見る・観る・演るーお芝居おじさんのひとり言

お好きな記事をどうぞ。それぞれが1つの「読み物」です。

演劇 観劇

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過去に見たお芝居です。一つ一つが独立した「読み物」です。
お好きな記事を、どうぞ。

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  鈴木聡見参!「サクラパパオー」

 97年11月、「サクラパパオー」。鈴木聡、初のパルコ劇場。
初演93年、再演95年はシアター・トップス。(わたしは、未見)
 福本伸一と岡山はじめ、そして小林隆(客演)は、トップスでも
出ている。今回ヘレン役の櫻井淳子は、当時TVの「ショムニ」で
知名度がup。この芝居が、初舞台。


   # 『サクラパパオー』

 作/演出 鈴木 聡

 キャスト
   櫻井淳子 : ヘレン (日本人・水商売の女)

羽場裕一 : 的場博美 (外務省のエリート官僚)

若松武史 : 柴田 達 (競馬の予想屋)

角替和枝 : 菅原幸子 (未亡人)

小林 隆 : 横山一郎 (優柔不断・うだつの上がらない中年サラリーマン)

福本伸一 : 田原俊夫 (今日子と婚約中・競馬好きを内緒にしている)

 おかやまはじめ:井崎 修 (賭け事と女にはまる中年オヤジ)

小林 愛 : 岡部今日子 (賭け事が大嫌いな真面目OL)

 杉本 清:競馬実況
      神野美紀:場内アナウンス


 ここは、競馬場。中央・正面奥は、カフェバー。キャビネット
には、グラスやカラフルな壜(ビン)が並び、その前にカウンター、
手前にはテーブル席。
 2階は、上手下手をつらぬく広いロビー。いちめん、明るい
大きな窓になっていて、向こう側には競馬場を見渡せる(設定)。
 下手の階段をおりる途中に、馬券売り場のフロア。1階から
上手の階段を少し登ると、窓のある狭いロビー。

 田原と今日子は、婚約中。真面目なOLの今日子は、田原の性癖―
ギャンブルと女―に疑いを持ち始めている。そこで、連れ立って競馬場に
やってくる。
 声をかけて来たのは、派手な服装のヘレン。2人の親密な写真を
見せられ、怒って去ってしまう今日子。
ヘレンを追ってきたのは、中年オヤジの井崎。ところが、ヘレンの
連れが現れ、予約したレストランもホテルもパーに・・・。
 残されたのは、田原と井崎。やけになって、競馬に賭けるが・・・。

 ヘレンの連れ・エリート官僚の的場も、追い込まれている。ヘレンに
入れ揚げ、使い込んだ公費が800万。明日までに、作らなければなら
ない。


   # それぞれの、思いを乗せて

 気になって引き返す、今日子。幸子との、出会い。馬と女に入れ
揚げて、死んだ亭主。苦労したはずなのに、今では自分が馬の虜と
語る幸子。
  ――競馬が、面白いって言ったって、人生だいなしにするほどの
    モノではないのよ・・・
  ――女の競馬はね。ちょこっと儲けて、今の人生、ちょっと
    よくしようとするだけ・・・。
    男は、違う。大儲けして人生コロッと変えようと・・・だから
    大穴ねらって・・・取り戻そうとして・・・また、損して・・・。

 幸子の亭主の生前の愛人は、ヘレン。ヘレンは、馬券を買わない。
馬に、会いに来る。
 声をかける幸子に、言う。
  ――あたしね。馬はみんな、昔は人間だったと思う・・・
    今日もいるのよ、1頭・・・寂しい目をして、何かを
    思い出しているようで・・・。
    あたしの、好きだった人・・・競馬キチガイ、ゼッタイ
    馬に生まれ変わるって言ってた・・・。

幸子――男は、みんな一緒。うちの亭主と、おんなじ。

 ふたりが見つめる、その馬。ヘレンは、亡き愛人の面影を。幸子も、
亡き夫の面影を見る。
 それは、予想屋の柴田が、ひそかに賭ける馬。カモの横山にも決して
売らない1頭。ラス前のレースに出走する、サクラパパオー。
 しかし、ヘレンと幸子を見たサクラパパオーは、突然あばれだす・・・。

