高崎線userのRailLIFE

倅:オカシイ。妹の方がネタ撮ってる 親父:偶然は怖いだろう??

20番線、親父の「鉄道以外」

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 「旅の歌」に着いている「月報」には、大岡信さんと飯田龍太さん(蛇笏四男)の「旅の歌、旅の感慨」というテーマによる対談が載せられています。この中で飯田さんが、旅の漠然とした目的と明確な目的の二つのちがいはあるかもしれないけども、作品の味付けでは、旅する人が自分の故郷をどこかで意識しておる人といない人とのちがいがあるのではないかと思う、と発言されています。例えば西行には故郷の意識は見られず、芭蕉から牧水などは逆に故郷という意識がある。放哉や山頭火には故郷の意識はまた、無いと。

 山頭火については、本文における幸綱さんの意見とは異なるようです。また、放哉については本文には何も述べられておりません。


 さて、「旅の歌」の最後の節は、「漂泊と望郷の旅」と題して、明治以降の歌人、俳人、詩人を扱っています。啄木については、こんなに汽車のうたがあったとは知りませんでした。というか、牧水にかまけていてチェックしなかっただけなんですが……そしていきなり朔太郎が出てきたので驚きました。反対しているのではなく、大歓迎という意味で。 以前、J様の記事に関連して、「啄木の故郷、朔太郎の故郷」を、いずれ考えなければならないな、と思っていたのですが、図らずもここでこんな良い本に巡り会えることになり、嬉しい限りです。


 まず、啄木は、故郷から「石持て追われた」訳で、今更故郷に帰っても受け入れてもらえる訳はなく、仕事も無かったでしょう。それでも「やはらかに」や「かにかくに」のように渋民村を思うのは、盛岡中学へ行った、当時としてはエリート層として周囲から仰ぎ見られていた(当然本人も優越感は持って居たでしょう)良き思い出のある場所としてであり、現実にはそれは「無い」のです。 


  一方の朔太郎、生家は結構繁盛していた医者で、そこの長男のくせに跡をも継がず、学校もろくに行かないで(最終学歴は旧制高校中退)親がかりのまま突飛な恰好をしながらぶらぶらしている。本人は「純情小曲集」(愛隣詩篇+“郷土望景詩)の「出版に際して」で、



 郷土!いま遠く郷土を望景すれば、万感胸に迫つてくる。かなしき郷土よ。人々は私に情(つれ)なくして、いつも白い眼でにらんでゐた。単に私が無職であり、もしくは変人であるといふ理由をもつて、あはれな詩人を嘲辱し、私の背後(うしろ)から唾をかけた。「あそこに白痴(ばか)が歩いていく。」さう言つて人々が舌を出した。
 (中略)
人の怒のさびしさを、今こそ私は知るのである。さうして故郷の家をのがれ、ひとり都会の陸橋を渡つて行くとき、涙がゆゑ知らず流れてきた。えんえんたる鉄路の涯へ、汽車が走って行くのである。
郷土!私のなつかしい山河へ、この貧しい望景詩集を贈りたい。



と書いています。始めっから故郷に受け入れてもらえない朔太郎。でも、昭和11年出版の「定本 青猫」の冒頭に収められている「郵便局の窓口で」に見られるように、故郷と、そこにいる「老いたまへる父上」に頼らなければならない不甲斐なさ、頼らざるを得ない自分の弱さなどを考えると、「月報」で飯田さんの言われる「故郷を離れたい気持ちが八割か九割、最後まであと一割そこそこの僅かな部分を捨てきれなかった人」という通りでしょう。「陸橋」、「鉄路」については、本文で幸綱さんが解説されているので私が改めて書く必要もありますまい。それよりも朔太郎の「帰郷」、幸綱さんのリーディングには恐れ入りました。我々テツ共でも、ここまで感情移入しませんワ!


