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年末の夜10時過ぎに、一人で仕事場にいたら、突然、外から「助けて。助けて。」と言いながら外壁をドンドン叩く音が聞こえてきた。
近頃、物騒なので、恐る恐る外に出てみたら、見た目で80歳過ぎの、杖をついたおじいちゃんがいた。すぐ近くには一台の車が止まっていて、話を聞いてみると、エンジンが突然動かなくなって、タクシーを呼んでほしいと言っていた。車の中を覗き込んだら、誰も乗っていなかったので、怪しい人ではないと思った。
家は近くですかと、そのおじいちゃんに聞いたら、そこから1kmほど離れたSマンションに一人で住んでいると言った。
その日はとても寒くて、車で送って行く、と言ったら、そのおじいさんは、とても喜んだ様子だった。というよりは、タクシーを呼ぶよりは、送って行った方が早いと思った。
それよりも、その車が道路を塞いでいたので、そのおじいちゃんに車に乗ってもらって、私が、車を後ろから押した。そして、左にハンドルをきって、と言ったが、何の反応もなく、どうこうしているうちに、うちの仕事場の駐車場と道路とに若干の傾斜があり、車が、じわじわと後ろに下がり出してきた。サイドブレーキを踏んで、と言ったが全く反応がなかった。車は押した分の半分くらい戻ったところで自然に止まった。
このおじいちゃんは、想像以上に耳が遠かった。もう一度、私が、事前に、左にハンドルをきった状態で、後ろから車を押したら、すんなり、私の仕事場の敷地内に車が入って行った。
おじいちゃんは、その車から降りて、荷物がたくさんあると言った。その中には、ビニール袋にどっさり入った薬と、あと、でっかい酸素ボンベがあった。本人の話によれば、最近、何度か倒れて、救急車で病院に運び込まれたらしく、年取ってこんなふうになったら死んだ方がましだ、とも言っていた。
おじいちゃんが乗って来た車はそこに置いて、私の車に乗ってもらい、その人が住んでいるというSマンションに送って行った。
そこに着いて、何階ですか、と聞いたら1階だ、と言った。そのおじいさんは、杖をついて、一人では歩けそうにもなかったので、抱えて部屋の入口まで連れて行った。私は、そのとき、このおじいさんが、本当にあの車を運転していたのだろうか、と思った。
そして、そのおじいちゃんが、鍵を出して開けようとしたら、なかなか開かなかった。そして、私は、このおじいちゃんの部屋は、本当に、ここなのだろうかと思った。何度もカチャカチャしていているうちに鍵が開いた。よかった。やはり本当だった。私は、何も気を遣わなくていいと言って帰って来た。
まあ、それは、とにかくよかったが、私は、その寒さで、かなり体調を崩し、年を明けて、今でもまだ、本調子ではない。特に、めまいがなおらない。
ところで、その日の翌日の昼頃、仕事場の者が、誰かが車を取りに来ている、と言った。その取りに来た人は、おじいちゃんだったので、昨夜の人だろうと一瞬思ったが、よく見ると、別の人だった。
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