 どうしても800万が必要な、的場。幸子とヘレンの、思惑。田原と
今日子の、恋のゆくえ。優柔不断な人生との、決別。
 それぞれの思いが交錯する中、運命のレースのゲートが開く。


   # 鈴木聡の挑戦

 言うまでもなく、パルコ劇場は笑いの渦の中にある。トップスなど、
小さな劇場に行ったことのないパルコの観客は、鈴木聡のコメディーに
眼を見はったに違いない。
 以来、鈴木の主宰する劇団・ラッパ屋の公演は、2年おきくらいに
なる。06年は、ラッパ屋の『あしたのニュース』から始まった。(注)
その間、鈴木聡はいろいろな分野に、可能性を広げているように
見える。

 05年、『最悪な人生のためのガイドブック』(パルコ劇場)。これは
和製ミュージカルへの挑戦。セリフを歌で言ったり、突然歌いだし
たり・・。そういう不自然なことを、鈴木は捨てた。
 場面の状況を歌う、コーラス隊を配する。登場人物の歌は、心の中の
声に限定する。まったく新しい、方法をもって。
 この原型は、浪曲師・国本武春をコーラス隊の部分に使った96年の
『阿呆浪士』にある。(これは以前にも、ふれた)

 音楽劇『おんなの落語』(シアター1010)。これは、ミュージカルを
深めるのではなく、「江戸落語」の世界を舞台に創る。
 それが先月末の、『花緑と風間の落語会』で、柳屋花緑と風間
杜夫への「新作落語」へ。

 そして今度は、シェ―クスピア。3月の、ハムレットならぬ
『ハゲレット』。(3月9日〜21日・紀伊国屋ホール)

 わたしは、鈴木聡に期待している。いろいろな分野から、
多くのことを吸収して、芝居に生かしてほしい。
 そして、ミュージカル! 不自然なミュージカルに、風穴を
開けかかった「和製ミュージカル」を追及して欲しい。




           (注 「あしたのニュース」は、鈴木があまり書いてこなかった
              社会性を持たせようとして、うまくいかなかった例では
              ないのか。
               05年、青年座に書いた『妻と社長と九ちゃん』は
              どうなんだろう。(わたしは、未見)

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  『おはつ』―商業演劇と小劇場―

   # 新橋演舞場

 地下鉄・東銀座から、徒歩5分。昔風の赤レンガが、迎えてくれる。
商業演劇の中心地の一つ。キャパ(客席数)は、1400ほど。客席は3階
まであり、1階下手側に花道がある。
 04年・正月。劇場に入ると、各階の境に、ずらっと提灯が釣ってあり
華やいでいる。わたしが場違いに思える、高い年齢層。ゆったり、のんびり
くつろいでいる。
 こんな雰囲気の中で、お目当ての役者に声をかけ、拍手するのだろう。
今日の座長は、松たか子。清酒おはつ・おはつのタオル・・・売店も松たか子
一色。生涯、もう来ないかもしれないこの劇場。わたしは、両親をつれて
ゆっくり空気を味わう。


   # 『おはつ』

  マキノノゾミ/作  鈴木裕美/演出

  キャスト
      松 たか子 :おはつ―(遊女)
      佐々木蔵之介:直助―(醤油商の手代)
      小市慢太郎 :正太郎―(油商の跡取り息子)
      北村有起哉 :沖田総司―(新撰組)
      佐藤江梨子 :深雪―(遊女)
      渡辺いっけい:近藤勇―(新撰組局長)
      江波杏子  :おれん―(貧しい街頭の娼婦)
      福井貴一  :丑松―(鍵屋万助の手下)
      田鍋謙一郎 :鍵屋万助―(市中警護の侠客=岡引?)
      八十田勇一 :太兵衛―(遊郭の主人)
      武田浩二  :平間重助―(水戸脱藩の浪士)
      歌川椎子  :おもん―(太兵衛の女房)

