見る・観る・演るーお芝居おじさんのひとり言

お好きな記事をどうぞ。それぞれが1つの「読み物」です。

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  『おはつ』―商業演劇と小劇場―

   # 新橋演舞場

 地下鉄・東銀座から、徒歩5分。昔風の赤レンガが、迎えてくれる。
商業演劇の中心地の一つ。キャパ(客席数)は、1400ほど。客席は3階
まであり、1階下手側に花道がある。
 04年・正月。劇場に入ると、各階の境に、ずらっと提灯が釣ってあり
華やいでいる。わたしが場違いに思える、高い年齢層。ゆったり、のんびり
くつろいでいる。
 こんな雰囲気の中で、お目当ての役者に声をかけ、拍手するのだろう。
今日の座長は、松たか子。清酒おはつ・おはつのタオル・・・売店も松たか子
一色。生涯、もう来ないかもしれないこの劇場。わたしは、両親をつれて
ゆっくり空気を味わう。


   # 『おはつ』

  マキノノゾミ/作  鈴木裕美/演出

  キャスト
      松 たか子 :おはつ―(遊女)
      佐々木蔵之介:直助―(醤油商の手代)
      小市慢太郎 :正太郎―(油商の跡取り息子)
      北村有起哉 :沖田総司―(新撰組)
      佐藤江梨子 :深雪―(遊女)
      渡辺いっけい:近藤勇―(新撰組局長)
      江波杏子  :おれん―(貧しい街頭の娼婦)
      福井貴一  :丑松―(鍵屋万助の手下)
      田鍋謙一郎 :鍵屋万助―(市中警護の侠客=岡引?)
      八十田勇一 :太兵衛―(遊郭の主人)
      武田浩二  :平間重助―(水戸脱藩の浪士)
      歌川椎子  :おもん―(太兵衛の女房)

      平田敦子  :梅次・正太郎の乳母・ほか
      松島正芳  :松吉・丁稚・幇間・ほか

 時は幕末、大阪のキタ、新町。遊郭「かや乃」に、おはつはいる。
おはつは遊女。喀血を覚られないようにしているが結核、不治の病。

 ――どうせはかない命なら・・・・せめて、いっぺんでええ・・・
   このまま死んでもええて思うような、
   恋がしたいて思いました。
   近松はんの浄瑠璃のような、そないな恋がしてみたい・・・
   それだけが、たった一つの夢でした・・・
   わたしの最後の夢でした・・・・

 大店の跡取り正太郎と、商家の手代・直助は幼馴染。2人は剣術を
習っている。おはつに入れ揚げる正太郎とは違い、直助の剣には野心が
ある。人生、このままでは、町人では終わらない、武士になる、なって
みせる。
 稽古帰りの夜、曽根崎・天神の森。些細なことから、果し合いに。
脱藩したとはいえ、相手は侍。行き詰る死闘、直助の剣がまさる。
死体を残して、夜陰にまぎれる直助・・・。現れるのは、1人の女。死体を
見、直助の消えた闇を見る。
 ――こいつは、金になる・・・
女は、この森をねぐらにする年増の娼婦、おれん。


   # おはつ・直助、夢のゆくえは・・・

 下手人を探しているのは、岡引だけではない。新撰組の沖田も、密書を
もとめて。沖田は、やがて、おれんに行き着く。
 いっぽう、恋と心中にあこがれる、おはつ。身請け話が、もちあがる。
相手は、新撰組局長の近藤勇。これを知った、正太郎と直助。直助は、
無謀にも近藤に決闘を申し込む。

 おはつの心は、決まった。廓を、逃げる。直助と、逃げる、手に手を
とって。夢にまで見た、死出の道行。あの近松の、「お初、徳兵衛」の
ように・・・。
 追っ手を逃れる、2人の行く手は・・・・・・。おはつの、夢は・・・・・・、
直助の、夢は・・・・・・。


   # 恋の手本『曽根崎心中』

 時は、元禄16年(1703)5月。大阪の街は、騒然とした。つい一月前の
事件を、近松が舞台に載せた。
 『曽根崎心中』、世話物(せわもの・現代劇)浄瑠璃の誕生!

