egalite詩集

朝が大空でささやいている、おはようって。

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黒澤明 「生きる」

 
 
 
 

 
  
黒澤明監督、志村喬主演の「生きる」という映画を見たことがあります。

その映画の中でとても感動したことがあるんです。

「生きる」という映画は、志村扮する主人公が、余命少ないと宣告を受けたあと

自分の生きてきたことを振り返って、最後の残った時間に精一杯のことをやっていこうと

思い直し、生き方を180度変えて、積極的に生きていくという物語です。



主人公がその気持ちを初めて感じるシーンは、サロンみたいなところで

あまり台詞もなく描かれていたと思うんですが、瀟瀟(しょうしょう)として、

主人公が階段を下りていく途中で、

まるで、主人公の心を代弁するかのように

別の席にいた、若い人たちのグループが、いっせいに、誕生歌(ハッピーバースデー)を歌いだすのです。

その歌が後ろから流れてくるのに、主人公は何も聴こえていないかのように階段を下りていく。

そんなシーンだったと思います。

しかし、そのシーンは、主人公が今までの無気力な人生を改め、

新しい生き方で、生きていることを燃焼させていこうとする

主人公のひそかな決意が語られている瞬間の歌を、第三者が何の関係性もなく歌っているんです。

そのシーンがとってもよくって、その作品も大好きになりました。

あとの残った時間を、精一杯に生きてみようとする主人公。

でもそのことを決して言葉で直接語っているのではなく、にくいまでのさりげない演出です。
 
 

 
今日、自分自身がそれを思いおこさせる場面に遭遇しました。

あるレストランにいたのですが、BGMが急に大きくなり、周りの人は何事かと

振り返ったりして、私もそう思ったのですが、

いきなり、バースデイケーキをかかえたウエイトレスさんや、コックさんが出てきて、

あるテーブルの近くによって誕生日祝いの、店からのバースデーセレモニーをはじめました。

相手は子供だったようで、おかあさんらしき人が依頼したようなのでしたが、

その傍にいた私は、胸を熱くしてしまいました。まるで自分が祝ってもらっているようで。

私も奇しくも病院帰り。

そして、私もあの映画の中の主人公のようなシチュエーション。

私は、余命いくばくもないなんてことはないのですが。

でも、思わず、そのハッピバースデーが自分と重なりました。




私もその映画の主人公のように、ほかの人の祝福でしかないのに

その祝福を自分が受けているように、感動をもらいうけました。

志村喬は、あのシーンで、何かを感じていながら、それを表さないでいるという表情を装っていたのでしょう。

映画の中の一プロットです。(感じる方のお気にめすまま、というものかな)



青空が、自分を祝福しているように感じたりすることもあるんですが、

あまりに話がうまくできすぎていて、恐縮さえするんですが、

そう、今日、あの席に座っていた女の子は誕生日だったのです。

そして、私もようやく、心の新しい誕生日を迎えることができたような気がしました。



心というものは、まわりにある風物から様々なメッセージを受けるものです。

花が咲けば、そのほころんでいる様を自分の喜びのように迎えることができたり、

夜おそく、ボンボンと鳴らす柱時計の音が自分の悲しみを弔っているように聴こえたり、

遠くで、女の子がはちきれんばかりの笑顔で自分とはちがう人に手を振っているのを

自分の微笑みに向って、手を振っているように感じられ、

こっそり小さく手を振り返してみたり、・・・・・。



生きているということは、様々なメッセージを受けながら生活しているということ。

それは、物に限らず、人さえも自分に対するメッセージを発しているはず。

人の語る言葉は、その人の口からこぼれてくる「言葉という名の滝」であるかもしれない。

人は、壮大なる幻想の劇場の中にいる、生きるという主旋律に沿って

歩いていくだけの登場人物。

私は、この物語が、ただハッピーエンドで終ることを祈って

その主人公のように、心の階段をおりて行こうとしています。



主人公が決意をひめ、一言も語らず、黙々と自分の道を歩いていったように

そしてそれが、彼の喜びに他ならなかったのと同様に、

真に自分の生をまっとうして生きるような生き方は、

ただ孤高で、他の追随をゆるさず、美しいという形容のみがそれに値すると信じています。

人生の勝負を賭けた、タイブレークが今ひとつ頭をぬけでて、

人生プールの最後のターンを折り返して、

私は新しい水を切って、この追い込みにかけていきたいと思っております。

今、水は清く、天は晴れ、季節は新緑。

そして何よりもすばらしいことは、私が生きているということです。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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閉じる コメント(5)

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もうひとつの「生きる」ですね。文章に引き込まれました。すばらしい人生にハッピーバースデイ!

2005/6/12(日) 午前 1:37 [ ysigle ] 返信する

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今晩は。この映画は、いくつか心に残る映画の中の一本です。ハッピーバースディの歌が世界でいちばん数多く歌われている歌ですよね。その歌が歌われるたびに、どこかで祝福されている人がいて、ああ、私もその歌を、あなたもその歌を耳にして、いつもほころんだ気持ちでいられるといいですね。

2005/6/14(火) 午後 11:06 えがたん 返信する

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黒澤明の「隠し砦の三悪人」を観ました。観ましたてのホヤホヤです。 とっても面白い映画でした。宮崎駿監督も、絶対これ好きなんだらうなと思わずにいられないほど、とある宮崎映画に似てました。もちろんこっちがオリジナルだから、やっぱり黒澤、世界のクロサワですね。スピード、パワー、静寂、笑い、そして人の情け。。。。パーフェクトっな、映画でした。私の日本映画ベスト3に入ったっぽいです。是非。

2005/6/27(月) 午後 11:51 [ - ] 返信する

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映画は好きですが、あたりはずれが多いので、(これは好き嫌いがあるのしょうが)黒澤明の作品は、ワンカット、ワンカットの構図みたいなものにとても気が使われていると思いました。七人の侍など。それから、ずっと後のカラー作品では、配色も大いに凝っているように思えました。「隠し砦の三悪人」うちの田舎のレンタルさんではあるかどうか大いに疑問ですが頑張ってみます。ガンバットまん。何のこっちゃ。

2005/6/28(火) 午後 3:11 えがたん 返信する

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こんばんは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
映画「生きる」もとりあげています。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

2007/6/24(日) 午後 6:29 [ kemukemu ] 返信する

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