      平田敦子  :梅次・正太郎の乳母・ほか
      松島正芳  :松吉・丁稚・幇間・ほか

 時は幕末、大阪のキタ、新町。遊郭「かや乃」に、おはつはいる。
おはつは遊女。喀血を覚られないようにしているが結核、不治の病。

 ――どうせはかない命なら・・・・せめて、いっぺんでええ・・・
   このまま死んでもええて思うような、
   恋がしたいて思いました。
   近松はんの浄瑠璃のような、そないな恋がしてみたい・・・
   それだけが、たった一つの夢でした・・・
   わたしの最後の夢でした・・・・

 大店の跡取り正太郎と、商家の手代・直助は幼馴染。2人は剣術を
習っている。おはつに入れ揚げる正太郎とは違い、直助の剣には野心が
ある。人生、このままでは、町人では終わらない、武士になる、なって
みせる。
 稽古帰りの夜、曽根崎・天神の森。些細なことから、果し合いに。
脱藩したとはいえ、相手は侍。行き詰る死闘、直助の剣がまさる。
死体を残して、夜陰にまぎれる直助・・・。現れるのは、1人の女。死体を
見、直助の消えた闇を見る。
 ――こいつは、金になる・・・
女は、この森をねぐらにする年増の娼婦、おれん。


   # おはつ・直助、夢のゆくえは・・・

 下手人を探しているのは、岡引だけではない。新撰組の沖田も、密書を
もとめて。沖田は、やがて、おれんに行き着く。
 いっぽう、恋と心中にあこがれる、おはつ。身請け話が、もちあがる。
相手は、新撰組局長の近藤勇。これを知った、正太郎と直助。直助は、
無謀にも近藤に決闘を申し込む。

 おはつの心は、決まった。廓を、逃げる。直助と、逃げる、手に手を
とって。夢にまで見た、死出の道行。あの近松の、「お初、徳兵衛」の
ように・・・。
 追っ手を逃れる、2人の行く手は・・・・・・。おはつの、夢は・・・・・・、
直助の、夢は・・・・・・。


   # 恋の手本『曽根崎心中』

 時は、元禄16年(1703)5月。大阪の街は、騒然とした。つい一月前の
事件を、近松が舞台に載せた。
 『曽根崎心中』、世話物(せわもの・現代劇)浄瑠璃の誕生!

  ――此の世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば
    あだしが原の道の霜。一足づつに消えて行く。夢の夢こそ
    あはれなれ。あれ数ふれば暁の。七つの時が六つ鳴りて
    残る一つが今生の。鐘のひびきの聞きおさめ。寂滅為楽と
    ひびくなり。鐘ばかりかは。草も木も空もなごりと見上ぐれば。
    雲心なき水のおと北斗はさえて影うつる星の妹背の天の河。
    梅田の橋を鵲(カササギ)の橋と契りていつまでも。我とそなたは
    女夫(メオト)星。必ず添ふとすがり寄り。二人が中に降る涙
    川の水嵩(ミカサ)もまさるべし。

 これは、『曽根崎心中』の道行。近松の文は、美しい。流れる
ような七五調。(注1)
 赤穂浪士の討ち入りが、前年の12月。元禄の「この年に、恋の
手本が生まれ、武士の手本も生まれた」。(注2)


         (注1)此の世のなごり―7  夜もなごり―5
             死に行く身を―7?  たとふれば―5
               なぜ「7?」か。
                「身」は、大阪訛りなので「みい」と読む。
         (注2)パンフの中の、児玉竜一さんの文章。


   # 商業演劇と小劇場

 お金に縛られる郭の女、おはつ。騙し騙され、手練手管の「偽りの
恋」。さらに、結核。このままでは、このまま死んでは、本当の自分を
「生きていない」。
 恋がしたい。命をかける、恋がしたい。心中さえも「生きること」。
生きた私の、この世の証し。

 幕末、直助も「生」を求める。一生、ペコペコして、虫けらのように
殺されても何も言えない。町人では嫌だ、侍になる。よりよく生きたい、
剣の腕で、士農工商を突き破る。直助もまた、時代を駆けつづける。

