、仮に、完全には悟っていなかったとしても、それに限りなく近いのは間違いないような気もしている。


ところで、もう一冊の『インドの光 ― 聖ラーマクリシュナの生涯』(田中嫺玉著・中公文庫)の中から、田中氏の言葉を引用してみることにする。



「ラーマクリシュナは、宗教を職業として営むことに反感を懐いていた。」


「神通力などを持っていると、人間は必ず高慢になる。高慢、増上慢、これが神を忘れさせるのだ。」


「結局すべての宗教は真実であり、同じ目的をもち、同じことを教えようと努めている、それらの差異は、そこに到達する方法と、民族の分化や人の知能程度による表現の違いだけである、という核心を強めたのである。」


「ラーマクリシュナは、決して自分の思想を他人に強制しない。それどころか、自分の言葉をよく吟味し、研究し、心から納得いくまでよくたしかめることを勧めた。」


「ラーマクリシュナは、"女と金"に関しては一歩も妥協しない。」


「宗派に対する偏見も誤りである。すべての宗派は同じ目的をもっている。ただ利己的な目的のためにい争っているにすぎない。真理のために熱心なのではなく、「わが名」「汝の名」の故に熱心なのである。二者は同じ真理を説く。しかし、その一方が言う―「あれは真理ではあり得ない。何故なら、その上に私の名の印が押していないからだ。だから彼の言うことを聞
くな」、他の一方も同じことを言う。」


「宇宙の根本原理ブラフマン(梵)のもが実在であり、世界は迷妄、錯覚にすぎない、そして自己の本性すなわちいい真我は、根本においてブラフマンと同一である(梵我一如)であるという。

真実ならぬものを厳密に識別して、徹底的に捨ててゆく。相対世界は一切を否定し放棄したぎりぎりのところで、行者の意識は三昧の最高状態である無分別三昧に達し、永遠絶対の実在・智識・歓喜であるブラフマンに溶け入れる。時間と空間はひとつになって、誕生と死、原因と結果は夢と消えさる。知るもの、知られるものは円満完全な智慧の大海に流れ入って一味となる。あ愛するもの、愛されるものが等しく限りなき歓喜の太陽に溶け去る。」


「絶対者(ブラフマン)の中には汝もなく我もなく神もない。それはあらゆる言葉や思想を超越している。しかし、相対性のごく小さな粒でも残っている以上は、言い換えれば、どんなに僅かでも"我”の意識がある間は、絶対者は思想と言語の内部にある。精神の範囲にある。そしてその精神は宇宙の精神・意識に従属しているのだ。この一切知の宇宙意識が、ラーマクリシュナにとってはカーリー大実母なのである。」P114

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