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<当時の素堂の力が偲ばれる>(最後の一字は作者名)
延宝 五年(1677)素堂、36才。
『江戸三吟』五年冬から六年春にかけて。刊行は翌六年。
あら何ともなや昨日は過てふぐと汁 桃青(松尾芭蕉)
寒さしさって足の先まで 信章(山口素堂)
居合ぬき霰の玉やみだるらん 信徳(伊藤信徳)
拙者名字は風の篠はら 青
相応の御用もあらば池の邊 章
あみ雑喉がかり折ふしは鮒 徳
醤油の後は濁れば月すみて 青
更てしばしば小便の露 章
聞耳や餘所かあやしき荻の聲 徳
難波の聲は伊勢の與茂一 青
屋敷がたあなたへさらりこなたへも 章
かはせ小判や袖にこぼるゝ 徳
もの際にことわりしらぬわが涙 青
干鱈四五枚是式の戀を 章
寺参り思ひ初たる衆道とて 徳
みじかきこゝろ錐で肩つく 青
糠釘のわずかの事にいひ募り 章
露がつもりて鐘鑄の功徳 徳
芳野川春も流るゝ水茶碗 章
紙袋より粉雪とけゆく 徳
風青く楊枝百本けづらむ 青
野郎ぞろへ紋のうつり香 章
法の聲即身非花散て 青
余波の雁も一くだりゆく 章
上下のこしのしら山薄霞 徳
双六の菩薩も爰に伊達姿 徳
衆生の銭をすくひとらるゝ 青
目の前に島田金谷の三瀬川 章
から尻しづむ淵は有けり 徳
小蒲團に大蛇の恨み鱗形 青
かねの食継湯となりし中 章
二三獻跡は淋しく暮過て 徳
月はむかしの親仁友達 青
蛬無筆な侘そきりぎりす 章
胸算用の薄みだるゝ 徳
勝負も半の秋の清風に 青
われになりたる波の関守 章
あらはれて石魂忽飛千鳥 徳
ふるい地蔵の茅原更ゆく 青
鹽うりの人かよひけり跡見えて 章
文正が子を戀路なるらむ 徳
今日より新狂言と書くどき 青
ものにならずにものおもへとや 章
或時は臧の二階に追込んで 徳
何ぞと問ば猫の目の露 青
月影や似せの琥珀に曇るらむ 章
隠元衣うつゝか夢か 徳
泪じみたるつぎゞれの露 青
衣装繪の姿うごかす花の嵐 章
匂ひかくる願主しら藤 徳
百萬石の梅匂ふなり 青
むかし棹今の帝の御時に 章
守随ぎはめの歌の撰集 徳
掛乞も小町が方へといそぎ候 青
これなる朽木の横にねさうな 章
小夜あらしとぼそ落ちては堂の月 徳
古入道は失せにけり露 青
海尊やちかいおころ迄山の秋 章
さる柴人がことの葉の色 徳
縄帯のその様いやしとかゝれたり 青
これぞ雨夜のかち合羽なる 章
飛来の馬からうとや時鳥 徳
森の朝影狐ではないか 青
二柱彌右衛門と見えて立ちかくれ 章
三笠の山をひつかぶりつゝ 徳
萬代の古着かはうと呼ばうなる 青
質のながれの天の羽衣 章
田子の浦波打ちよせて負博奕 徳
不首尾で帰る海士の釣船 青
前は海入日を洗ふうしろ疵 章
松が根枕石のわたとる 徳
つゞれとや仙女が夜なべ散 青
瓦燈の烟に佛の月 章
我戀を鼠のひきしあしたの秋 徳
鈴の音一貫二百春くれて 青
片荷は財布めては香久山 章
雲介がたなびく空に来にけらし 徳
幽霊となって娑婆の小盗み 青
無縁寺の橋の上より落さるゝ 章
都合その勢萬日まゐり 徳
祖父祖母早うつたてやものどもとて 青
鼓をいだき草鞋しめはく 章
米袋口をむすんで肩にかけ 徳
木賃の夕べ風の三郎 青
韋駄天もしばし休らふ早飛脚 章
出せや出せやとせむる川舟 徳
はしり込追手顔なる波の月 青
すは請人か蘆の穂の聲 章
物の賭振舞にする天津雁 徳
木鑵子の尻山の端の雲 青
人形の鍬の下よりゆく嵐 章
畠にかはる芝居淋しき 徳
此翁茶屋をする事七度迄 青
住よし諸白砂ごしの海 章
淡路潟かよひに花の香をとめて 徳
神代このかたお出入の春 執筆
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