この劇場の―あるいは、商業演劇の―常連さんには、この芝居が
どう映るのだろう。
 お馴染みの役者は、「松たか子」と「渡辺いっけい」「江波杏子」くらい。
あとは、小劇場を拠点にしている役者ばかり。作者も、そうだ、「マキノ
ノゾミ」。演出も、自転車キンクリートの「鈴木裕美」。

 一方では、松たか子の見せ場、渡辺いっけいの見せ場、江波の、北村の、
佐々木の・・・。それぞれの見せ場があり、拍手がわく。
 郭の女にしては、おはつは「きれい」すぎる。したたかさも、狡猾さも
みえない。松たか子に、もっと「汚れ役」を・・・。なんて、演舞場では、
ないものねだりか。

 一方では、すさまじい殺陣。雨の夜、曽根崎の森、直助と浪人の果し合い。
つんのめる。押し倒す。ころげる。よける・・・・・・。びしょ濡れになりながら
――ほんとうに、水が張ってある――カッコ悪い、がむしゃらの迫力。

 商業演劇がそこにあり、小劇場が片鱗をみせる。



           つぶやき
              わたしの、年老いた両親は、田舎で二人暮らし。
             若い頃は、たくさん心配させ、苦労のかけ通し。
             いい息子らしいことは、何一つできなかった。
             現在やっと、何かをしてやれる暮らしになった。
              相撲や芝居・・・、メディアでしか知らない世界に、
             連れて行こうと思った。この日は、お芝居を見て、
             銀座を歩いた。帰ってから清酒「おはつ」を酌み
             交わした。
              今年は、父が出たがらない。疲れきっていた。
             雪だ。わたしの田舎は、雪が降る。雪かきも思うに
             まかせない両親。頑固な父は、正月が終わると、
             戻っていった。

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 高校時代は何色?『ホテルカリフォルニア』
      ――文化祭・学園祭シリーズ その2――


   # ホールが、女子高生で溢れる!?

 新宿・紀伊国屋ビル4階で、エレベーターを降りる。ホール前が
いつもと違っている。大勢の、セーラー服の女子高生たちで、賑わっ
ている。
 「いらっしゃいませ。」…「ようこそ」…華やいだ笑顔…。
劇団の研修生たち(扉座ではサテライトと呼ぶ)。芝居の雰囲気作り、
もう、始まっているのだ。
 97年11月。劇団扉座・第13回公演『ホテル カリフォルニア』。
主宰・横内謙介の高校時代を、モチーフにしたものだという。サブ・
タイトルに「私戯曲」と銘打っている。

 客席では、わたしの隣は老夫妻。しきりに、あの頃の話をしている。
厚木高校と横内たちの、関係者らしい。
 あの頃、77年から80年へ。『ホテル カリフォルニア』、開演。


   # 『ホテル カリフォルニア』
        ――私戯曲 県立厚木高校物語――

  作/演出 横内謙介

  キャスト
    有馬自由 :横山謙一(モデル―横内謙介)
    岡森 諦 :岡本宣也(モデル―本人)
    三木さつき:ハッパ(中島葉子・生徒会)
    六角精児 :宮城次郎
    田中信也 :シュウコウ(佐藤秀孝)
    鈴木真弓 :ヨッちゃん(日根よし子)
    中原三千代:ナオさん(石田直子)
    山中崇志 :ミナトヤ(湊谷康洋・生徒会長)
    石坂史朗 犬飼淳治?:張ヶ谷勝一(注:初演は犬飼だったような…?)

