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<その2>(最後の一字は作者名)
其の二
さぞな浄瑠璃小うたはこゝの春 信章
霞とゝもに道化人形 信徳
のつぺいうしと鴨の鳴くらむ 徳
山陰に精進落て松の聲 青
三十三年杉たてる庵 章
青い顔笑ふ山より雲見えて 桃青
土器の瀧のめば呑ほど 章
聲がたつあらしに浪の遊び舟 徳
鴈よ千どりよ阿房友達 青
五間口寂しき月に其名をうれ 章
松を證據に禮金の秋 徳
手かけ者相取のやうに覚えたり 青
思ひのきづなしめ殺しゝて 章
木綿売ある夕暮の事なるに 徳
門ほとくと敲く書出し 青
鎌田殿身体むきを頼まれて 章
二人の若の浪人小性 徳
竹馬にちぎれたり共この具足 青
続けやつゞけ紙張の母衣 章
ところてん水のさかまく所をば 徳
浪せき入て大釜の淵 青
落瀧津地獄の底へさかさまに 章
《註》一本 天窓から地獄の底へすつぽんと
鐵杖鯉の骨を砕くか 徳
酒の月後妻うちの御振舞 青
隣の内儀相客の露 章
眉をとり袖ふさがする花芒 徳
野風も今は所帯の持なり 青
鍋の尻入江の汐に気をつけて 章
蓮の糸組屋の店の風凉し 徳
わかいものよる暖簾の波 青
戀の淵水におぼるゝ入相あり 章
開帳や俊成作の本尊かけて 徳
寂蓮法師小僧新発意 青
伊呂波韻槇たつ山もなかりけり 章
雲を増補に時鳥ふる秋 徳
影ひとり長月頃の気根もの 青
野の宮の夜すがら袷一枚 章
駕籠かきも浮世をわたる嵯峨なれや 徳
まよひ子の母腰がぬけたか 青
傷寒を人々いかにととがめしに 章
悪鬼となって姿はその儘 徳
正三に書置かれたる物がたり 青
こゝに道春これもこれとて 章
前は池東叡山の大屋敷 徳
花の盛に町中をよぶ 青
青柳の髪ゆひくくやい 章
舞臺に出づる胡蝶鶯 徳
つれぶしに端唄うたひの蛙鳴 青
禿が酌に雨の夕ぐれ 章
戀の土手雲なへだてそ打またげ 徳
御朱印使風の玉草 青
心中に山林竹木指きる事 章
末世の衆道菩提所の月 徳
十歳の和尚のうは気秋ふけて 青
彌陀はかゝ様消えやすき露 章
山又山や三国の九郎介 徳
関手形安宅に早く着きにけり 青
松風落て澁紙をとく 章
首だけのおもひつゝしみてよし 徳
うき中は下焦もかれてよわくと 青
家くの書に根汗かゝるゝ 章
しなひうち大夜着の裏表迄 徳
鞍馬僧正床入のやま 青
若衆方先つくしには彦太郎 章
かつら姿や右近なるらむ 徳
暮の月橘の精あらはれて 青
すもゝ山もゝ悉皆成佛 章
見性の眼のひかり錫の鉢 徳
轆轤のめぐり因果則 青
ゑいやとさ爰にひとつの片端もの 章
敷がねとして十貫目箱 徳
代八やしのび車のしのぶらむ 青
日傭をめして夕顔の宿 章
山雀のかきふんどしに尻からげ 徳
青茶の目白羽織着て行く 青
膏薬の木の實のうみや流るらむ 章
よこねおろしのに谷ふかき月 徳
山高く湯船へだつる水遠し 青
浅間の烟軽石が飛ぶ 章
しらなへし花の吹雪の信濃なる 徳
甲頭巾に駒いばふ春 青
熊坂も中間霞引きつれて 章
太物の庭の芭蕉葉五六端 徳
楚國のかたはら横町の秋 青
邯鄲の里の新道月明て 章
よくく思へば會所を求る 徳
千句より十萬億も鼻の先 青
われらが為の守武菩薩 章
音葉の子弓三味線あいの山 徳
四竹さわぐ竹の都路 青
姉そひてお伽比丘尼のゆくこども 章
後家ぞまことの佛にてまします 徳
譲られし黄金の膚こまやかに 青
こぬかみがき革袋あり 章
旅枕油くさゝや嫌ふらむ 徳
鰯でかりの契りこがるゝ 青
はかゆきにざくく汗の薄情 章
連理の箸のかたしをもつて 徳
實や花白楽天が焼筆に 青
唐土に帰る羽箒の雁 執筆
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