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■408 本「環境経済学への招待」 上田和弘著 1998年
人間が環境を搾取してきた時代は20世紀で終わらせなければならない。21世紀は人類と環境が共存する時代だ。そういったパラダイム・シフトが行われない限り、人類による環境破壊はとめどなく継続し、最後には我々の生活の基盤となっている環境が、人類に危害を加えるようになるだろう。
環境破壊の主な原因は、人類の科学技術の発達による経済開発によるものが多い。そうであるがゆえに、環境保全や環境保護の問題は、経済的な解決方法を求められていると言える。
しかし真の環境問題の解決は経済学という分野だけでは把握できない。政治、政策、法律、環境科学、国際関係学、地域再生学などあらゆる専門性を学際的に統合して調整されたシステムを構築し、かつそのシステムを現代社会の中で機能させなければならないと思う。
環境問題の考察および解決において、環境経済学という生まれたての学問だけでは補えない部分は多いが、かといって全くの無力ではない。例えば、湯布院という地域での環境及びアメニティ保全による観光地の創設および経済復興の成功は、その典型例ともいえよう。また、炭素税の導入や補助金・課徴税の施行、排出権取引市場の創設などは環境経済学の偉大なる想像力による業績だと位置づけることができると思う。環境政策における環境の評価方法やアセスメント方法はいまだ日本では成熟していないところではあるが、これからの環境経済学の研究に期待される。
いままでの経済学は、パクス・エコノミカという言葉が示すとおり、金銭や経済発展の値だけが社会の評価方法の基準であった。しかしこれからの社会は、価値観の多様化とあいまって新しい評価基準がぞくぞくと登場してくることだろう。それは環境という単なる簡単な数値では表せないものであったり、真の豊かさを問うような内面的な評価だったりする。これからの社会科学および経済学の責任は、これらの測ることが難しいといわれる評価基準に基づいた学問体系をどう発展させて、現代社会の人々にどのように受け入れられるような仕組みを構築するかであると考える。
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