    茅野イサム:応援団長・先生・役者ほか、多数の役
    伴 美奈子:謙一の母・先生・生徒ほか、多数の役

    赤星明光・右田浩美・犬飼淳治/ ほか多数

 入学後すぐの実力テストは、440人中370番代。三者面談に
来た母と、横山は驚く。中学までは、10番以下になったことが
ない。ここは、中学の優等生たちが集まる進学校。正面玄関には
大学合格者が「戦績」として貼り出されている。
 同級生のハッパは生徒会に、張ヶ谷は受験勉強に、横山は
演劇部で高校生活をスタートする。

 3年の1学期、全国大会出場(演劇部)を決めた横山のもとに、
ハッパがやってくる。7月の文化祭の後夜祭の企画を(注1)、
やって欲しいと。実行委員を募るハッパと横山は、校内で有名人の
宮城を仲間に引き入れる。関水とナオさんも、加わる。そして、
意外な二人、おとなしくて存在感のうすい、シュウコウとヨッちゃん。
――僕は高校では、ただの無口な奴でしかなかった。ただ、受験
  オンリーで、何もない高校生活だと気づいた…

 成功の鍵をフォークダンスにしぼる。宣伝を始める「ジンギスカン・
舞踏団」の3人、宮城・関水・シュウコウ。昼休み、放課後、無視され
ながら踊る舞踏団。
 と、足を止めるのは、ガリ勉クンとガリ子さん。不器用に踊り始める。

 いよいよ、後夜祭。演壇に立つミナトヤの合図で、ジンギスカンの
音楽、スタート。固唾を呑んで見つめる、ハッパ・横山・舞踏団…。
見ろ、踊ってるよ、みんな、…やった・・ほんとうに・・・、踊ってる・・・。
踊りの輪に駆け込む、歓喜の舞踏団・ハッパ・横山…。

 片付けが済む、もう9時。初めてだよ、こんな時間まで学校に
いたの。高揚している、ジュースでカンパーイ(乾杯)!
――川原に行って、焚き火しねぇか……もっと一緒に、いたい……
  話そうぜ、いろいろ……朝まで、話すんだ……徹夜で…
 意気込んで話すシュウコウ。

 みんなの反応は冷たい。
――俺、帰る……そろそろ勉強しねえと……遊びは大学行ってからだ
  現実、現実……
「何のため行くんだよ、大学…」食い下がるシュウコウ。見かねた
パッパが提案する。「卒業式の後で、行こうよ。約束だよ…」

 だが、約束が果たされるのは…。
 3年生は、また受験一色の日常に染まっていく…


   # On a dark deserted highway・・・♪

 70年前後の政治の季節(学園紛争)が、終わった後の77年
から80年。この時の高校生たちは「シラケ世代」と呼ばれる。
無気力・無関心・無責任・・・「三無主義」という言葉も、使われる。

 横内は言う「青春は良い大学に入ってから」。「恋も遊びも喧嘩も
すべて棚上げ」。「ひたすらに受験勉強に没頭していた」。「この青春を
恥じ、深く後悔している」と。(注2)

 ――くだらねえ受験なんか、やんなくていいじゃねえか・・・
吐き出すように言うシュウコウに、横山が答える。
 ――通過儀礼だと思うんだ・・・。例えばニュージーランドの原住民の
   バンジー。高い木のテッペンから、足に一本の綱をつけて
   飛び下りる。無事できると、若者は一人前と認められて
   大人の仲間入りできる・・・。
   通過儀礼は、それぞれの社会でいろいろ。イレズミをいれたり、
   長い旅にでたり・・・苛酷で、行為自体はバカバカしい・・・。
   バカバカしいけど、受験も社会に入るための儀式だよ。

 シュウコウは、しぼり出す
 ――俺は、そっちの村に入りたい・・・。受験に生き残った
   奴らが作る社会なんかより、飛び下りて生き残った奴らが
   作る村のほうが、ずっとマシだ・・・俺はそういう奴らに、
   認められてえ・・・。

 卒業後、同級生から(横内が)もらった手紙。――最低な高校
生活だったと俺は思っている。皆んなはどう思っていたんだろう?――
「思えば、私たちはそんなことを、語り合ったことさえなかったのです。
 遅れ馳せながら、今それを語りたいと思うのです。」(注3)

 横内の言葉に反して、この芝居には恋も喧嘩も遊びもある。
イーグルスの「ホテルカリフォルニア」の曲に乗って始まる、
あの頃。高校時代は、夢の終焉なのか、始まりなのか・・・。



