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まさに、タイトル通り息もできないくらい…つらくて、心が痛くなる映画でした。 とにかく〜殴る、蹴るの暴力シーンが多くて…いたたまれない気持ちになり、途中で見るのを止めようと思っ たくらい拒否反応が強かったのですが、キネマ旬報の外国映画部門1位の映画だという先入観+「1位だ! 1位だ!」と呪文のように頭の中でぐるぐる回っていたせいか?最後まで、何とか見ることができました(笑) でも…この手の韓国映画って、いつも見終わって少〜し経ってから、じわじわってくる感じです。 実はキネマ旬報だけでなく、韓国内外でこの映画の評価は高く、2011年の現在も含めると受賞はさらに増 えるでしょう。すでに、2010年までに国際映画祭や映画賞で25以上の賞・グランプリなどに輝いている作品 です。受賞歴に関してはこちらをご覧ください。 ところで映画の製作、監督、脚本、編集、主演とひとりで5役をこなしたのは、ヤン・イクチュン監督(上の画像 右)です。 <2008年の作品 上映時間130分 原題:똥파리 英題:Breathless> <あらすじ> 偶然の出会い…それは、最低最悪の出会いだった。「家族」という逃れられないしがらみの中で生きてきた二人。父親への怒りと憎しみを抱いて社会の底辺で生きる男サンフン(ヤン・イクチュン)と、繊細で傷ついた心を持ち(隠し)ながら勝気に振舞う女子高生ヨニ(キム・コッピ)。ある日、漢江の岸辺で二人の魂は結びつく。歳は離れているものの二人は運命のごとく惹かれ合ってゆく。それは、今まで見えなかった明日へのきっかけ(希望)になるはずだったのだが…。(Bitters End配給・公式サイトより引用) この映画を見た人のレビューを読んでいると、男性の方の評価は一様に高いですね。 やはり主人公が男性ということもあり、心理状態や行動に対して感情移入しやすいのかもしれません。 また、父親と息子という関係は女性には分からない特別な感情もあるでしょうし…。女性の場合は暴力シーン の激しさに冷静さを失うというか〜生理的に受けつけないようです(もちろん、男性でもおられるでしょう)が…。 でも、韓ドラ史劇・時代劇の戦闘シーンなどは平気(?)だったりしますけど〜(笑) 韓国は恨(ハン)の文化と言われますが、まさに恨の感情の爆発のような映画だと思いました。 朝鮮民族にとっての「恨」は、単なる恨みつらみではなく、あこがれや悲哀や妄念など複雑な感情を表す言葉 だそうですが…。韓国ドラマを見てると親や年長者を敬う儒教が息づくイメージなのに、なぜ息子が父親に激し い暴力を振るうようになったのか、それは父親が過去に犯したとり返しのつかない罪(暴力の末に母と妹が亡 くなり刑務所に…)が原因なのですけれど…。サンフンの治まらない憤怒の矛先は、借金の取り立て(仕事)で 返済の遅れた相手にも容赦なく向けられる。その執拗に激しい暴力を加える姿は、負のスパイラルから抜け出 せないことへの怒りと苛立ちにも見えました。 暴力の連鎖というと、日本では幼児虐待が問題になっていますけれど…。 子供に暴力を振るう親は、自分が子供だった頃に親から虐待を受けて育っ た人がほとんどだそうですが、何とも悲しい現実ですね。 ところで、サンフンは「韓国の父親は最低だ!」と言ってましたが…。 これって、「親父は最低だ!」でもいいのに、なぜ「韓国の」とつけるのか? その辺に、何かもっと深い意味が 隠されているように感じました。サンフンの姿に重ね合わせた監督のメッセージが込められているのかもしれま せん。もしかしたら、それは〜国家に対することなのかな…と。サンフンの父親の世代に国家絡みの負の遺産 的な何かが関わっているのでしょうか(韓国の父親=国家という意味合いもあるのかも…)。 そう言えば、サンフンと出会い互いに惹かれ合うようになる少女ヨニの父親も…確か、ベトナム戦争に韓国軍の 兵士として参戦し精神を病んでしまい、帰って来てから記憶障害のような症状になっていることも、社会の底辺 で生きる弱い立場の人たちの悲劇だけではない、心に深い傷を残した(与えた)国絡みの負の連鎖が見え隠れ しているように思えてなりません。 ここまで書いてきても、いたたまれない思いにさせる映画ではありますけれど…。 道端にひっそり咲く可愛い花を見つけた時に、ほっとするような優しさや温かい心のふれ合いを感じさせる場面 も…。それは、姉への細やかな心遣い(そっとお金を渡したり、働いている店の携帯電話を買ったり)やその甥 っ子とふざけていたりするシーンとか、ただ〜その接し方がサンフン流で少々荒っぽいので、甥っ子は迷惑そう でしたが(笑) また、激しい暴力を父親に振るうサンフンですけれど、憎しみの感情が強い反面たったひとりの父への愛情もあ るのですが、不器用なサンフンは思いを素直に表わせずに荒っぽい口調になったり、稼いだお金を渡す時にも、 ぶっきらぼうで素っ気ない態度しかできない。しかし、父親が罪の意識にさいなまれてか(手首を切って)自殺を 図った父を発見し病院に担ぎ込み、自分の輸血で父が一命を取り留めるが、父親のために必死に行動するサン フンの姿や様子を見てると、父親を本当は愛していたんだなという思いが伝わってきました。 ところで〜 何と言っても、歳の離れた高校生の少女ヨニとの出会いは、サンフンにとって希望の光りが差し込んだ瞬間だっ たのでしょう。それまでのサンフンが徐々に変わってゆく姿は微笑ましくもあり、これで負の連鎖からも解放され て断ち切れるのかな? やはり〜愛こそが力であり、人生を変えることができるのだ…と。 しかし…う〜ん、手を緩めないヤン・イクチュン監督が描くラストは、強烈です。 そんな甘〜い夢も希望も砕いてしまう、リアルでシビアな因果応報の結末でした。 この負の連鎖って・・・ いわゆるマイナス思考に陥ってしまうと、人間はその強力なマイナスのパワーからなかなか抜け出せなくなり
そうだけど…。この映画の中で、サンフンが見せるさりげない優しさとか少女ヨニとの心のふれ合いのシーンが 散りばめられていることで、全くの負の連鎖で終わらせていないと感じました。ついつい暴力の激しさばかりに 目がいきがちですが、イクチュン監督のポジティブ(前向き)なメッセージも込められているように思いました。 ※記事中での敬称は省略しています。ご了承くださいm(__)m |

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