  ――此の世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば
    あだしが原の道の霜。一足づつに消えて行く。夢の夢こそ
    あはれなれ。あれ数ふれば暁の。七つの時が六つ鳴りて
    残る一つが今生の。鐘のひびきの聞きおさめ。寂滅為楽と
    ひびくなり。鐘ばかりかは。草も木も空もなごりと見上ぐれば。
    雲心なき水のおと北斗はさえて影うつる星の妹背の天の河。
    梅田の橋を鵲(カササギ)の橋と契りていつまでも。我とそなたは
    女夫(メオト)星。必ず添ふとすがり寄り。二人が中に降る涙
    川の水嵩(ミカサ)もまさるべし。

 これは、『曽根崎心中』の道行。近松の文は、美しい。流れる
ような七五調。(注1)
 赤穂浪士の討ち入りが、前年の12月。元禄の「この年に、恋の
手本が生まれ、武士の手本も生まれた」。(注2)


         (注1)此の世のなごり―7  夜もなごり―5
             死に行く身を―7?  たとふれば―5
               なぜ「7?」か。
                「身」は、大阪訛りなので「みい」と読む。
         (注2)パンフの中の、児玉竜一さんの文章。


   # 商業演劇と小劇場

 お金に縛られる郭の女、おはつ。騙し騙され、手練手管の「偽りの
恋」。さらに、結核。このままでは、このまま死んでは、本当の自分を
「生きていない」。
 恋がしたい。命をかける、恋がしたい。心中さえも「生きること」。
生きた私の、この世の証し。

 幕末、直助も「生」を求める。一生、ペコペコして、虫けらのように
殺されても何も言えない。町人では嫌だ、侍になる。よりよく生きたい、
剣の腕で、士農工商を突き破る。直助もまた、時代を駆けつづける。

この劇場の―あるいは、商業演劇の―常連さんには、この芝居が
どう映るのだろう。
 お馴染みの役者は、「松たか子」と「渡辺いっけい」「江波杏子」くらい。
あとは、小劇場を拠点にしている役者ばかり。作者も、そうだ、「マキノ
ノゾミ」。演出も、自転車キンクリートの「鈴木裕美」。

 一方では、松たか子の見せ場、渡辺いっけいの見せ場、江波の、北村の、
佐々木の・・・。それぞれの見せ場があり、拍手がわく。
 郭の女にしては、おはつは「きれい」すぎる。したたかさも、狡猾さも
みえない。松たか子に、もっと「汚れ役」を・・・。なんて、演舞場では、
ないものねだりか。

 一方では、すさまじい殺陣。雨の夜、曽根崎の森、直助と浪人の果し合い。
つんのめる。押し倒す。ころげる。よける・・・・・・。びしょ濡れになりながら
――ほんとうに、水が張ってある――カッコ悪い、がむしゃらの迫力。

 商業演劇がそこにあり、小劇場が片鱗をみせる。



           つぶやき
              わたしの、年老いた両親は、田舎で二人暮らし。
             若い頃は、たくさん心配させ、苦労のかけ通し。
             いい息子らしいことは、何一つできなかった。
             現在やっと、何かをしてやれる暮らしになった。
              相撲や芝居・・・、メディアでしか知らない世界に、
             連れて行こうと思った。この日は、お芝居を見て、
             銀座を歩いた。帰ってから清酒「おはつ」を酌み
             交わした。
              今年は、父が出たがらない。疲れきっていた。
             雪だ。わたしの田舎は、雪が降る。雪かきも思うに
             まかせない両親。頑固な父は、正月が終わると、
             戻っていった。

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つぶやき、ステキですね…未だになにも親孝行できてないです…どころか、いい歳してわがまま放題です。元気なうちに母親とは芝居を、父親とはプロ野球を一緒に観にいきたいんですが…(反省)