              (注1)進学校では、1学期に文化祭をやってしまう所も
                  ある。厚木高校は7月だった。
                  高校演劇の全国大会は、8月。この時の演目は、
                  横内謙介/作/演出の「山椒魚だぞ!」。劇中劇とし
                  て、一部が出てくる。
                  主役は岡本役の岡森諦。1年後輩に宮城役の六角
                  精児がいた。
              (注2)(注3)公演のチラシ、作者の文章による。



   扉座の公演情報

   『アトムへの伝言』
     作/演出 横内謙介

      11月25日〜27日  厚木市文化会館小ホール
      12月2日〜11日  紀伊国屋ホール

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 ノスタルジー? プロの劇団の学園もの

   ♯ Dotoo!(ドトオー)

 秋は、文化祭・学園祭シーズン。学園もの第1弾は、03年
12月の駅前劇場、Dotooの公演『仰げば尊し』(初演は00年)。
 劇団Dotoo。87年に旗揚げした劇団・疾風DO党が、前身。
「(曲も)明かりもバンバン変わる」「小劇場らしい」「芝居をし
ていた」(HPより)。
02年、主宰の福田卓郎の作風の変化とともに改名。この芝居
は、その象徴的な作。福田はTV・ラジオのドラマの脚本も手が
ける。


   ♯ 『仰げば尊し』

  作・演出 福田卓郎

  キャスト
   桜岡あつこ  :藤田加代子(会長・2年)
   平川和宏   :矢島道雄(オヤジ・1年)
   片平光彦   :神野健吾(2年)
   ウォーリー小倉:矢野幸一(あげ玉先輩・3年)
   タケシタユウジ:宮瀬武臣(副会長・2年)
   初田せつ   :白石恭子(オキョン・2年)
   東海林奈美  :堤 幸恵(ドテチン・2年)
   新谷摩乃   :鴻上素子(もっさん・2年)
   ふたむらあい :薦田恵美(お嬢・1年)
   梅田幸子   :加地真由美(みかん・2年)
   森下いづみ  :曽我部真智(1年)
   三上 綾   :矢野美也子(あげ玉の妹・2年)
   小沢ミナコ  :宇佐美翔子(チクリン・2年)


 舞台は四国。愛媛県の、とある田舎の高校。生徒会室に入って
きたのは中年の女。部屋の中を見て回る。1冊のノートに目をとめ、
ページをめくる・・・。
 そこへ、男が1人・・・。
 ――すみません、懐かしくって、卒業生です。
 ――会長、わしじゃ。わからんのか。
 女は加代子、男は神野。今日、あのときの生徒会のメンバーが
集まる。あの日から、もう20年。

 そう、あの日。にぎやかな生徒会室に現れた、1人の新入生。
制服は着ているが、40間近のオヤジ、矢島。
 ――生徒会を、やりたいんじゃ。青春って、感じがするから・・・。


   ♯ オヤジの青春

 体育祭に向けて、張り切るオヤジ。
 ――高校生活には勉強以外にも、面白くて大切なことがある・・・
  (大人になった時)そういう経験の方が役立つし、重要だ・・。
ノッテきたのは、もっさんとオキョン。高校生活を楽しんでいる
ように見える2人。動き始めると、オヤジの経験が活きる。
 恋、これも青春。アイドル・お嬢をめぐる三角関係。副会長を
追いかける、あげ玉の妹。会長の密かな恋。
 失恋や、ケンカ・・・。落ちこむ彼らに、オヤジは言う、
 ――今、キラキラ輝く、とっても大切な一瞬を過ごしている、と。

 生徒会の文化祭企画、合唱『微笑みがえし』(注1)の準備中。
文化祭中止!学校の方針が告げられる。今年から始まる共通一次
試験(注2)に備えて、2学期から受験体制の強化。校長の考え
だという。
 署名運動を提案。熱く語り、熱くみんなを説得する、オヤジ・・・。
会長が、口をひらく、
 ――オヤジは、高校生活をやってみたかっただけだろう。・・
   うちらには未来がある・・みんな受験する・・後ろから数えた
   方がはやい、もっさんもオキョンも、・・・それが西高・・・。
   なんで、オヤジは西高なんかに来た・・・。
 翌日。1人校門に立ち、署名をあつめるオヤジ・・・。


