えり子と貴美子『萩家の三姉妹』
♯ 二兎社
二兎社は≪ニトシャ≫と読む、二羽の兎だ。桐朋短大の
演劇科を卒業した二人。芝居に出たいんだけど、チャンス
がない。それなら、自分で書いて自分で出ちゃえ。と創っ
たのが、二兎社。なぜ兎か、二人とも卯年生まれ、そこで
二兎社。
二人の名前は、大石静と永井愛。交互に作品を書いて、
上演してきた。91年に大石が退団。以降、二兎社は永井の
作品をプロデュース公演してきた。
「兄帰る」「新・明暗」「こんにちは、母さん」など、
(他の劇団に書いた作品は「見よ、飛行機の高く飛べるを」
「ら抜きの殺意」「パートタイマー秋子」「かたづけたい女たち」など)
次々に話題作を公演。永井は、多くの賞を受賞している。
♯ 『萩家の三姉妹』
00年の公演はシアタートラム。03年の再演は世田谷
パブリックシアター。キャパ(客席数)が、違う、トラム
240、パブリック600。二兎社、初めてのパブリック公演、
永井作品の評価の証明でもある。
作・演出 永井 愛
00年11月 03年10月
キャスト (萩 鷹子・長女 大学教授) 余 貴美子 渡辺えり子
(荏田仲子・次女 専業主婦) 南谷朝子
(萩 若子・三女 フリーター)岡本易代
(本所武雄・大学教授) 片岡弘貴
(荏田宏和・仲子の夫 歯医者)酒向吉伴 (酒向 芳)
(日高聡史・脱サラ農民 プリンス)大鷹明良
(日高文絵・聡史の妻) 大西多摩恵
(池内徳治・家具職人) 土屋良太
(神原鈴夫・家具職人見習い) 坂本岳大
(南ちはる・鷹子のゼミの生徒)杉山明子
(舟木理美・ 々々 )小山萌子
(韮崎品子・萩家の家政婦) 高橋信子 藤 夏子
萩家、ある地方都市の旧家。父の一周忌の法事から
物語が始まる。長女・鷹子は一家の主。女子大の教授で、
フェミニズムを専攻する。次女・仲子は専業主婦。近く
のマンションに夫・子どもと住んでいる。三女・若子は
何をやっても長続きしない、フリーターでパラサイト・
シングル。
奔放な恋愛で、二人の男を手玉に取る若子。脱東京・
脱サラの幼馴染のプリンスと再会して、不倫に悩む仲子。
フェミニズムやジェンダーを武器に慣習と戦う、鷹子。
その鷹子も、かつての不倫相手で同僚の本所と「共同研究」
を始める。
それぞれの秘密が、少しずつ現れてくる。そして、
白日のもとに晒されるとき、三人の姉妹の運命は・・・。
♯ 笑いの中の、永井の視点
あらすじだけを見ると、ドロドロのメロドラマの
ようだが、決して、そんなことはない。客席は終始、
笑いの渦にあふれている。下品な笑いや、卑猥な笑い
ではない。演技の笑いだ。
わたしの手許には、劇場で買ってきた脚本がある。
帰宅し、マーカーを持って、一気に読み終えた。笑い
の秘密を、知りたかった。マーカーだらけの脚本だ。
場面の数だけ笑いがある。極論する、セリフの数
だけ笑いがあり、演技の数だけ笑いがある。それほど、
見事なのだ。
ジェンダーを、正面から、これほど鮮やかに取り
上げた芝居を見たことがない。
三人の姉妹は、世代の代表者でもある。理想主義者で、
不器用に恋愛を求め、理論で現代を、自分自身さえ斬ろ
うとする、鷹子。歯医者の亭主、2人の子どもと恵まれ
た家庭、でも愛に飢える仲子。「ジコチュウ」で、快楽を
追求する、若子。
永井は「現代の性と愛」を描きながら、「新しい性と
愛のありよう」を、模索する。仲子のように、それが
「結婚」では完結や解決しないことを、自明として。
その証拠に、若子と2人の職人の三角関係。3人の
出した結論は、「3人いっしょに暮らす」こと。それを
見つめる鷹子の視線も、作者の視線も温かい。
♯ 貴美子か? えり子か?
三姉妹だけに焦点を当ててきたが、他の女たちの苦悩も
リアリティーがある。女ばかりではない、苦悩しているのは、
男たちもだ。「性と愛」の行き着く先が見えない、混沌の
中にいるのは、同じだから。
明けていく夜の向こうを見つめる、三姉妹の目は、
何を見ているのだろう。
鷹子は、初演では余貴美子。東京壱組の舞台を見て、
永井がお願いしたのだという。再演は、余の都合が
つかなくて、渡辺えり子。
余の鷹子は、尖っている。張り詰めた鋭さと、緊迫感を
孕んでいる。反面、突っ張りの内側の弱さや、脆さも伝わる。
永井の睨んだ通り、ハマリ役だ。
渡辺は、余に比べて丸い。温かみと、包容力がある。
言葉は尖っていても、人情を感じてしまう。その弱さは
突っ張りの反面のものとは、異質に思える。
余談になるが、この芝居には、渡辺えり子の
実生活での夫が出ている。家具職人を演じる
土屋良太。渡辺も、また姉さん女房だ。(大き
なお世話か)
貴美子か?えり子か? どちらを選ぶか。
次は、余貴美子の鷹子で、見たい。
♯ 再再演は、必ずある!!