この詩の作られる過程は以上のごとくであるが、詩そのものを直に読むとするならば、ちょっと違った読みも可能かと思う。「汽車」への親近感を思い切って主題に近付けて理解するのである。
 汽車の烈しさ、汽車の孤独。泣き眠る「母なき子供等」を乗せてひた走る汽車。烈風を突き、闇に吠え曠野を走り行く汽車の孤独と烈しさは、まさに父親の孤独と烈しさではないか。そして、曠野を走り行く汽車は、では一体、どこへ行くというのか。
 汽車に目的地はない。父に目的地がないように、ないのである。故郷に帰ったとて、それは到着を意味するわけではないのと、同じように終着はないのである。



 汽車に目的地がない、というのには虚を突かれました。「汽車」つまり、機関車であろうと、電車、客車であろうと、「旅を栖とする」者ではあっても、車両基地があって、必ずそこへ戻って整備を受けます。蒸気機関車の時代であれば、給水や給炭もしなければなりません。灰も捨てなければなりません。決して放浪者ではないのです。こういうテツどもの常識のに妨げられて、ここまで思い切った読みが出来なかったんですね。


ちょっと話がそれますが、「旅を栖とする」者なら、行き倒れという事もあるのか、とお考えになる方もおられるでしょう。「道ゆきつかれ死にヽけり」の世界ですが、一般には汽車には「行き倒れ」はありません。しかし一昨年(平成27年)、JR東日本所属の「虹ガマ」と呼ばれた電気機関車が高崎線の鴻巣〜北本間で故障を起こし、本線上で停まってしまった事故がありました。後続の貨物列車が救援して北本駅まで押してきて、さらに田端からもう1両の機関車が来て何とか始末は付けたのですが、件の「虹ガマ」、あっさり廃車になって秋田の工場に送られ、解体されてしまいました。こういうのは「行き倒れ」と見ても良いでしょう。


「旅の歌」の方は、順序が前後しましたが、朔太郎にとって兄弟子とも言える室生犀星の「小景異情 その二」を挙げています。犀星の詩は、手には取ったものの少しも感じる物が無くて、すぐ手放してしまいました。私が知っている犀星の詩といえば、この「小景異情 その二」のほかは「犀川」くらいです。ですから、犀星の生い立ちなどはこの本で初めて知りました。この詩、高校2年の教科書にも出ていたようで、家に帰った所、ムスメが、


おとん、この詩さぁ、犀星はどこにいて詠んだのかって、先生が聞くんだけどさ。“みやこ”って、金沢だっていう見方と、やっぱり東京だっていう見方とあるらしいんだよね。


犀星はノーマークだったので、うろたえました。日頃、牧水だ、達治だとか言っている親父の面目丸潰れ。J様がこの本を紹介して下さって、ようやく面目を施せました。ただ、犀星のこんな古い作品で、まだこのような問題に決着が着いていないのも驚きでした。とりわけ犀星が「都」、「みやこ」と使い分けている点で、「遠きみやこ」に、加賀百万石のお膝元、北陸地方の中心都市である金沢という街の「中央意識」を読み取る方もおられるようです。でも、「帰るところにあるまじや」と言うのなら、東京で食い詰めて金沢に逃げ帰ってきても結局仕事が無くて、


「故郷なんざ帰って来る所じゃね〜や。故郷なんてものは、遠くの地にいて、勝手に心の中で美しく思っていりゃあいいんだ。またさっさと東京へ出て仕事探すワ!金沢よ、おさらばだゼ!もう帰ってこないかもしれないゼ!」


という開き直った自暴自棄な告白、別れるというより自分から切り捨てようという心の動きを表していないでしょうか?ムスメへの答えとしては、この詩は、金沢で詠まれたもので、決して金沢を懐かしんで歌ったものではなく、故郷に決別しようとした歌ではないか、と。三好達治も、


 故郷(金澤)に作者はあつて、遠き都、すなはち東京を思つて歌ふのであります。逆にとり違えてはいけません。


と、「現代詩概観」の中で親切に注釈を加えています。でも、「旅の歌」によれば、なおも犀星は、少しも良いことの無かった故郷を讃えて詠っており、「さらば金沢」とも言い切れないようで、幸綱さんは、


事実の次元でウソ・ホントということを言えば、この詩(注;犀川の川辺)に出てくる「楽しい父母」とか「あたたかな炉」に象徴される家庭、およびその延長上にある故郷の描写はウソということになるだろう。しかし、彼の望郷の念の強さが現実をねじまげるほど強烈で、自身をあざむかないではいられないほど切実だったと見るならば、単なるウソではすまされない、心底のホントがそこに露出していたと見ることができるのではないか。(中略)近代の望郷詩には、こういうパラドックスがあるのだ。


と書かれています。こうなると私のリーディングも相当アヤシイものと心得ないといけません。参ったな…… 


(この項つづく)

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五十鈴 拓磨
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