2006/1/12(木) 午後 4:39 るぅ

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ここが、るぅさんに届いてしまいましたか。ちょっと、恥ずかしいナ。実は、るぅさんの田舎と、わたしの田舎は、近いのですよ。でも、JR吾妻線の沿線では、ないですよ…。

2006/1/13(金) 午前 11:26 [ e_y*s*da55 ]

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おはつ、私も観ましたよ〜。正月早々心中ものなんて重いかなぁなんて思いながら観に行ったのですが、あのテイストのおかげで、ちょっと楽な気分で劇場出られました。両親を劇場へ…それは私もしたい親孝行です。

2006/1/13(金) 午後 11:24 [ - ]

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うわ〜、わたしって、うかつですよね。ohana nekonoさんのコメントを見て初めて「正月に心中もの」に、気付きました。気付かないまま、2年間(笑い)。わたしも「楽な気分」でした。もしかしたら、新橋演舞場ということも、あるのかな。

2006/1/14(土) 午前 7:08 [ e_y*s*da55 ]

朝から色っぽくて心がしーんとなるような言葉を目に出来て幸せでございます。。外は雨。私は仕事。また読み返すために戻ってきますね^^

2006/1/14(土) 午前 7:59 恋

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訪問&コメントありがとうございました!! ほんと、偶然にも共通の話題ですね(笑)東京の方ではやっているお芝居の数が大阪と比べものにならないほどあってうらやましいです(≧_≦) とはいってもほとんど行くことはできないのですが・・・。yosida様のブログで私もいろいろ見た気になって楽しませてください☆☆ というわけで・・・[お気に]ぽちっ♪

2006/1/15(日) 午前 3:01 トム吉

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恋さま。これ、照れます。・・・・よろしくお願いします。

2006/1/15(日) 午前 7:11 [ e_y*s*da55 ]

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churunchuruさま、偶然でした。「お気に」いいんですか。わたしのブログは、お芝居ばかりですよ。大阪に≪わたし流の面白い芝居≫が行く時には、情報を流します。

2006/1/15(日) 午前 7:28 [ e_y*s*da55 ]

松さんの芝居はいつも清々しさを放っていますね。重ねるのはおこがましい未熟者の分際ですが、そうありたいと思っています。業務連絡ですが、一度メールをいただけますか。http://www.geocities.jp/pia_voice/トップに私のメアドが載っておりますm(_ _)m

2006/1/15(日) 午前 7:46 non*sing

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コメントありがとうございました。 e_yosida55 さんの観劇歴凄いですね。 ゆっくり読ませて頂いたら、生で観たく成るでしょうね。

2006/1/15(日) 午前 10:00 [ gre*nri**r380 ]

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Nonさん。松さん、できあがっているイメージが、あるのでしょうね。そこから、脚本や配役が振られているのでしょうね。Nonさんの舞台、楽しみです。

2006/1/15(日) 午後 3:34 [ e_y*s*da55 ]

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greenriverさん。気が向いたところを、読んでいただけたら幸いです。

2006/1/15(日) 午後 3:38 [ e_y*s*da55 ]

履歴からきました☆ 「おはつ」よかったですぅヾ(*>∀<*) 直さまの『道の真ん中を歩く、武士になりたい』っていう思いが 切なかったですね。

2006/1/22(日) 午後 4:28 nor*_*72*jp

商業演劇と小劇場が融合したようで面白い試みと感じました。新橋演舞場 はかつて新派の本拠地でしたよね。私は数年前スーパー歌舞伎を見ました。両親が揃っている間に親孝行したいものですね。私は父には看病しかできなかったです。

2006/1/23(月) 午前 2:57 miyamiya

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ししこさま。佐々木蔵之介の演技で、小劇場でもしっかりやってい所(人)もあることを、示せたのではと思います。

2006/1/23(月) 午前 9:18 [ e_y*s*da55 ]

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管理人さんのいうように、面白い試みでした。役者の出入りは可能になりそうです。内容の出入りまでは、さあ、どうでしょう。観客の楽しみ方が、ちょっと違うかなと思いました。

2006/1/23(月) 午前 9:23 [ e_y*s*da55 ]


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