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違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が6月20日午後、参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。ダウンロード刑事罰化などは10月1日に施行される。

 改正法では、違法アップロードされたものを違法と知りながらダウンロードする行為に対し、懲役2年以下または200万円以下の罰金が科される。権利者の告訴がないと罪に問えない親告罪とした。

 また暗号によるアクセスコントロール技術が施された市販DVDやゲームソフトを、PCのリッピングソフトやマジコンを使って吸い出す行為が私的複製の範囲外として違法行為になった。罰則はない。

 写真に絵など著作物が写り込んだ場合に著作権侵害を問われないとするほか、国立国会図書館が絶版資料などを各地の図書館などに公開できるようにする内容も盛り込まれた。

 当初、政府が提出した改正案には違法ダウンロードへの刑事罰導入は含まれていなかったが、音楽業界の要望を受けた自民・公明が6月15日、刑事罰を導入する修正案を議員立法により衆院委員会に提出し、これに民主も賛成して衆院で可決していた。刑事罰化は修正案の提出から5日間で成立したことになる。


「市場を公正なものに」「CDが売れるようにはならない」──著作権法改正案、参院で参考人質疑 (1/3)
違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が参院で審議され、津田大介さんらへの参考人質疑が行われた。「日本の文化を守るために不可欠だ」「刑事罰化の前にやることがある」と、賛成・反対の立場から参考人が意見を述べた。

 違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が衆議院を通過し、審議は参議院に移った。参院文教科学委員会は6月19日午後、違法ダウンロード刑事罰化について参考人質疑を行い、参考人からは「日本の文化を守るために不可欠だ。ネットのルールも万引きが罰せられるリアルと同じでなければならない」「刑事罰化に違法ダウンロード抑止効果があるのか慎重に議論すべき」と賛成・反対の立場から意見が出た。

 参考人として招致されたのは、岸博幸・慶應義塾大学大学院教授、日弁連の市毛由美子事務次長、コンテンツビジネスに詳しい久保利英明弁護士、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事の津田大介さん。

「ルールもリアルと同じでなければならない」──岸教授

 岸教授と久保利弁護士は賛成の立場から意見を述べた。


岸教授
 岸教授は賛成の根拠として3点を挙げた。まず「日本の文化を守る点から不可欠。良いコンテンツ、良いアーティストに資本投下したレコード会社が正当に報われるようにしなければならない。ネットで無料入手できる環境は改める必要がある」とした。

 また「コンテンツを流通させるネットビジネスを発展させる、ベンチャーが成功できる環境を作るためにも市場を公正なものにしなければならない。価値あるものにはお金を払うものにしなければならない」ことを挙げた。「コンテンツはなるべく無料でいい」という、「アメリカのネット企業などが作った価値観」がそのまま入ってきている状況で、「日本企業が日本型ビジネス作っていかなければならない。そのためにも市場を公正なものにしなければならない」と指摘する。

 さらに「ネットは特別なものだ、リアルとは違うという価値観が広がってしまっている。ネットがこれだけ生活やビジネスに不可欠になってる以上、ルールもリアルと同じでなければならない」として、違法ダウンロードは「リアルの店で万引きするのと同じ」と指摘。「リアルでは万引きすれば捕まる。本来有償で売られているものを違法と知りながらただで入手することに対してバランスを失している。そこを改善することがネットとリアルを同じ環境にすることからも大切だ」とした。

 違法サイトへの削除要請の手間や海外サイトへの対応が難しいことなどからも、違法アップロード側だけの刑事罰では無理があるのではと指摘。「違法ダウンロードだけが音楽業界が悪化している理由ではないが、現実に悪影響を与えている」として刑事罰導入を求めた。

「日本のコンテンツビジネスはもたない」──久保利弁護士


久保利弁護士
 久保利弁護士はコンテンツビジネスに長年携わり、政府の知的財産戦略本部に参加した専門家として「刑事罰をもってダウンロードまで規制しないともう日本のコンテンツビジネスはもたないのではないか」と危機感を表明。いわゆる総会屋が刑事罰の導入で減ったことを例に出し、刑事罰を導入することで違法ダウンロードを「やってはいけないこと」と周知し、「国は適切に刑事的な権限行使することでまっとうな国にする。そういう前提で刑事罰を作るのは何も悪いことではない」とした。

 久保利弁護士は、違法ダウンロードに対する罰則「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」については「おおむね妥当だと思う」とし、「未成年が1件か2件やるくらいで立件するのは異常な捜査官の判断だ」として、少数のダウンロードで立件されるような事態にはならないとした。



「刑事罰化する前にやることがある」──日弁連


日弁連の市毛事務次長
 日弁連の市毛事務次長、津田さんは反対の立場から意見を述べた。

 市毛事務次長は、2年前の「違法ダウンロード」導入時に当時の文部科学大臣が罰則は科さないことを明言しており、「施行後2年で立法事実の何が変化したのか。修正案の前提としてきちんとした説明がなされていない」と批判。「私的領域への刑事罰導入は極めて慎重であるべきだ」という日弁連の基本的立場から、刑事罰の対象となる「違法コンテンツのダウンロード」という行為について、罪刑法定主義の観点から明確になっているのか議論すべきとし、処罰対象が故意犯だったとしても故意かどうかを判断するのは非常に難しいと指摘した。