この記事を読んでしまった人。「しまった、失敗した」と
思う必要は、まったくない。わたしは、まだ、ほとんど何も
語っていない。3人以外の、女たちや男たちのことも。
みな、3人に負けない、魅力的なキャラに仕上がっている。
役者と演技だけではない。遠近法をうまく使った、舞台
美術のみごとさも。緊迫とユーモアの計算された音響のことも。
演技と場面を引き立てる照明のことも…。
「うまい落語」は、知っていても、何度でも笑える。
わたしの記事では「知っている」ところまで、行っていない。
ぜひ、生で、自分の身体と心で体感してほしい。
え? わたしですか? 再再演も、再再再演も、必ず
行きます!
どうやら、わたしだけでは、なさそうです。トラムの公演
では、役所広司に会いましたし。これか、もう一つ前の
「兄帰る」だったか、記憶が曖昧ですが…。「ら抜き」に
出ていた若手たちを中心に、テアトル・エコーの面々が、
最後列に、ずらっと並んで、舞台を見つめていました。
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あぁ〜っ『萩家の三姉妹』!!この作品大好き!!!!無謀にもウチの劇団の候補作に出したことがあったほど・・・、却下されましたが(>_<) でも、やりた〜い、是非是非やりた〜い!!ちなみに私は余貴美子さんのほうが好みでした。私も再再演も再再再演も観ますっ!!!
2005/6/15(水) 午前 11:56 [ - ]
これも、お薦めしようかなと、思っていた脚本です。ぜひ、やってください。女優陣中心でできますよ。
2005/6/15(水) 午後 0:34 [ e_y*s*da55 ]
いつか出来るようになりたいです!役者と演出家が充実した時にはぜひ・・・。
2005/6/15(水) 午後 0:44 [ - ]
そうですよね。一人で創るわけには、いきませんからね。あ、それから、今年の秋ですが、青年座が『パートタイマー秋子』を、再演するそうです。
2005/6/15(水) 午後 4:37 [ e_y*s*da55 ]
観たかったのに観そびれた芝居です!秋ですか〜、今度は必ず!!
2005/6/15(水) 午後 6:29 [ - ]
入れる「書庫」を間違えて、変えようとして、変えられません。「演劇・観劇」に入れるはずでした。
2005/6/18(土) 午前 9:41 [ e_y*s*da55 ]
記事読んで面白そうと思いました。女性の生き方や思いを表現してくれるお芝居、見てみたいです。最近はドラマを見ても女優さんの演技や雰囲気が気になるんです。
2005/6/27(月) 午後 8:42 [ oba**him* ]
再々演が、あればいいな、って思っています。見事なコメディーですよ。わたしが見た日、NHKのTVカメラが入っていたのに、放映したと聞いていません。どうなっているんですかね。3世代(5歳ずつくらいの違い?)と1人の女性の生き方=裏返してみると男性の生き方を問うています。
2005/6/27(月) 午後 9:23 [ e_y*s*da55 ]
この記事をよんで興味が湧きました♪面白そう・・・。でも女としては、結構イタイ部分もあるのかしら?興味ある反面、怖くもあります(^^;)
2005/8/12(金) 午後 0:40
いろんな意味で面白いですよ。誰でも笑わずには、いられません。見た後、深刻になったりすることも、ありません。永井愛の作品ですが、10〜11月。新作『歌わせたい男たち』と、再演『パートタイマー秋子』があります。
2005/8/12(金) 午後 3:55 [ e_y*s*da55 ]
ありがとうございます!チェックしてみようっと♪
2005/8/13(土) 午前 9:40
この作品、私はやはりジェンダーの取り上げ方がうまいので感心しました。セリフもかなりきわどいのにリズムがいいのでさらっと流せる。しかし知人も観ていて、下品な作品だとけなしていたのですよ。この作品の意図を感じて欲しかったのに残念。
2005/11/20(日) 午前 2:24
「性」へのタブー、ある年代から上と下では、ずいぶん違っています。タブーがない世代が多数派を占めるようになってきた今日、この芝居を薦めたいですね。いかんせん、二兎社のファンは、年配者が多い(笑い)。
2005/11/20(日) 午前 10:29 [ e_y*s*da55 ]
テレビで観ましたがが生でもう一度観たいものです。
「歌わせたい男たち」戸田恵子が抜群、アカペラ!
「書く女」寺島しのぶ、両作は生で観てとても素晴らしかったです。
2007/11/15(木) 午前 11:09