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<その3>(最後の一字は作者名)
其の三
物の名の蛸や古郷のいかのぼり 徳
仰く空は百餘里の春 青
腰張や十方世界法の聲 章
凡そ命は赤土の露 徳
いつ迄か炮碌売の老の秋 青
峯の雪かねのわらじの解初て 章
千人力の東風わたる也 徳
熊つかひむかへば月の薄曇り 青
水右衛を笑ふ初かりの聲 章
墨の髭萩の下葉の移ひぬ 徳
尾花が袖に鏡かさうか 青
判はんじいかなる風の閑にふく 章
夫は山ぶし海士のよび聲 徳
一念の鯰となりて七まとひ(鯰は鰻か) 青
かたちは鬼の火鉢いたゞく 章
紙ふりの伊勢の国より上りけり 徳
神のいがきもこえし壁ぬり 青
縄ばしご夜の契りや切つらむ 章
さすがわかれのちんば引見ゆ 徳
骨うづきしのび笠にて顔かくし 青
立出るよりふまれたる露 章
夕まぐれ水風呂に流す水の月 徳
木綿ざらさの祝ふ紅葉かたしく 青
花に風荒木珍太をあたゝめて 章
胸につかへし霞はれ行く 徳
天津風貸銭なして帰りけり 青
勘当ゆるす二月中旬 章
釈迦すでに跡式譲り給ふらむ 徳
八萬諸聖教古手形なり 青
公儀のおふれ武蔵野の秋 章
関所ものはらふ草より草の露 徳
火つけの蛍とられ行くらむ 青
ころばぬように杖で行く月 章
駒留て下路打叩く雪の暮 徳
東坡が小者竹の一むら 青
その里へ石摺の文かよひけり 章
緞子の染木蠹のさすまで 徳
土革しれ山は紺地の青嵐 青
谷水たゝへて蓼酢の如し 章
異風者金柑淵に遣捨る 徳
吹矢を折て墨染の月 青
秋のあはれ隣の茶屋もはやらねば 章
松虫鈴虫轡たふるゝ 徳
戀草をつれて走りし末がれて 青
その業平に請人やなき 章
木賊色の狩衣質に置し時 徳
貧乏神の社見かぎる 青
出雲にて世間咄のわる口に 章
松江の浦の相店のかゝ 徳
塗桶に鱸のわたをつみかけて 青
ひらめ白うらむくの黒鯛 章
花なるらむ龍の宮古の驕り者 徳
父大臣のかねつぶす春 青
手道具や十二一重の薄霞 章
笈のうちより遠山の月 徳
小男鹿の妻をとられな宿かすな 青
杓子はこけて足がひょろつく 青
やゝ暫し下女とくの戦に 章
赤前垂の旗をなびかす 徳
本三位戻子をはりたるごとくにて 章
《註》戻子(もじ)
貢の箱や飴おこしなる 徳
かたぐるまに難波の梅の兄弟 青
貫之が筆朝書の春 章
それの年徳壺利の氷とけそめて 徳
饂飩きり落す橋の下水 青
つりものに中の間の障子引放し 章
戀のやごろさねだり来にけり 徳
質がゝりしれぬ憂名を付かけて 青
いつの大よせいつの御一座 章
朝夷の三ぶ様四郎さま五郎様の 徳
地獄やぶりや芝居やぶりや 青
小柄ぬき剣の枝のたわむ迄 章
滅金の日影にぎる修羅王 徳
千早振木で作りたる神姿 青
岩戸ひらけて饅頭の見世 章
銭の文字一分もまださだまらず 徳
掟のかはる六道の月 青
秋やむかし二代目の地蔵出たまふ 章
鎧腹帯残しおく露 徳
花の枝奇麗高麗切とりて 青
煮しめの蕨人参甘草 章
春霞気を引きつたる薄醤油 青
酒桶に引導の一句しめされて 青
つらくおもんみれば人は穴蔵 章
うらがへす畳破れて夢もなし 徳
蚤にくはれて来ぬ夜敷かく 青
君々々爪の先程おもはぬか 章
しのぶることのまくら點取 徳
戀弱し内親王の御言葉 青
乳母さへあらばくろがねの霜 章
疱瘡の神鬼神なりとも閨の月 徳
ましてや面は張貫の露 青
翁草布の衣装をひるがえし 章
松は幾世の青砥左衛門 徳
北条の宿を嵐に尋ぬれば 青
彼是をつぶしてひとつになる雲 章
火神鳴たゝらをふんで響らむ 徳
菅相丞も本庄の末 青
江戸の花延喜このかたの時とかや 章
鶯白鳥も驚かぬ春 執筆
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