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むかしむかし、今のワルシャワがまだ小さな村だった頃、村にはそばを流れるヴィスワ川の恵みで生活していた漁師がたくさんいました。ヴィスワ川には魚だけでなく、美しい金髪の人魚が住んでいるといわれていました。 ある日のこと、美しい人魚がひとりバルト海から景色を楽しみながらヴィスワ川をさかのぼって、この村の川べりまでやってきました。そして川岸の砂地の上で気持ちよさそうにひとやすみして、ぐるっと辺りを見まわしました。 『まあ、なんてすてきなところなのかしら…!』 人魚はすっかりその土地が気に入ってしまいました。漁師があくせく働いているのを横目に静かな場所で泳いだり遊んだりして過ごし、夕闇が迫ってくると静かに川のなかに潜って眠るという毎日はなかなか楽しいものでした。しかし、もともとお茶目だだった人魚は平凡な生活にだんだんと退屈してしまい、ある日、漁師の仕掛けた網にいたずらをして、魚を逃がしてしまいました。 「魚を逃がす奴がいるらしいぞ!人魚だな、とっちめてやる!」 人魚の仕業だと気づいた漁師たちはカンカンです。 自分のいたずらに腹を立てる人間を見て楽しくなった人魚は鈴のような声で笑い転げていました。何度もひどいお目にあった漁師は人魚を捕まえて懲らしめてやることにしました。人魚はといえば、そんな怒りを知ることもなく、今度はヴィスワ川の物語を歌にして口ずさみはじめたのでした。うるわしい歌声には人も動物もだれもが聞き惚れてぞろぞろと集まってきました。ビーバーは巣から顔をぴょっこりと出してうっとり。カラスも川に浮いた木の上にで羽根を休めてじっと聞き入っていました。 最初は人魚に思い知らせてやると息巻いていた漁師たちも、この世の物とは思えない美しい声にすっかり魅せられてしまい、最後はこれまでのいたずらを堪忍してやることになったほどでした。 ところが、その様子をこっそり陰から見ていたのが村のよくばり商人だったのです。 「へへ、この歌声でひと儲けしてやろうじゃないか…」 親切そうなふりをした人魚に声をかけた男は、突然彼女を木箱に閉じ込めてどこかに連れて行こうとしまいました。 囚われて悲嘆にくれる人魚の悲しい歌声は、水の流れにから川面のもや、そして水辺の草に絡まるように広がって行きました。かずかに聞こえる悲しい声で窮地を知った村の若い漁師は、腹黒い商人の企みに気づいて仲間といっしょに美しい声の主を救いだし、川に帰してやりました。 自由になった人魚は人間の恩に感謝して、いつかワルシャワが危機に見舞われた時には今日の御恩を忘れずに馳せ参じて守ることを約束すると、ゆっくりと水の中に消えてゆきました。その約束通り、今でも人魚は剣と盾を手にしてワルシャワの街を変わることなく守ってくれているのです。 ワルシャワの旧市街広場にある人魚の像を一度ごらんになってください。 ほら、右手で剣を振り上げ、左手には盾を持っているでしょう? |
ワルシャワ&その周辺







