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翌金曜日が先ほど触れた面接の日である。金曜日の相手方の返答次第で今の会社には辞表を叩きつけて、
とも考えていた。しかし、実状は先に述べた通りだった。
午後から出社した。俺を採用し、良き相談相手だった疲れ切ったおじさん部長は変わっていた。
一対一で話し合うことになり、初めてそこでその部長が「取締役」になったと聞かされた。
人のいいおじさんが、見事に「木に登って」しまっていた。一緒に嘆いていたおじさん部長が、
会社側になっていた。「取締役統括部長を拝命した」を何度も口に出して自分に酔っていた。
嬉しかったのだろう、本当に嬉しかったのだろう、身を粉にして会社の○○家に尽くしてきた
「仕事の出来ないやさしいおじさん」が「取締役統括部長様」になれたのだから。嬉しかったのだろう。
私は会社の中ではその人には義理も感じていたし慕ってもいた。その人が犯したミスを尻拭いし、
経験を生かして裁判所提出の書類を書き揃えて弁護士抜きで解決してあげたこともある。その人は
私に対しても返しきれない恩が少なくとも1つ以上あるはずだ。しかし、しかし、木に登って
しまった。
人が変わったように私を責めた。一緒に社長を悪く言っていたのに、社長にたてついたお前は
辞める以外無い、と居丈高に言っていた。声が、顔つきが違っていた。酔っていた。社長にとって
ウルサイ小憎らしい目の上のタンコブ社員を黙らせて自分のいいなりにさせることは取締役就任後
すぐのお手柄になるはずだ。
俺は、すぐに辞めてやりたかった。会社の不法行為を証明する証拠書類も数年にわたり集め続けて
きた。告発すればあんな会社などすぐに吹っ飛ばしてやることも出来る。その前に残業代未払い分を
請求してやることも出来る。最近の判例は例外なく全未払い賃金を払えという原告完全勝利だ。
俺もやる気になれば出来る。しかし、しかし、だ、、、
俺は女房と子供の顔だけを思いながら頭を下げた。一言も反論しなかった。ただただ
詫びた。何も悪くないのに、日本社会に綿々と続く悪しき慣習に添わないからというだけで、
頭を下げ続けた。
その元やさしかったおじさんは、言うだけ言って、最後にお前本当に改心する気はあるのか、
やれるのか、それなら二度と反抗しません、反抗したら直ちに辞職する旨の始末書を書けば
今回だけは勘弁してやる、と言った。
俺は、その条件を、ノ・ン・ダ・この俺が、飲んだ。
悔しかった、悔しかった、悔しかった。恥ずかしいが、悔しくて涙が止まらなかった。
いつまでも涙が止まらなかった。涙が止まるまで家に帰れなかった。
韓信はどんな気持ちで又くぐりをしたのだろうか。。。
そこで、このタイトル「敗北とは・・・?」である。
今まで貫いてきた信念を曲げて、最も忌み嫌う「理不尽」「不条理」に土下座した俺は世界の中で
の非常識・摩訶不思議に位置づけられるという「日本社会」に敗北したのだろうか・・・。
自分の信念の維持を放棄して異常な家族どもに土下座した俺は「異常」な「理不尽」に敗北した
のだろうか・・・。
これで今までの人生は一気に意味を失ってしまったのだろうか???
「社会」に「理不尽」に「不条理」に「異常な家族」に、全て敗北してしまったのだろうか・・・???
俺は、「俺」は存在しなくなったのか・・・
明日から俺は何をどう捕らえて、どう位置づけて生きて行けば良いのか。。。
俺はこの世に生きて行く価値はあるのか・・・
生きて行く価値も無いのに、価値を失ってしまったのに、生きて行かなければならないのか・・・
明日が見えない。。。
3日後、4日後、俺はどうしているのだろう。。。
何を決断してどういう方向に向かっているのだろう。。。
全く、わからない。。。
俺は、俺は完全に「敗北」してしまったのだろうか。。。。。。。
もし、これが「完全敗北」なら、その「敗北」の先には一体何があると言うのだろう。。。。。。。
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