失われた仏教最古の叡智

歴史の中に埋没し、忘れ去られてしまった仏教の最初期の時代に説かれていた「ブッダの究極の理法」の根幹について、その真相を語る。

自己の優位性について

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否定と承認について

 
 多くの人間は、自分(の考え)がいちばん正しく、自分がいちばん偉いと思っている。

 たとえ、表向きにはそうではないと言っている人でさえも、実際には、自分(の考え)がいちばん正しく、自分がいちばん偉いと思っているものである。(実際には、その人がいちばん正しいとは限らないし、その人は、おそらくは偉くも何でもない。)

 そして、多くの人間は、ものごとに関して、ごく一部をもって(見て、知って)、無意識のうちに、それがすべてである(そのことについてすべて知っている)と思い込む(勘違いする、錯覚する)傾向が強い。

 つまり、大多数の人間は、ごく僅かな知見(見たもの、経験したもの)をもって、無意識のうちに、その全体像を空想(想像)し、それが事実(真実、客観そのもの)であると思いなすに至るのである。(人は、実は、自らが経験したことしか、本当は理解できないものである。)

 では、一体なぜ、多くの人は、そういった思考をなす傾向が強いのだろうか?

 それは、おそらくは、多くの人間は、そう思う(思い込む)ことによって、無意識のうちに、不安定なる自らの自我(心)を安定化させようとしているからだと思う。

 より分かりやすく言えば、多くの人間は、無意識のうちに、そう思う(思い込む)ことによって、安心するのである。

 そして、さらに、多くの人間は、自らが独自に創り上げた自分自身の「ものさし」をもって、それ(独自の真理)を基準として、特定の他者を攻撃、あるいは、否定しようとする傾向(可能性)を有するものである。

 多くの人は、おそらくは、無意識のうちに、今ここにある苦しみや不満から、(一時的にでもいいから)抜け出したいという願望から、そういった行為をなすに至るのであろう。

 それらを総合的な視点において統括的な言葉で言い表すとすれば、それらのすべての源泉は、自分(の考え)がいちばん正しい、ということ、そして自分がいちばん偉いと思っていることにあるのだと私は思う。

 つまり、多くの人間は、自分がいちばんである、とか、あるいは、自分(自説)がいちばん正しい(偉い)、と思う(思い込む)ことによって(実際には、大抵の場合はそうではないのだけれども)、無意識のうちに、自我を安定化(自分を安心)させているのである。

 これに対して、自分(の考え)がいちばん正しい、と想わないこと、そして、これのみが究極であり、それ以外は誤りである、と想わないこと、これが、我執を滅した人の到達点であり、「想いからの解脱において解脱」した人の境地なのである。

 つまり、俗世間の言葉で言うなら、視野が広い人(賢者)、あるいは、寛容の精神に満ち溢れている人は、自分(の考え)がいちばん正しい、とか、これのみが究極である、などという想いから解き放たれているのである。

 もちろん、道の人(ブッタ)は、自分(の考え)がいちばん正しく、これのみが究極である、と断固として思っている(言い張る)人に対して、あなたはそうすべきではない、とか、あなたの考えは誤りである、などと想うこともないのである。

 ところが、これを読まれた人の中で、あなたは何を腑抜(ふぬ)けたことを言っているのか、とか、あるいは、人間の欲望に反逆しようとする(ブッタを含めた)お前らはアホじゃないのか、などと反論する人がいるに違いない。

 しかしながら、「輪廻から解脱」した人は、つまり、「想いからの解脱において解脱」した人は、そういった反論や否定に対して、何とも、どうとも、想うことも、感じることもないのである。

 そして、釈迦仏教の根幹の一つとは、特定の他者(他説)を(頭ごなしに)否定しないことである、と私は思っている。

 それにしても、多くの人間は、何かのものに関しても、ものごとに対して、有か無か、はっきりと断定させて、それを無意識のうちに、(実際には、そうではない場合でさえも、あるいは、その有と無とか誰にも分からないものでさえも、そうであると)信じ(思い)込まないことには、安心しないものなのであろう。

 いずれにしても、人間においての有と無とに対する執着は、とても根深い、ということなのだろうと思う。

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