 違法ダウンロードは音楽ファイルだけでも12億ファイルなどとされるが、この全てのダウンロードを検挙して裁判にかけることは不可能であり、「権力にとって都合の悪い人に対してだけ刑罰の執行が行われる危険性をはらんでいる」と捜査当局による乱用も懸念。日弁連としては民事上も許されるべきとは主張しておらず、違法コンテンツが正規コンテンツ流通を阻害していることも認めるが、「刑事罰化する前にやることがある。アップロード側の刑事罰化に抑止効果があったのかの検証すら聞いていない」「抑止的効果として導入するのであれば抑止的効果があるのか、どうか違法アップロードへの刑事罰執行状況を勘案しながら慎重に協議すべきだ」とした。

「ユーザーは萎縮することで買わなくなる」──津田さん


津田さんは「不謹慎な金髪を呼んでいただきありがとうございます」と登場
 津田さんはまず、文化庁管轄の私的録音録画小委員会で委員として議論に参加してきた経験を振り返り、違法ダウンロード導入の賛成者も刑事罰化は「バランスが悪い」と反対していたことを挙げ、「政治家の仕事は多様な立場の人の意見をきき、利害を調整して大所高所から政策をやっていく、媒介としてのメディアのようなものだ。今回の場合、法曹関係者の多くがバランスが悪いと考えているのは厳粛に受け止めていただきたい」とした。

 刑事罰導入の「筋の悪さ」から、音楽業界の要望を受けた自民・公明の議員立法による修正案で改正案に盛り込むという経緯も「一部の業界の意見だけを聞いている」と批判。「違法ダウンロードの被害は6800億円近いという調査結果があるが、CDのピーク時だった90年代後半の市場が6000億円だったのに、被害が6800億円というのはバーチャルに過ぎるのではないか」と、根拠などが偏っているのではないかと指摘。「偏った結果に対してチェックして慎重に議論してやっていくのが国会の役割。それがチェックなしで進んでいくのは非常に残念だ」とした。

 「一番の問題は社会全体に影響が及ぶ著作権法をいじること」。刑事罰で効果がなければYouTubeなども対象に広がるなど、今後規制範囲が広がっていく恐れに加え、いずれ全ての著作物に拡大されることになれば「全ての著作物が違法か合法か分からない状況で違法化・刑事罰化が拡大された時、ユーザーの半分以上がよく知らないままに違法行為をしてしまうことにつながる」と懸念。「ネットは知る権利のために使われている重要なものであり、この問題は音楽業界の保護だけではなく、情報通信の秩序にかかわるものだ」とした。

 コンテンツ業界の収益が拡大する方向を目指す点では同じだが、刑事罰導入で「CDが売れるようになるかというとならない。たぶん下がっていく」と効果を疑問視。「ユーザーは萎縮することで単純に買わなくなる」とみる。

 対案として、国の文化予算の増額を挙げる。「文化庁の予算は1000億円だが、諸外国に比べても全然安い。韓国は日本の5倍の5000億円をかけ、国策としてコンテンツを輸出している」とコンテンツ関連に国が金をかけて伸ばしていくことを提案する。「刑事罰化で音楽市場が伸びないのは最悪だ。この問題は音楽業界だけの問題ではなく、社会全体に影響が及ぶ問題であり、5年、6年と時間をかけて慎重に行う議論であり、今回はやめていただいたほうがいい」と刑事罰導入を見送るよう求めた。

抑止効果はあるのかないのか

 質疑では、「スリーストライク法」を導入したフランスで、違法ダウンロードが減ったことで音楽業界の収益が上がったのか、議員から問われた岸教授が「音楽配信市場は規制によって売り上げが伸びた」と答えたものの、フランスの音楽産業自体はマイナス成長だったことを指摘され、「経済状況などの要素によって変わる。検証を始めた瞬間に多くの変数が出てくる」と、規制による効果の検証は難しいとした。

 日弁連の市毛事務次長によると、日本レコード協会からは違法アップロードについて告訴したのは2011年度で6件だったという。「アップロードに対しての刑事罰がきちんと施行されていると言えないのではないか。それでも必要ならその段階で議論するので構わないだろう。今の段階で検証がなされていないまま通ってしまうのは民主主義のルールとしていかがなものか」と疑問を呈した。

 津田さんは「効果があまり見込めない反面、副作用としてユーザーの萎縮が起こるだろう」と見るが、久保利弁護士は「刑事罰では可罰的違法性があるのかどうかなど全ての事件についてチェックがかかるし、違法ダウンロードでもチェックは当然かかる」と簡単なダウンロードでは検挙されないだろうとの見通しの上で、「なにを萎縮するのか。違法行為をしないように萎縮するのであれば、それは抑止なのではないか。それで音楽から離れていくなら仕方がない、正規品も欲しくない、CDも欲しくないという音楽しか作ってないのなら仕方ないだろう」と述べた。

 岸教授は、違法ダウンロード禁止だけでは文化は進化しないことを認めた上で、コンテンツ業界の未来に向けて、(1)魅力ある作品を作ること。音楽業界に限らず、収益が下がったため制作力が弱くなっている、(2)ビジネスの構想力が足りない。海外ではSpotifyなどストリーミング聴き放題サービスなども出てきている──ことを挙げた。津田さんは、録音録画補償金の延長的な考えとして、サービス業者などから「コンテンツ税」的なものを徴収し、クリエイターに還元していく方向もあるのではとした。


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