 1人、また1人と集まってくる、懐かしいこの部屋・生徒会室。
東京に出た者、地元に残った者。それぞれの人生を背負って・・・。
 そういえば、みんな、あの時のオヤジと同じ年齢・・・。オヤジの
姿は、ない。
 そして、意外な来訪者。語られる、あの時の真実・・・。


   ♯ 70年代後半の「青春群像劇」

 ピンクレディー「UFO」
 サザンオールスターズ「勝手にシンドバット」
 アバ「ダンシングクイーン」
 沢田研二「勝手にしやがれ」
 キャンディーズ「微笑みがえし」

 こんな曲が、芝居の中で流れ、歌われる。オジサン世代は、
すぐに「あの時代」へ入りこむ。若い世代、現在の高校生は
どう感じるのだろうか。
 「今の高校生も、高校生だった人も(中略)観終わったあと
必ず友達と話がしたくなる」とは、チラシの言葉。そうなら、
うれしい。
≪恋≫と≪受験≫と≪青春≫と。普遍性、この3つともが、
変質してきている気がする。「純愛?」は、韓国ドラマのもの。
高校生といえども、性を抜きにしては語れない?
 終身雇用が崩れ、新自由主義で多くの人が「負け組」になる
現実。受験・大学は経済的安定を保証しない。
 青春はドラマの中だけ。何かができる、何かになれる、夢見る力。
いっしょに作る、ぶつかる、泣く、笑う、交わる力。弱くなって
いるように感じる。

 「若さゆえの罪を」「暖かく」「厳しく描いた青春群像劇」(チラシ)。
そこにあるのは、ノスタルジー。語るのは「懐かしいあの頃」。「あぁ、
いいな」という(現役・高校生の)憧れ。
 より広く、より深く心に刺さるのは、沁みるのは、現在。単なる
ノスタルジーではない、登場人物の今の生きざま。(注3)
 現在の加代子(会長)と神野。39歳、惑いの中。もしノスタルジー
だけでないなら、「真実」は2人の惑いに晴れ間をもたらすはず・・・。



           (注1)この年(1978年)に解散したキャンディーズのヒット曲。
           (注2)現在は「大学センター試験」。国立大で始めた「前の形」。
           (注3)ノスタルジーだけでない、心に沁みる「同窓会もの」。
               私が見たのは、たとえば、福島三郎『これはあけぼの』が
               ある。あの時が《現在の自分》を揺さぶる。
               (5月29日付けのブログ「川平は演技もできるのです」
                を参照)
               最近の小説で例をあげると、重松清『日曜日の夕刊』の
               中に『後藤を待ちながら』という、短編がある。これ、
               タイトルで思わず吹き出してしまう。芝居『ゴドーを
               待ちながら』を、もじったもの。
   


Dotooの公演情報


  『スカタン』  
    11月2日〜8日 駅前劇場

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   『半神』再生・野田ワールドも全開!

   ♯ 渋谷にあるBunkamura

 シアターコクーン。渋谷駅を降りてハチ公前広場を横切り、
文化村通りの東急本店併設の施設へ。そこは、オーチャードホール・
劇場・映画館・美術館などを備えたBunkamura。
 劇場は、1階・中2階バルコニー席・2階・3階バルコニー
席で、キャパ(客席数)750ほどの中劇場。最も離れた席でも
舞台まで24mほど。料金もバルコニー席(コクーンシート)は
S席の、ほぼ半額。
 わたしは、ノダマップの第4回公演『キル』の立見席から
始まった。99年、第6回公演『半神』は、ノダマップになって
初めての、夢の遊眠社時代の作品の再演。


   ♯ 『半神』

 原作・脚本 / 萩尾望都   脚本・演出 / 野田秀樹

 キャスト
  深津絵里  : シュラ(双子の姉)
  加藤貴子  : マリア(双子の妹)

  野田秀樹  : 老数学者 / ドクター(2役)

  勝村政信  : 先生(双子の家庭教師)

  鷲尾真知子 : 母
  山崎 一  : 父

  山下裕子  : 右子(叔母) / ガブリエル(2役)
  右近健一  : ユニコーン
  水谷誠伺  : ハーピー
  佐々木蔵之助: スフィンクス
  明星真由美 : 左子(叔母) / マーメイド(2役)
  佐藤拓之  : ゲーリューオーン


 1/2(2分の1)と1/2が、袖ふれあって奏でるリズム…
 1/2と1/2で、2/4(4分の2)。2/4は、タンゴのリズム…

 リズムに乗って、『半神』開演。

シュラとマリアは双子の姉妹。シュラは醜く、マリアは可愛い。
まわりの愛は、マリアに集中。シュラは気付く、思い通りになら
ない手足と頭、マリアと私は別人なのだ。そう、2人は胴が結合し
たまま産まれた「シャムの双生児」。
 シュラの成長は速い。ピアノも、言語も、自己認識も…。マリア
と自分は「別人格」だと気付く。一方、マリアは幼いまま、仕草も
思考も、美しい顔と無邪気なふるまい。一身に愛を注がれるマリア、
それを見続けるシュラ。

 両親は2人に家庭教師をつける。「あの子の眼に世界が触れない
ように」、子ども達の幸せを願って。やって来たのは、老数学者の
孫。シュラの賢さに舌を巻き、マリアの可愛さにときめく。
 シャムの双生児をねらっているのは、化け物たち。5次元の世界
の住人。家庭教師と老学者を遠ざけようとする。

 一人になりたい! 孤独って、すてきなんでしょう…
 マリアには、愛の嵐、キスの嵐…
 私から抜け落ちた愛、愛されたい…、痛切に願うシュラ。 

 老数学者が究明したラセン方程式1/2と1/2で2/4。間違いなんか
ではない。4次元から5次元、この世の果てに通じる方程式。
先生は灯台のラセン階段を下りる。
 ―-この海原に呼びかけて、船に警告する新しい音を造ってやろう

 双子の10歳の誕生日まで、1ヶ月。不整脈、弱っていく2人。
呼ばれたのは老数学者の双子の兄、ドクター。このままでは2人
とも助からない、2人の命はあと1ヶ月。
胃腸も肝臓も、全ての器官・臓器は2人前。心臓だけは二人で
1つを共用。助かる可能性があるのは1人だけ。シュラかマリアか、
マリアかシュラか…。生き残るのは、どっちか…。


   ♯ 野田ワールドは、クリエイティブ

 野田秀樹の思考は、脳の回路は、どこに繋がっているのだろうか。
次から次へと紡ぎ出される言葉=概念の連鎖。野田は知り尽くして
いる、観客の心の動きと美意識を。言葉の連鎖は幻か、その連鎖に
身も心も引きずり込まれる。
 脚本だけの問題ではない。音と光と舞台装置。歌謡曲からクラッ
シクまで、幻想的な明かり、円形と六角形を駆使した舞台。役者と
場面を美しく見せる方法を熟知している。

 生きることの、喜びも悲しみも切なさも、ある。だが、主張は、
訴えは…。声高な意思表示や意見表明は…ない、だから悲しい、
だから嬉しい、だから…。観客は、みな野田ワールドへ、深い深い
恍惚へ、催眠へ…。夢の遊眠社の演目の再演という、ノダマップの
もう1つの世界へ…。

 役者は、みな楽しんでいる、あの深津絵里も、シュラの醜さを。
深津だけではない、みんな、みな…。なんと、ハツラツとした
舞台であることか。
 野田と舞台を造れたことの幸運。今では、みな主役をはっている、
加藤貴子も佐々木蔵之助も…。できることなら、同じキャストでの
再演を…。無理なら、野田が集める新しいキャストで再演を…。

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